【平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定】平成30年度診療報酬改定にかかるこれまでの議論の整理(案)について

長 幸美

アドバイザリー

<参考>【速報】平成30年度診療報酬改定資料 告示出ました!

年が明け、福岡でも「大寒波」しかもかなり長期化した状況ですが、中医協の中では粛々と審議会が行われ、今までの議論の整理がなされているところまで来ています。これから短冊が作られ、いよいよ大詰め・・・といったところでしょうか。

さて、今回の議論の整理は、これまでコラムでも書かせていただいた、様々な議論の論点を整理されたもので、昨年12月11日に社会保障審議会医療保険部会・医療部会において取りまとめられた「平成30年度診療報酬改定の基本方針」に即して行われています。

1

出典:20171213 中医協総-2-1 平成30年度診療報酬改定の基本方針(概要)

 

この具体的な方向性については、簡単に基本方針の整理として、弊社「コラムdeスタディ」の中でも記載させていただいておりますので、ご興味がおありになる方はぜひご覧いただきたいと思います。

さて、この中を紐解いていく前に・・・今回の改定のキーワードは何かということをお話ししたいと思います。そのことをよく理解していただき、この論点を読んでいただけると、今回の改定の内容や同時改定の意味合いがよく理解できるのではないかと思います。

今回の改定は、「地域医療構想を実現するために非常に重要な改定」となっています。
では、なぜ「地域医療構想」を実現しなければならないのでしょうか?

2025年問題・・・つまり、団塊の世代がすべて75歳を迎える年には、日本の人口構成が5人に1人は75歳以上となり、3人に1人が65歳以上という超高齢化社会を迎えるということです。このため社会保障費が急増し、かつ、少子化により働き手が増えないという現状が起こります。社会保障費の中で大きな割合を占めているのが、医療費と介護給付費ということになりますが、この社会保障費の多くは税金と保険料で賄われています。ですが、保険料を上げていくには限界があり、この財源を確保することは容易なことではありません。
また、仮に賄うことができたとしても、「人手不足」というところはどうしようもなく、働き手も高齢化してしまいますので・・・

話を元に戻しましょう。

このような背景があり、人材をはじめとする医療資源を有効にかつ効果的に活用し、地域住民が安心して暮らし続けるためにどのように支えていくのかというところに重点を置き考えていきましょう、ということがそもそもの話の発端となっています。

核家族化して「親の老後は病院で診てもらえたら安心」という考え方が出てきてしまったのも社会的入院が増えた所以かもしれません。

また、都市部と地方都市、山間部では、住む方も医療や介護の提供体制にも差があります。このために「地域ごとに医療機能・介護機能を充実させ、地域としてどのようにどのように体制を整えていくのか」ということを、「地域の中で考えていきましょう!」ということが「地域医療構想」であり「地域包括ケアシステム」です。

また、大学病院と公的病院、中小規模の病院とクリニックではおなじ「医療機関」とひとくくりに言っても、役割もできることも違います。100床の病院が大学病院と同じことはできない・・・ということはだれが考えても明白だと思います。同様に、内科の先生が、外科の患者さんの手術はできないし、眼科の先生が骨折後のリハビリテーションを行うことはできないということも理解できることだと思います。医療人としての思いはあっても、一人の医師、看護師、一つの医療機関としてはできることに限りがあるということです。このために地域医療構想や地域包括ケアシステムの中では、それぞれがしっかりと力を発揮し、「地域を医療で支える」という役割があるように思います。生活を支えるのは「介護」の分野になりますので、この「医療」と「介護」は切っても切り離せないといえるでしょう。

こういった背景・地域の住民や医療提供体制・介護提供体制を踏まえたうえで・・・さらに、「自医療機関がどのような医療の提供ができ、何が強みとなっているのか」
「弱いところを知り、どの医療機関や介護事業所を提携していくのか」
「そのために何を充実して、どのような人材を確保していくのか」
「どのように転換していく必要があるのか」
ということをしっかりと分析し、立ち位置を明確にしていく必要があります。

これは、昨年のコラムの中で、繰り返し繰り返しお話をした内容です。
これらの状況を頭の中に入れ、描きながら今回の「平成30年度診療報酬改定にかかるこれまでの議論の整理(案)」を読んでいただくと、自医療機関への対応などが見えてくるのではないかと思います。

では、次回は具体的な論点を見ていきましょう。

 

【参考資料】
中央社会保険医療協議会総会資料「これまでの議論の整理」
薬価制度の抜本改革について 骨子(案)
薬価制度の抜本改革について 骨子 別紙(案)
保険医療材料制度改革の骨子(案)

経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

制作者の直近の記事

コラム一覧に戻る
お問い合わせ

PAGE TOP