【医療・介護あれこれ】地域医療構想を踏まえた診療報酬改定の動向⑥ 『慢性期医療について』
長 幸美
アドバイザリーさて、今回は障害者病棟を含む、慢性期医療について考えてみたいと思います。
慢性期医療という言葉で、何を連想されますか?
「療養病床」を想像される方が多いのではないでしょうか?
その昔、介護保険制度において、療養型病床群(現在の療養病床)は「施設介護サービス」の 1つとして位置づけられ、医療機関の中で長期的に入院できるベッドとして定着してきておりました。各医療機関は、「医療保険適用」か「介護保険適用」かを選択することになりましたが、ここ数年、「療養病床」をはじめとする慢性期医療をとりまく環境は大きく変化しております。
「療養病床」は長期的に入院ができる病床という認識を持っている方が多いと思いますが、「介護療養病床」は平成29年度までで廃止することとされております。
前回の診療報酬改定では「在宅復帰機能強化加算」というものが出てきて、療養型であっても「在宅へ帰そう!」という動きが出てきています。また、今年4月の介護報酬改定では、介護型の療養病床に「機能強化型」ができ、「老健でも6か月の入所期間」が設けられました。老健と同様、「在宅への中間施設」としての位置づけがされているように思います。
ただし、医療度が高く、病院での加療が必要な、重篤で自宅では療養が困難な一部の患者に対し、「機能強化型」「在宅復帰機能強化型」を取得している病床は残そうという動きもあります。
では「障害者病棟」とはどのような病棟でしょうか?
厚生労働大臣が定める重度の障害者(重度の意識障害者を含む)、筋ジストロフィー患者または難病患者等を主とした病棟です。 当然のことですが、「呼吸器」を含む「重篤な状態の患者」も多く入院されています。同じような病床で「特殊疾患療養病床」というものもあります。何が違うのかというと「障害者病棟は一般病床で出来高算定」であること、「特殊疾患療養病床はベースが療養病床で包括病床である」ということです。同様の病態の患者が入院されていますが、一般病床と療養病床の違いがあるため、医師や看護師の配置基準に差があります。
療養病床の「在宅復帰機能強化加算」の届け出状況を調査すると、全体の約17%にとどまっています。届け出を出している病院では、平均在院日数が317日⇒159日へと短くなってきています。これは、在院日数の削減にもつながっているという判断にもなろうかと思いますが、反面、届け出を出されていない病院は8割を超えており、平均在院日数は360日と伸びていく傾向にあります。
病床の利用の観点からみてみると、在院日数が短くなってきたということは、稼働数を確保するためにも病床の回転率を上げることが課題となってきます。病床回転率も要件にありますが、入院経路(どこから入院しているのか?自宅からか急性期病床からの転院か?)、退院経路(退院後の生活はどうしているのか?)を考えていく必要もあります。
「退院支援員の病棟配置」など、専門職を置きサポートしていくことが必要になってくると思われますが、人件費の捻出などの課題も挙げられています。
また、療養病棟に入院している患者の医療区分についても、調査が行われており、比較的軽度な(医療度が低い)方が多く入院されており、「医療区分1」の患者の7割が在宅に帰ることが可能であると考えられています。
そして、「医療区分1」の患者の取り扱いに関しては、特養・老健を含めて議論されている状況があります。今後の動向を注目していくことが必要ですが、このような意味でも、在宅への流れを止めることはできないのではないでしょうか?
同時に、「医療区分2・3」の患者像に関しても、病態や疾病等の見直しが検討されています。具体的には、脳血管疾患を除くことや、うつ状態、頻回の血統測定、酸素療法を除くことや条件を付けることなどが検討されております。
では 本当に「医療区分1」の患者さんが自宅に帰り、生活をしていくことが可能なのでしょうか?医療度が低いとはいえ、「要介護状態」にある患者は多く、一人暮らしや核家族化が進んだ今日では、「一人で、自宅で、安心安全な日常生活をおくる」という事が困難な場合は往々にしてあると思われます。そこで日医が提案しているのが、「院内SNH」です。以前「転換型老健」がありましたが、殆どの病院が転換しなかったという話を聴いたことがあります。
地方の中小の病院では、「慢性期医療」を支え、「地域を支えている病院」が多いと思われます。今後の、改定の動向を注目していきたいと思います。
<参考資料>(クリックすると、別ページが開きます)
経営コンサルティング部
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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