【医療・介護あれこれ】地域医療構想を踏まえた診療報酬改定の動向⑦ 『在宅医療について』
長 幸美
アドバイザリー今回の改定の議論をされていく中で、『在宅医療』についても様々な議論が行われています。
まず、慢性期医療の中で『在宅への流れを作る』という事が行われています。これは療養型病床の入院患者の中で、医療区分1の患者の7割が自宅へ帰ることができるといわれているところからです。老健や特養においても、医療区分1の入所者について議論されているところですが、同時に『医療区分2.3』の方々の病態や疾病の見直しも行われています。
重症者をもっと受けてほしい、さらに在宅復帰に対しもっと積極的に働きかけして行きたいと考えられています。全国の療養病床で『在宅復帰機能強化加算』の届出を行っている割合は、わずかに17%です。この割合をもっと上げていきたいために、『退院支援職員の病棟配置』も検討されています。
では、医療区分が軽い方が本当に自宅に帰る事ができるでしょうか?
在宅医療は『服薬管理』『栄養管理』が難しいといわれています。
また、在宅に帰るには『排泄』『食事』『移動』の自立が必要だとも言われています。
慢性期医療から在宅への流れを作る中で、一番のネックになっている点ではないでしょうか?『どうやって高齢者の生活を守って行くのか』というところがポイントになってまいります。訪問介護や訪問看護、デイサービスなどの介護サービスを利用していかなければ在宅はありえません。そこには在宅で支えてくださる先生方の存在は大きなものがあります。そして、そのコーディネーターとしての『ケアマネージャーの役割』は大きく、医療と介護を繋ぐ役割も担っていると思われます。
一方で、現在課題になっていることはその医療資源の利用方法です。
前回の改定でサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなど集合住宅における訪問診療に対し、メスが入り診療報酬がカットされるという事がありました。その後の実態調査の中で、訪問診療の対象者でない方にも訪問診療が行われているということが見えてきました。
2015年11月11日 中医協資料 在宅医療(その4)
介護保険法の中には、国の責務として、『尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう』に医療・介護サービスの整備を行うことが定められています。さらに国民には『自ら要介護状態となることを予防する』ことが努力義務として定められています。
介護保険制度と介護予防の役割について 厚生労働省老健局老人保健課
このため、在宅医療に対しても『重症度や病態に応じた評価』をしていく必要があるのではないか、ということが議論されています。人工呼吸器や気管切開等の方を在宅で見ていくことに対しては評価されると考えられます。
また、健康相談のみで終わっているようなケースも見受けられることから、具体的には、『医療区分1の方への訪問診療に制限を加える』ことや、『患家までの距離』や『医師の裁量・実施した医療行為』等を考慮し、患者の疾患・状態に応じた評価をどうして行くのかということが議論されているようです。
今回の改定は『地域医療構想を実現するための後押しの改定』と位置づけられています。
急性期の医療資源をいかに利用するのか?
患者の疾患・病態に応じた医療を提供するためにどうしたらよいのか?
地域で暮らし続ける事ができるように医療として支援出来ることはなにか?
・・・と考えていくと、行き着くところは『地域包括ケアシステム』であると思われます。
在宅医療を行われている先生方、介護支援事業所の皆さんも、周辺の医療・介護支援をじっくり見つめ、これからの立ち位置を考えてみませんか?
次回は、『総合事業』について考えてみたいと思います。
<参考資料>
在宅医療について(中医協資料 2015年11月11日)
経営コンサルティング部
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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