東北地方太平洋沖地震の医薬品への影響について

佐々木総研

アドバイザリー

今回の東日本大震災に伴い、既に感じておられるかと思いますが、九州地方でも様々な影響が出ております。

今回は、医薬品関係の影響に着目してみました。
東日本大震災により、東北・関東地方の多くの工場が影響を受けました。薬剤を製造する工場だけでなく、薬剤を入れる容器を製造する工場や物流センター及び配送倉庫が被災しました。
また、計画停電により、生産の中止や遅延、配送遅延などで薬剤の供給の停止や遅延がおき、結果として全国の医療機関に影響が出ております。

まず、あすか製薬の甲状腺ホルモン剤「チラーヂンS錠」です。東日本大震災の影響を受け、チラーヂンSの98%を生産していた、いわき工場(福島県いわき市)の製造設備や立体倉庫が損傷し、チラーヂンS生産の見通しがつかない状況にありました。この度、被災したいわき工場の製造ラインが再稼働し、チラーヂンS錠を出荷できるようになりましたが、フル稼働には時間がかかるため、当面は製造委託会社による生産、海外製品の緊急輸入を含め、被災前の供給量を確保する必要があるようです。

また、栄養剤製品として、「エンシュア・リキッド缶」及び「エンシュア・H缶」の両製剤の缶容器を製造・供給する仙台工場が被災したため、製造が一時中断しています。この度、それぞれ出荷再開予定の発表があり、リキッド缶は5月下旬に製造販売元である明治の群馬工場から、H缶は5月末をめどにアボット・ラボラトリーズのオランダ工場から出荷を再開する見通しです。
同じくラコールのイ一エヌ大塚製薬(株)花巻工場(岩手県)が被災したため、品薄状態となっているみたいです。

その他、久光製薬の宇都宮工場(栃木県宇都宮市)が被災したため、筋肉痛などに使用するシップ薬、「モーラステープL」が出荷停止となりました。こちらは、鳥栖市工場で「モーラステープ」を生産しており、ジェネリック製品もあるため、ただちに入手困難とはならないようです。

しかしながら、生産体制が十分に整っていない状況下では、従来通りの供給量を確保するためには、代替措置として、製造委託会社による生産や海外製品の緊急輸入が引き続き必要となります。そのため、今後も長期処方や過剰在庫の自粛を継続して行っていく必要があります。

(財務コンサルティング部 医業部 税理士 若松 大介)

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