【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】入院医療(その9)

長 幸美

アドバイザリー

 

今回は「入院医療(その9)」として、「療養病床の在り方」と「入退院の支援」についてみていきましょう。

【療養病棟入院基本料】
療養病床の評価については、11月17日の議論の中で、要件の整理をするとの方向性が出され、12月6日に一般病床も基本部分の評価と診療実績に応じた段階的な評価を組み合わせた評価体系について議論されてきました。

また、社会保障審議会医療部会では、医療療養病床の人員配置基準にかかる経過措置については、介護療養病床の転換が完了するまでの最大6年間延長する方向性が議論されています。これは、介護保険事業計画の期間、地域へ与える影響を考慮して認めてはどうかということが出され、経過措置の対象医療機関についても、限定的に考慮してはどうかという話が出されていました。

療養病棟は現時点では医療区分2・3該当患者の割合で、評価されていますが、患者の状態に応じた機能分化を促す観点からも、療養病棟入院基本料の要件を整理する方向で議論されています。

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出典:中医協資料「入院医療(その9)」20171208

評価体系の考え方としては、現在の「療養病棟入院基本料1」を基本として、患者の状態(現在の医療区分)を考慮することとされています。

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出典:中医協資料「入院医療(その9)」20171208

 

そこで、医療区分の見直しが議論されています。
医療区分2・3に該当する患者を分析すると、「中心静脈栄養」、「医師及び看護師による常時監視・管理」、「喀痰吸引(1日8回以上)」の割合が多いことがわかっています。

また、 医療区分3で「医師及び看護師による常時監視・管理」のみ該当する患者について、医療区分2で該当している項目があるかを見ると、約4割は該当する項目がなかったこと、 「医師及び看護師による常時監視・管理」のみ該当する患者について医学的な状態や医療・看護の提供頻度をみると、医療区分3該当患者の平均値よりも、比較的安定している患者の割合が多いということがわかってきました。

このようなことから、「医師及び看護師による常時監視・管理」のみに該当する患者の医学的な状態等を踏まえ、当該項目のみの場合を医療区分2に、当該項目と医療区分2のいずれかの項目が該当する場合を医療区分3に、見直してはどうかという議論がされています。
つまり、「常時監視」+「医療処置」が必要だという考え方に変えてはどうかということです。

また、在宅復帰機能強化加算の算定状況を調べると、明らかに算定している病棟のほうが、在院日数の短縮傾向であることもわかりました。
医療療養病床入院基本料1のほとんどの病院が算定していることも踏まえて、基準値をあげていくことが検討されています。

参考までに現在の施設基準を掲載します。

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出典:中医協資料「入院医療(その9)」20171208

 

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出典:中医協資料「入院医療(その9)」20171208

 

【入退院支援(その2)】
前回の議論の中で、入院前からの外来・在宅での入退院支援が重要であることが明確にされていました。
退院支援・連携に関する評価の算定回数は増加しています。
また、病床規模が100床未満の病院の場合、退院支援部門の設置が半分程度の割合であること、病床規模が大きくなるほど、退院支援部門の職員配置が多いことが課題として挙げられていました。

地域包括ケアシステムのイメージ図において、「退院後も住み慣れた地域で生活するための支援」として位置づけられています。

治療としての視点から「生活をする一人のヒト」として見ていくことが求められていると感じています。

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出典:中医協資料「入院医療(その9)」20171208

 

上記の図を時間軸に落とした説明(イメージ)が次のスライドです。

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出典:中医協資料「入院医療(その9)」20171208

 

以前、訪問先の病院の悩みとして、「病棟の看護師は患者さんがどのような生活を送っていたのか、想像ができない」「退院後の生活をイメージしたリハビリや支援の方法等がわかっていない」などという声をお聞きしたことがあります。

今回の改定では、「外来・在宅の生活から入院へ」「入院医療から地域の中でのせいかつへ」という「治し支える医療」についてもっともっと深めていくようにというメッセージが込められているようです。

 

<参考資料>
中医協資料_20171208「入院医療(その9)」

経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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