【介護保険あれこれ】地域包括支援センターの役割

長 幸美

アドバイザリー

4月に行われた改定の中で、地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業の見直しの中で、「地域包括支援センターの機能強化」が挙げられます。

今回は、地域包括支援センターの役割についてみていきましょう。

所管は市町村となっていますが、民間への委託運営も数多く見受けられます。
主な業務内容は
①介護予防(ケアマネジメント)業務(健康高齢者を対象)
②総合相談支援業務
③権利擁護業務
④包括的・継続的ケアマネジメント支援業務
⑤要支援者のケアマネジメント
の五つが挙げられていましたが、これに加えて「地域包括ケアシステム」を行う中で、様々な社会資源が有機的に連携する事が出来る環境「地域包括支援ネットワーク」を地域の実情に合わせて構築することが求められてきました。
そのため、以下の⑥~⑩も地域包括支援センターの役割であると明確化されました。
在宅医療・介護連携の推進
認知症施策の推進
地域ケア会議の推進
生活支援サービスを担う事業主体の支援体制の充実・強化
⑩全ての市町村における総合事業の実施

皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?
「要支援のケアプランを担当しているところ」「要介護度が出る前に相談をする窓口」という認識の方が多いのではないでしょうか?

今回の改定では、地域包括支援センターの役割として、「地域ケア会議」の開催が義務化されました。地域によっては既に「校区会議」や「ケアマネ勉強会」「連携会議」という名称で個別の困難事例の検討会が行われています。いくつかの検討会に参加させていただいた経験がありますが、それぞれの困難事例を発表し、それに対し対応の仕方などを意見交換するという形で進められていました。しかし、ケアマネージャーさんと医療機関の連携室の職員が主たるメンバーになり、地域の住民や自治会、婦人会、民生委員などの参加は無く、地域も利用者本人も置き去りになっているような印象を持ちました。
ある市町村では、在宅での暮らしで利用できるサービスや訪問看護などを知ってもらおうと、地域の住民向けのイベントを企画して、「在宅での暮らし」がイメージできるような手作りの劇をされた市町村もあります。

地域ケア会議

厚生労働省資料より

地域の中で、課題が多く出されてくると、地域の傾向やニーズが把握出来てまいります。
また、地域の中のサービス資源なども集約されてくるようになると思われます。
これらの情報を「地域包括支援センター」が集約し発信していく、コーディネーターの役割も担い、地域のネットワークの中核を担うことになってくると思われます。

地域の中での傾向やニーズの把握、資源開発が進んできましたら、市町村レベルの「地域ケア推進会議」において、地域として何が必要か?という事を検討する状況になれば、地域の自治会や婦人会、民生委員などの地域を支える方々の力が必要になってくるでしょう。

以前の介護あれこれで、厚労省が発表した「地域包括ケアの取組事例」をご紹介しております。その中にも、地域の自治会や、地域を支えてくれる方達の幅広い取組や、その土地特有の取組が紹介されております。参考になれば幸いです。
5つの機能

厚生労働省資料より

このように、地域ケア会議を例にしても「地域包括支援センター」の役割は大きくなってきています。ネットワークの構築や地域づくりの資源開発など、PDCAサイクルに載せて個別事例にフィードバックしながら、少しずつ「地域で暮らす」ということを考えていくことが大事であると思います。
そして、これからは、子育て世代の問題や高齢者と地域の子供との関係性作り、など高齢者だけではなく地域の弱者・・・子供や子育て世代にも優しい、安心して暮らせる街づくりに一役買うことになるかもしれません。

このためには、
①アセスメント力
②コーディネーション力
③コミュニケーション力

①は地域のニーズを引き出す力、ヒヤリングや問題点の把握が必要で、③のコミュニケーション力が必要になります。
②はケアマネジメント力と置き換えられます。様々なサービスの中から、利用者に最適なサービスを見つける。それは、介護保険に設定されているものだけではなく、地域の総合事業の中からも探していく必要があります。また、医療との連携調整も多くなってくると思います。

このため、ケアマネージャーの上方資格である「主任ケアマネ」のほか「認定ケアマネ」なる資格も出てきています。ケアマネージャーのスキルアップが重要な課題になってきています。
地域包括支援センターはこれから、ますます、「身近に」「地域に根付いて」、「地域の中核」となる役割を担っていただきたいと思います。

<参考:クリックすると別ページへ移動します>
地域包括支援センターの業務(厚労省政策課)

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経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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