【医療介護あれこれ】医療は究極のサービス業!

長 幸美

アドバイザリー

新年度に入り新入職員を迎える医療機関様や介護事業所様も多いことと思います。
街の中を歩いておりますと、新しいスーツに身を包んだフレッシュな若者を多く見かけ、山は新緑の季節となり、色とりどりの花々と共に、私自身も新鮮な気持ちになっています。

さて、そんな中で気になるのは、医療機関様や介護事業所様における「接遇」です。
連休中にある方から「医療機関の接遇について」このようなお話しをお聴きしました。

その方は、急におなかが痛くなり、会社の上司に付き添われて救急病院を受診されました。看護師さんは一目みてベッドに横になるように勧めてくださり、声を掛けながら脈を取ったり熱を測ったり、腰をさすって痛みが軽くなるように気を配ってくださったそうですが、医師はちらりと見て、「妊娠は?」と一言。20代前半の女性だったため、とても恥ずかしく、哀しい気持ちになったそうです。

別の方は、目の調子が悪く、目の奥に痛みもあったため、眼科にいかれました。視力も落ちていたようですが、本人は40代後半でもあり、手元も見えにくくなっていたため「老眼」ではないかと思われていたようですが、どのスタッフさんからも「老眼」という言葉は出ません。それどころか、「調整機能が少し落ちて・・・」「涙の量がへって・・・」となんとなく居心地が悪く、「一体どのような病気なのか?」「悪い病気でもう治らないのではないか」と疑念を抱いてしまったそうです。

逆に、50代で教師をしている女性が、風邪をきっかけに、咳が止らなくなり、咳き込むことが多くなって、心配して呼吸器科を受診したときに、医師から「年を取ってくると水分が減ってくるからネ、のどの粘膜にゴミがくっつきやすくなるだけだ。老化現象のひとつだよ」といわれ、もう二度と行かない!と憤慨されていました。

50代後半の癌末期の患者様のお嬢様で、余命3ヶ月と宣告された方が、「もう何もすることはない」と自宅へ退院することを医師から告げられ、混乱されていました。お嬢様は「医師の説明内容をどう受け止めたらいいのか、何もすることはないといわれても、家でどうしたらいいのか」、まだまだ呼吸状態が悪いくらいで、疼痛のコントロールもできていたためご本人様もご家族様も治療の可能性を信じて居られたのに、どこか良い病院はないのか、本当にもうなくなるのを待つしかないのか、と絶望されていました。

日常的によくある状況ではないでしょうか?(余命宣告はなかなかないかも知れませんが・・・)この状況をどのようにご覧になりますか?

医療は「サービス業」であると言われて久しいところでございます。それぞれに「接遇研修」を行い、「接遇には気を遣っているよ」と言われる医療機関様・介護事業所様も増えてまいりました。医療機関は、「感染症」をはじめとする「様々な病やけが」により、心身ともに健康な状態を維持できずに、「治療してほしい」「元気になりたい」と思っている方が集まる場です。また、介護事業所は「一人で生活ができなくなった方」「生活の支援が必要になった方」がご利用になります。いわゆる「社会的弱者」といわれる方々です。その方々が、一番望んでいる事は「病気が治ること」であり「元気に自宅で生活すること」であります。

ある医療機関の院長先生は「治って当たり前。結果が悪ければ訴えられ、嘆かわしい世の中になってきた」といわれていましたが、本当にそうでしょうか?

体調が悪くなったときの人々の不安は大きいものです。それが重大な病魔であったり、突然の災害にあったりした場合は、その恐怖や不安は計り知れないものがあります。
大きな衝撃とともに「まさか私が・・・!」「何かの間違いに違いない」という認めたくない思いが出てきます。次に「何故私が・・・?」「何か悪いことをしたのだろうか?」という怒りがこみ上げてきます。また、「食生活が悪かったのか」「仕事のストレスのせいだ」と自分を責める方もあります。そして不安や落ち込みの強い状態が続き、眠れなかったり、食欲がなかったり、集中力が低下する方もあるかもしれません。これらの心の動きは、当たり前の事です。

多かれ少なかれ医療機関というところは、そのような方々が出入りされることを知っておく必要があると思います。そういった心の動きがあることを知って、時には寄り添う事も必要になってきます。患者様やそのご家族様、地域の方々の思いを感じ、気付いて行動する感性も必要です。「医療機関は究極のサービス業」といわれる所以です。

新入職員が入ってきたこの時期に、是非皆様の医療機関様・介護事業所様のなかでも「どのような接遇をしているのか」
「どのような思いをこめて医療機関の運営をしていくのか」
「どのように地域を支えていくのか」
原点に立ち返って、見直してみられては如何でしょうか?

 

経営コンサルティング部
経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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