「医療法人会計基準検討報告書」の公表
佐々木総研
税務・会計「医療法人会計基準検討報告書」が平成26年2月6日付けで四病院団体協議会より公表、3月19日付けで厚生労働省から通知が発出され、会計基準が存在しなかった医療法人に、ようやく一般公正妥当と認められる会計慣行として認められることとなりました。
情報開示への要求が高まる医療法人に対して、他産業や他法人の決算と比較可能となる基本的尺度として会計情報作成の基本ルールを整備することが早急な課題とされてきました。
「医療法人会計基準」が導入されるとどんなインパクトがあるのでしょうか?
「医療法人会計基準」の土台となる会計基準のスタンダードは営利法人を対象とした「企業会計基準」ですが、その内容は時価会計型・投資情報重視型に整備されており、非営利法人で利益配当のできない医療法人にはそのまま適用できない新会計基準が多くあります。
上述の報告書でもこの点は考慮されており、導入される新会計基準は、必要最小限度の導入となるよう配慮されています。
しかし「退職給付会計」に基づく退職給付費用・退職給付引当金の計上について、報告書では「…退職給付会計に関する会計をまったく導入しないことは、世間一般の評価に耐えられる基準とはなり得ないものと思われる。」と記載し、導入不可欠の項目であることを強調しています。これは、退職金制度を導入している医療法人が、退職金に係る発生費用や債務が存在していることは他の営利・非営利法人と何ら変わらず、医療法人だけがその計上を免れることはあり得ないことを強調しています。
たしかに退職金の支払時に過去分も含めて当期費用として多額に発生することは不合理ですし、現に存在している退職金の支払義務が隠れた債務となり全く会計数値化されていない貸借対照表は不健全な状態ということができます。
新会計基準の導入までにはまだ多くの議論がなされるでしょうが、この機会に退職金の自己都合要支給額(仮に全員が退職した場合にどれだけの退職金を支払う必要があるか)を計算されてはいかがでしょうか。この計算結果が会計基準導入時の一括費用計上額の最大インパクトの金額となるものです。(報告書では一括計上ではなく分割計上等の緩和措置も認められるようです。)
つまり、現状の貸借対照表の純資産額から退職金自己都合要支給額を差引いて計算した純資産額が、積み上げてきた利益の実態に近い姿を示すものといえるからです。
コンサルティング部 3課 公認会計士
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