【介護保険あれこれ】地域包括ケアから見た今回の介護報酬改定は?
長 幸美
アドバイザリー団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるものとして、「地域包括ケアシステム」の構築が重要だと考えられています。
このシステムは「地域の中での生活を支える」という観点から、市区町村単位で「日常生活圏域」として「概ね30分以内に必要なサービスが提供」されることがひとつの目安となっており、具体的には「中学校区」をひとつの単位として想定されています。この中学校区というくくりで対応が可能であるのかどうかは別の議論があるところです。
平成25年3月に出された地域包括ケア研究会報告「地域包括ケアシステムの構築における今後の検討のための論点」においては、地域における生活の基盤となる「住まい」「生活支援」をそれぞれ、植木鉢や土と捉え、専門的なサービスである「医療」「介護」「予防」を植物と捉えています。豊かな土壌(住まいや自身の住まい方、暮らし)がなければ「医療」「介護」「予防」は花開かない事を意味しています。また、それらを支えるものとして「地域で暮らし続ける事に対する本人・家族の意思統一と心構え」が根底にあると考えられています。
また、このように「地域で暮らし続ける事」への支援として、「自助」「互助」「共助」「公助」があります。
まずは自分自身で出来る事をやる、自身の健康管理(セルフケア)などの「自助」を中心に、ちょっと困ったときには隣近所の方と「お互い様」の手助けを行う、ボランティア団体の援助などの「互助」、それでも援助が必要な場合は介護サービスを利用する「共助」、最後にセーフティネットとしての支援(公助)が必要であると考えられています。
このような観点から「要支援」は、介護サービスから「自助」「互助」の考えに重点を置いた「地域支援事業」へ移行する事が進められています。
また、地域連携の部分で言えば、「連絡(情報提供)」の意味合いから「情報の共有」へ、さらに地域の中で「医療、介護等の多職種が協働して高齢者の個別課題の解決を図る」とともに、「地域包括支援センター」の新たな事業(役割)として「地域ケア会議の開催」をあげ、個別ケース(困難事例等)の支援を通じたケアマネージャーのマネジメント能力の向上や地域支援ネットワークの構築、高齢者の自立支援に資するケアマネジメント支援、地域における課題の把握などを重点的に行っていくことが必要と考えられています。今回の改定では、これらの取組に対して、「加算」という形で、評価されました。
今回の改定は、大幅なマイナス改定です。基本単位数の減額だけではなく包括された部分も含めると、厚労省が発表している改定率以上の影響がでるものと思われます。収益を維持するためには、利用者をより多く確保する事と共に、的確な加算を取る事を考えていかなければなりません。また、地域ケア会議へのかかわりを重要視するため、「セラピスト」「相談員」の業務範囲の見直しが行われて、算定要件の中に「地域生活への支援」「社会復帰への取り組み」など数多くみられております。
いかに地域を支援する体制を構築し、人員の教育等により人材を確保し、中重度者や認知症高齢者への取組を行う事ができるか、地域包括ケアシステムの構築は、介護事業だけではなく行政や一般企業の関与も必要で、「地域づくり」「コミュニティの形成」を通して、「地域の活性化」にも繋がると考えられます。
詳しくは厚労省のホームページ「地域包括ケアシステム」をご覧下さい。
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経営コンサルティング部
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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