【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】今回の同時改定を読み解く
長 幸美
アドバイザリー<参考>【速報】平成30年度診療報酬改定資料 告示出ました!
立春とは名ばかりの冷たい日々が続いています。
1月の終わりから徐々に診療報酬及び介護報酬の改定の概要が明らかになってきました。
改定の内容を見るにつれ、その膨大な資料に凍り付いてしまうような日々を過ごし、改定も佳境に入ってきました。
今回の改定は、一言でいうと、「地域医療構想・地域包括ケアシステム」の構築を後押しする改定・・・また、完成形に近づけていくための改定といわれています。その全容が明らかになるにつれ、今までとはがらりと考え方が変わり、非常にメリハリがついた「地域を支える」というところに多くの評価がついています。細かな改定内容を見ていく前に、方向性と今後の医療機関・介護事業所の今後を考えていくうえで必要なことを整理しておきましょう。
診療報酬・介護報酬ともに基本的には、それぞれの機能・事業について「最低の基本ライン」がベースにあり、患者さんや利用者さんの「より重症な方を見ていく体制」と「実際に診療や介護サービスを提供した実績」について評価が付くように見直されています。
ベースになる「基本ライン」では、人員の配置、設備、体制・・・といった基本部分で今までの施設基準のベースになるものとなっています。
たとえば「急性期医療」を提供するために必要な基本体制は、「看護配置10対1以上、重症度、看護必要度を判定していること」などを最低基準・・・つまり基本ラインとし、「急性期医療を提供するうえで最低限必要な病院の体制」が示されていると思います。
今まで区分されていた「回復期機能」「慢性期機能」についても同様に、それぞれの機能を提供するうえで必要な体制を示されて、考え方としては、とてもシンプルに整理されていると思います。
出典:20180124 中医協総会「個別改定項目について」 より
このコラムの中で幾度となく、医療機関として「内部分析」「外部分析」を行い、それぞれの「軸足をどこにおいていくのか」「立ち位置を明確にしていきましょう」ということを申し上げてきましたが、この「軸足をどこに置くか」ということにより求められている要件が分かれてくるために、とても大事なことなのです。
また、実績評価の部分については、「診療報酬を算定していること」「重症者の受入れ状況の評価」など、実際の診療や連携の内容をどう評価していくかというところになり、機能別に細かく配慮されているように感じます。「医療者側の想い」だけではなく、実際の行動に対しても目を向けていかなければならなくなっています。
つまり、「急性期であれば、このような患者像・・・」というような整理の仕方をされているようです。さらに、「働き方改革」や「負担軽減」というところを重要視され、それぞれの「本来業務を再度見直す」ことが必要なようです。
データ提出加算が普及するにつれ、実際の診療内容や提出されているデータの活用方法も見直され、負担軽減の観点からも、データ提出用の評価を活用するように移行することも考えられています。今回は、病院ごとに今までと同様にレセプトに記載するか、データ提出のデータを活用するか、選択できるようになってきています。上方修正されている病院さんにとっては厳しくなると思います。
療養型の病院でも、データ提出は必要となりますし、介護事業に至っても、「VISIT」を活用した「介護の評価」の提出を求められてきています。将来的には、データ提出ができない医療機関・介護事業所はご遠慮願いたいということの表れかもしれません。
事務職員の作業能力を問われることになるでしょう。
医療機関の機能分化は、入院医療だけではありません。
医療機関にとっては「患者」であっても、地域の中で生活をする「生活者」です。このために「医療者も介護者も手をとり合って」いかなければなりません。その体制が「シームレスな医療・介護」であり、「地域包括ケアシステム」だと思います。
さらに言うと、このコーディネート役が「地域連携室」であり「ケアマネージャ」だと、認識しています。そう考えていくと、どれだけ重要なことか、どのような評価がされ、役割により、力を入れていかなければならないことはわかってくると思います。
今回の改定のキーワードは、「多職種連携」「機能分化」「重症化予防」「アウトカム」「データ収集・整理・加工」と表現できるのではないでしょうか。
これらのことを念頭に置き、個別改定項目などの情報を読み進めていくとよいのではないかと思います。
<参考資料>
〇中医協資料:個別改定項目(その3)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000192876.pdf
〇平成30年度介護報酬改定の主な事項について(20180126)
〇平成30年度介護報酬改定 介護報酬の見直し案(別紙)
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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