【平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定】平成30年度診療報酬改定にかかるこれまでの議論の整理(案)②-1
長 幸美
アドバイザリー<参考>【速報】平成30年度診療報酬改定資料 告示出ました!
今回は表記議論の整理の二回目として、文書に沿ってみていきたいと思います。
今回は、Ⅰ 地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進、次回は、Ⅱ 新しいニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実について、みていきたいと思います。
Ⅰ 地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進
この「地域包括ケアシステムの構築」については最重要課題といってもいいと思います。
前回にもお話した通り、「自分たちがやるべきこと」「地域の中で、治し支えるために何をするのかということ」「どこと繋がっていくのか」ということを考えていくと、分かりやすいのではないかと思います。
「地域医療構想」により、地域の中による医療機能の確保を進め、
「地域包括ケアシステム」により、生活の支援体制を充実させ、
「医療」と「介護」の垣根を超え、「住んでいる方々の生活を支援していく」ということが求められていて、随所にそのメッセージが込められています。
(1)入院から在宅への流れを強化していく
①在宅復帰にかかる支援は入院前から始まる・・・「入退院支援加算」の評価
人生の最終段階をどこで迎えたいか?というアンケートでは、大半の方が「自宅・住み慣れた地域で」と答えています。その思いをどのように支えていくのか?を考えていくと、病棟の看護師をはじめとする医療スタッフが「家庭での生活の状況」を知ることが必要になります。このために「ケアマネージャーからの情報提供」や、「退院後の生活の場を見てリハビリを組み立てること」「退院前のカンファレンス」などが重要になってきます。
また、「食事を摂取する」ということは生きていくうえで意欲や楽しみにもなってきます。この「食事を自分の口で摂る」ことに対し、歯科医師のかかわりがとても重要になり、歯科医師がかかわる部分にも診療報酬の評価がついてくることになると思います。
これは余談ですが、生活していくうえで、「食事」「排泄」「入浴」にかかるウエイトが大きく、在宅医療を支援していくうえでは大きなポイントになってきます。このため、介護報酬でも「歯科衛生士」をはじめ、「栄養士」「医事期・生活期のリハビリ」について、評価や見直しが行われています。
今回の改定では、医療者が病院の中で待っているだけではなく、「訪問看護」「訪問リハビリ」などを活用して、地域の中に出ていき「在宅への流れを作ってください」という強いメッセージを感じます。病床機能報告の中に「無床診療所」も含まれ、「在宅医療の提供体制」を報告させているところも、この流れのもとによるものだと思います。
回復期リハビリテーション病棟についても、今までは「専従」のリハビリテーション専門職が必要でしたが、「退院後のサポートのために地域に出ていくこと」を推奨するような改定内容も含まれています。入院中のスタッフが、「私たちが訪問してサポートするから」という支援体制を作るということは、患者や家族の安心につながっていくのではないでしょうか?これが何を意味しているのかは、後段で述べたいと思います。
有床診療所については、「地域包括ケアモデル(医療・介護併用モデル)」での運用を支援するために、入院基本料の要件緩和と高齢者の入院受け入れにかかる評価を新設されることになっています。無床診療所の後方支援になってください、というメッセージだと思います。
②「かかりつけ」機能を評価・・・医師・歯科医師・薬剤師(薬局)の機能強化
日本の医療制度の特徴の一つである「フリーアクセス」があるため、医療者側と患者側の認識に相違が生まれていることが現状です。
地域の中で「暮らす住民」が一番不安なことは、「病気になったときに受け入れてもらえるか」「一人で生活して、何かあったときの手助けがどのように受けられるか」というところだと思います。前回の改定で、「治す医療から支える医療へ」の転換をうたわれていましたが、この暮らしを支えるというところは、今回も、さらに今後も変わらないと思います。
医療機関にとっての患者さまもそれぞれが、家族があり地域の中での生活があります。医療も介護も歩み寄り、情報を共有しつつ、一緒に支えていくことが必要で、そのマネジメントを行う方が「介護支援専門員(ケアマネージャー)」です。
このようなことをよくよく考えていくと、この「かかりつけ」機能というところがなぜ重要視されていくのかということがわかってくると思います。
「かかりつけ医」に求められていることは、「いつでも何でも相談できる医師」であり、次の絵に具体的に示されています。
出典:20170222 中医協資料「横断的事項:かかりつけ医機能(その1」
この図でも示されていますが、「生活指導」や「24時間の対応」「介護サービスとの連携」などが必要になってきます。
そして、これは「高齢者」に限ったことではありません。「小児慢性疾患を持っている患者」やNICU後の「小児の障害患者」、発達障害、精神疾患等の方々も、地域の中で安心して暮らしていく仕組みを作りましょう!ということが、今回の改定の中では評価されています。
具体的には、
〇かかりつけ医・・・地域包括診療料の実施者、24時間の往診体制にかかる要件の緩和
⇒服薬指導にかかる要件の明確化
⇒地域の当番医との連携を考慮
⇒医療ケアが必要な小児・・・学校との情報共有・連携を要件にする
〇かかりつけ歯科医の機能評価・・・口腔機能管理、地域連携に関する会議等への参加要件見直し、研修内容などの見直し
〇かかりつけ調剤薬局・・・地域医療に貢献する薬局について要件の見直し /など
③入院基本料・・・大きく組み換え!
一般病棟入院基本料及び療養病棟入院基本料等について、病棟の機能別への転換がはかられないというところで、下記のように組み替えられることとなります。
どういうことかというと、それぞれの医療機能に応じて、「基本部分」を決め、患者さんの状態(重症度)や医療実績のデータに合わせた「実績部分」により、入院料を評価する方法がとられることになります。
さらに、1月12日の中医協で、急性期医療は10対1を基準に7段階になることなどが審議されています。
出典:20180112中医協資料「入院医療(「その10」)より
療養病棟に至っては、20対1をベースにすること、経過措置の25対1については、必要な見直しを行ったうえで、2年間経過措置期間を延長することが決められています。しかしながら、前述の10対1入院基本料に加えてこの長期入院についても「データ提出加算」の要件化が検討されていますので、診療情報管理体制やデータ提出についても、この2年間でしっかりと提出ができるようにしていくことが必要だと思います。
地域包括ケア病棟(病床)については、算定日数上限の中で、「いかに早く自宅に帰る」ことができるようにリハビリや室内のしつらえの変更や介護保険の申請など、自宅への生活(介護)につなげていくための時間を確保するために設定された病棟です。
このためにどうかかわるのか、ということがとても重要になってきます。
④在宅復帰率・・・7対1病棟からの在宅復帰について見直し
現状ではほとんどの7対1の病院が在宅復帰率をクリアしており、「自医療機関内の地域包括ケア病床等への転棟により地域の医療機関との連携に課題が生じているとして、見直しされています。
ICUやHCU等についても、重症度、医療・看護必要度の評価項目が見直されるようです。
DPC制度については、基本係数から機能評価係数Ⅱへの置き換えを完了し、激変緩和措置については手法を見直したうえで引き続き必要な措置を講ずるとされています。また、名称が変わるようです。
⑤外来医療について・・・生活習慣病の重度化予防を推進
結論から言うと、「血液透析」について導入を遅らせること・・・つまり重要化予防を推進していくことが検討されています。このため、糖尿病透析予防指導管理料のじん不全器患者指導加算の対象患者の拡大が検討されています。
⑥在宅医療・訪問看護の確保・・・医療機関と訪問看護ステーションの連携
往診料の算定要件を見直すとともに、緊急往診加算について明確に、対象患者として「看取り期の患者」を追加することが決められています。また、退院に向けた取り組みとして、共同指導等の連携について、評価の見直しが行われることになっています。看取り等重症患者については、医療機関との連携を重要視する動きがあり、加えて自治体等の関係機関の連携について情報提供や共有等が行われるように見直しが行われる予定です。また、医療的ケアが必要な小児については、学校への情報提供等も評価を新設されるようです。
このように地域の中で暮らす住民に対し、医療機関・介護事業所、特定相談支援事業所等の福祉事業が相互に協力し、「暮らしを支える」ことに注力してほしいというメッセージの表れだと思います。特に訪問看護ステーション、医療機関からの訪問看護、生活動作をサポートするための訪問リハビリなどの評価が充実されてくるのではないかと思います。
中でも、口腔機能、服薬指導に関しては、今回かなり重要視されているように思います。
また、在宅医療に関しては、最大のポイントが、「看取り」に関することだと思います。
この「看取り」に関しては「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」に基づいた対応を求められています。ぜひ一度お読みください。
「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン(解説編)」
【参考資料】
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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