【医療介護あれこれ】集団的個別指導・・・医療区分を考える

長 幸美

アドバイザリー

4月に入り、桜の開花とともに花冷え・・・体調管理が難しい季節ですね。
新年度も始まりました。今年度も、医療機関の皆様に旬な話題をお届けできるようにアンテナを張ってまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

さて、先日 3月28日療養病棟を持つ医療機関を対象に集団的個別指導が行われました。
はじめに、今回の集団的個別指導は、「医療区分の判定が不適切である事例が多数報告されている」との現状から、集団的個別指導を実施することになったとの報告がありました。

概要の中で、適時調査と個別指導の実施状況を説明されました。適時調査は4~5年に1回個別指導の選定理由としては、①適時調査で指摘事項が改善されないこと、②会計検査院からの指導要請、③内部告発や患者様、保険者からの情報提供、④集団的個別指導に出てこない、などが主なものとなっているようです。
・医療療養病床・・・228医療機関/400医療機関中
・有床診療所・・・・111医療機関/700医療機関
・不適切事例・・・・個別指導は10件、診療所4-5件 ⇒返還金あり

さて、この「返還金」というものが気になりませんか?

この返還金は、記録等により適切でない(過剰に請求している)とわかった場合は2年分、施設基準にかかるものは5年分の請求をさかのぼって返還することが必要になり、数千万から億単位の返還となります。十分に気を付ける必要があります。

今回のメインになっている「療養病床の医療区分」についてはアップコーディングが指摘されている事例が多いとの指摘がありました。療養病床はADL区分と医療区分により請求できる入院料が9つに区分されています。レセプト上で医療区分が高く設定されている状況が、レセプトデータ等で不適切な状況が指摘されたりや、算定期間に限りがある9項目の中で、不適切な事例が多いことが指摘されています。

電子カルテを導入されている場合は、基本は紙のカルテ(診療録)と同様ですが、必ず厚労省が出している「電子カルテガイドライン」を遵守することが求められています。
① 「真正」「見読性」「保存性」の基準を満たすこと
アクセス権限一覧表を作成し、適切に管理運営・・・成りすまし防止への対策
③ アクセスログやログの管理・・・ログ情報が残っているかどうかを確認すること
電子媒体保存システムチェック表を整備すること
運用規定が整備され、適正に運用されていることを確認すること
など、必須事項があるので、電子カルテ導入医療機関は合わせてしっかりと管理していくことが求められています。

不適切事例の主な内容としては・・・
① 事務や看護師任せ
⇒看護記録・体温表に記載されている患者状態と医療区分が合致しない体温表までチェックされるので注意が必要です
② 事務が自動算定されている
⇒算定制限があるものなど、機械的に1日明けて自動的にとっていると思われる事例がある
③ 医師が熟読していない・・・根拠はカルテへ、区分チェック表に医師のサインがあるか?
評価の手引きを熟読すること

医療区分ADL区分にかかる評価表の記入に当たっては各項目の定義に該当するか否かを判定することが大事になってきます。また、各項目の評価の単位については評価の手順をよく読み、その根拠をカルテに記載することが必要ですが、注射の内容・実施状況、喀痰吸引や体位交換、酸素の量を変更した根拠など、看護記録が非常に重要になってきます。

個別指導への日ごろからの対策としては、ひたすら点数表の解釈を熟読すること・・・これは医事だけが知っていてもいけません。医師、看護師をはじめコメディカルの方々もぜひ読み合わせをしてください。

すべてはカルテの記載が基本になります。
入院は、請求時・退院時の点検をするようにしましょう。
外来は、その日その日が勝負になります。

また、患者からのクレーム・職員の内部告発は十分に注意!が必要です。あらぬことで、情報を提供されてしまうと、必要ないことまで調べられることになります。

施設基準については、日常的に関連する部門がきちんと管理できるようにしましょう。
医事課は毎月必要な数字を見直し、管理できるようにしておきましょう。連携やチーム医療が主流になってきた現在は、どこか単独で基準を管理していくことは困難になってきています。医事課の役割は部門間の調整へとかわってきていると思います。

では個別指導の連絡が来た場合はどうしたらいいでしょうか?

カルテの記述を追加・修正することはできません。これは「改ざん」に値してくるため、先に述べた「真正性」のルールに引っかかってくることになります。しかし、カルテやレセプトの整理、各症例についての診断・治療・検査結果とカルテ記載及び保険請求の根拠等について十分説明できるようにしておくことは大変重要になります。

医師によるカルテの記載や体温表も含む看護記録への記載内容がなく、返還が求められる事例があるので、皆さんの医療機関でも一度見直して見られては如何でしょうか?

 

<参考資料>
○平成27年度 個別指導(医科)における主な指摘事項・・・近畿厚生局

経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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