【医療・介護あれこれ】コミュニケーションと患者・利用者満足

長 幸美

アドバイザリー

先日、「患者満足につながるコーチング技術~コミュニケーションを円滑に行うために~」というセミナーに参加してまいりました。
講師は、福岡市にある医療系高齢者施設の事務管理者の方のお話しでした。
仕事を行う上で、参考になることが多かったので、皆さんにもご紹介いたします。

コーチング(coaching)とは、人材開発の技法の1つで、近年注目されています。 対話によって相手の自己実現や目標達成を図る技術であるとされています。 相手の話をよく聴き(傾聴)、感じたことを伝えて承認し、質問することで、自発的な行動を促すとするコミュニケーション技法です。社内教育の技法として取り入れている病院や医院などが多いと聞きますが、本質は円滑なコミュニケーションをとることにあります。

① 聴く・・・相手に関心を寄せ、心を込めて聴く。意識して聴く。
② 承認する・・・相手の言葉を受け入れる。⇒オウム返し(同じ言葉を繰り返す)
③ 質問する・・・What と How を使う・・・Whyは使わない(=相手を否定する)

コーチングで大事なことは、「気づき」を与えることで、これは「具体的に」自分の中で整理して言葉として出させること、いつまでかという期限を具体的に決めることです。これは、相手に決定権があることを示しています。そして、重要なことは「応援している状態(常に同じ方向を向いている状態)」にあり続けることです。つまり、コーチングでは、相手に焦点を当て、課題と現状のギャップを確認して、優先順位をつけ「行動」を起こすことが重要になってきます。相手の無限の可能性を信じて、寄り添い、対話することで本質的な変化を呼び起こすことが必要となります。

この「コーチング」に対して、「ティーチング」という言葉もあります。右も左もわからない新人職員に「コーチング」を行うには無理があります。業務内容が分からないのに、「どうしたらいいと思うのか」と聞いても困惑するだけです。そのような場合には、「ティーチング」が必要となります。つまり、答え(やり方・業務の手法)は教える側が持っていて、具体的に助言を必要とする場合です。

日本の海軍軍人で、第26、27代連合艦隊司令長官として、歴史的に有名な山本五十六さんの言葉に、このティーチングとコーチングを解いた言葉があります。
やってみせ、言って聞かせて、させてみて、誉めてやらねば人は動かじ
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば人は育たず

さて、ここまで、コーチングについて話をしてきました。
患者・利用者満足(CS)とは、「患者様や利用者様のニーズに応えること」です。患者様は、疾病はじめ様々な不安を抱えていらっしゃいます。利用者様も、これからの生活や経済的な不安なども抱えておられるでしょう。これは一人の職員の問題ではなく、病院・介護施設全体の問題です。コミュニケーションと患者・利用者満足を考えましょうと言っているのに、コーチングの話を長々と述べているには理由があります。

皆さんは「ES(職員満足)なくしてCS(顧客満足)なし」という言葉をお聞きになったことがありませんか? どんなにお給料が高くても、離職率が低下することはありません。前述のコーチングにより心が満たされてくると、それ以上に「目の前の誰かに対し、何かをしてあげたい」と思うようになります。そうして、お互いに認め合うことにより、より満足感を覚えるようになります。「ありがとう」という魔法の言葉がたくさん出てきて、目標の達成感が喜びになり、気づきとともにさらに成長していくことになります。その過程において、CS(顧客満足:患者・利用者満足)が高まっていくのです。

では、コミュニケーションとは、どのようなものでしょうか?
コミュニケーションの語源はラテン語でコミュニス(Communis)、日本語に直すと「共有物」であるといわれます。どういうことかと申しますと、「共有する相手」が存在し、その相手と時間や空間、言葉、さらにはモノを含めてなんらかを共有しあうことをコミュニケーションというのです。

コミュニケーションは、環境やその目的によってさまざまに影響を受けやすいものです。
社交的で明るい元気なお嬢さんが、病院の中では「場違い」な印象を与えてしまったり、逆に声も小さく、おとなしい、暗い印象を与えてしまうと思われがちな方が、安心感と安らぎを与えていたり・・・、その時の相手の方の置かれた状況や気持ちによりさまざまに変わってきます。そのくらいデリケートなものなのです。

最後に、「相手のよいところを褒める技術」です。
これは、「アクノレッジメント」といって、相手の変化に気づき、「承認する、認める、感謝する」ということがあります。人は誰でも「認めてもらいたい」「私を見ていて欲しい」という欲求があります。「分かっているよ」という信号を送るためには、「言葉で伝える」ことが必要です。「結果」に焦点を当てる場合と、「事実(成長や成果の過程)」に焦点を当てる場合とがあります。「相手の行動過程(頑張り)」を認めて声をかけることは、とても強く印象に残っていきます。
その声のかけ方が「I(アイ)メッセージ」です。このIメッセージを送るためには、相手に関心を向けて「見る」必要が出てきます。

皆さん、コミュニケーションをよくするためにも、コーチングの技法を試してみませんか?

経営コンサルティング部
経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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