【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】調剤薬局の役割と改定の影響について その①
長 幸美
アドバイザリー今年の診療報酬・介護報酬同時改定で「かかりつけ薬剤師」「薬局における対人業務の評価」について考え方が大きく変わっていると思います。
今回は、その調剤薬局の改定の影響について考えてみたいと思います。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要_調剤(厚労省保険局医療課)
医薬分業の考え方はかなり定着してきて、処方箋受け取り率・・・つまり医薬分業を行われている割合も7割を超えてきていますが、実際の調剤薬局での処方箋応需状況はどのようになっているのでしょうか?
調剤報酬の「処方箋1枚当たりの調剤医療費の推移」は、以下の通りで、人の部分での技術料については若干の伸びとなっており、平成28年は処方箋1枚あたり平均2,240円の技術料となっています。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要_調剤(厚労省保険局医療課)
薬価については、適正化を図るという観点から、年々引き下げとなり、後発医薬品への切り替えや薬価差益は減少傾向にあり、あまり期待ができないのが現状でしょう。
ここで注目していきたいのが、今回の改定で大きく取り上げられている「薬局における対人業務の評価」であると考えています。
病床機能報告を基に地域の中の医療機能を在宅も含めて機能分化していくことが求められ、「より効率的に、地域の住人の生活を守る」ためには、有床診療所や在宅医療を支える無床診療所の先生方をいかに支援するのか・・・というところが求められています。しかしながら、調剤薬局の現状は、「主に特定の医療機関からの処方箋を応需している薬局が約7割を占めている」との調査結果が報告され、本来の「調剤薬局に求められている機能」を果たせていないのではないかということが議論されてきました。
それでは、本来求められてきた調剤薬局の機能とはどのようなものでしょうか?
医薬分業とは、診療・・・つまり薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師、薬剤師という専門家が分担して行うことを意味します。この歴史は古く、神聖ローマ帝国の王が医師による毒殺を恐れて、主治医の処方した薬剤を別のものにチェックさせたのが始まりと伝えられているそうです。
対症療法が多い現代の医療は、患者の症状に応じて、3剤、4剤と薬剤を増やして患者を助けようとします。しかし、どんなに良い薬剤でも、過剰投与と薬剤の相互作用で悪影響を及ぼすものでもあります。高齢者の不定愁訴が薬剤を中止し整理することによりおさまった話はよく聞かれるお話だと思います。このように最小の薬剤で最大の効果を上げることが求められて、患者さんにとっても、薬剤費の適正化についても効果を上げることも期待されています。
さて、話を戻しましょう。
今回の改定で重点的に議論されてきた「かかりつけ薬剤師」と「地域医療に貢献する薬局の評価」、それから「薬局における対人業務の評価」については、このそもそもの薬剤師の役割・・・医薬分業により薬剤の過剰投与と薬害・・・つまり薬剤の相互作用で悪影響を及ぼす状況を何とかなくしていきたい・・・ということがつながってきています。
医薬分業をする調剤薬局に対して求められている基本部分の考え方になるのではないかと思います。
次のスライドは平成27年に公開された「健康サポート薬局」についての説明資料として出されていた内容です。前回の改定についてもこの「かかりつけ薬剤師・薬局」というものの中で説明されている役割や業務内容が、今回の改定にも大きく反映され、非常に大きな役割を示していると思います。
この中でも、「かかりつけ薬剤師・薬局」は医療機関との連携をベースとして、副作用や効果の確認、多剤・多重投薬や相互作用、すべての医療機関の処方情報を把握すること、さらに24時間、在宅への薬学的管理、服薬指導などを求められており、今回の改定でも多くの評価(加算)がついてきています。
加算がつくということは、その役割をしてほしいというメッセージであり、それ以外の基本報酬が見直されている(マイナス評価になっている)現状は、「そもそも論に戻り調剤薬局の役割・・・つまり医薬分業を担うということがどういうことかを考えてほしい」ということを示されているように感じます。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要_調剤(厚労省保険局医療課)
では、今回の改定で何がどのように変わっているのでしょうか?
(1)かかりつけ調剤薬局・薬剤師の常勤要件の緩和
⇒週32時間の勤務常勤換算で1人としてのカウントができるようになった。
このことで、基準調剤等の薬剤師勤務要件なども緩和されています。
(2)対人業務の評価
⇒ここでは様々な業務や体制について、新設の加算や評価が微増しています。
算定の要件などはありますが、今まで述べてきた医薬分業の役割に関してしっかり考えて対応して
ほしいというメッセージを感じます。
① 地域支援体制加算 (新設) 35点
⇒基準調剤加算は廃止され、かかりつけ薬剤師が機能を発揮し、地域包括ケアシステムの中で地
域医療に貢献する薬局について、夜間・休日対応等の地域支援の実績等を踏まえた評価を新設
されたものです。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要_調剤(厚労省保険局医療課)
基準調剤料1を算定している場合は上記(1)の地域医療に貢献する体制を有することを示す相当の実績については適用せず、「麻薬小売業者の免許を受けている」「在宅患者薬剤管理の実績」「かかりつけ薬剤師指導料等にかかる届け出」で良いこととされています。
② 薬剤服用歴管理指導料 125点(微増)
⇒患者の服薬指導を行い、処方医に減薬の提案を文書で行い、その結果、処方される内服薬が減
少した場合に算定するものです。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要_調剤(厚労省保険局医療課)
この中に、適切な手帳の活用実績が相当数あると認められない保険薬局に対する薬剤服用歴管理指導料の区分が新設されました。
(新)薬剤服用歴管理指導料の特例 13点
これは6月以内に再度処方箋を持参した患者のうち、手帳を持参した患者の割合が50%以下である保険薬局が該当します。計算は以下の考え方となっています。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要_調剤(厚労省保険局医療課)
③ 重複投薬・相互作用等防止加算 40点又は30点(微増)
⇒調剤及び薬の受け渡し時において、服薬情報に基づき薬の重複・残薬調整など、処方医に「疑
義照会」したうえで処方内容を変えた場合に算定します。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要_調剤(厚労省保険局医療課)
④ 服用薬剤調整支援料 (微増)
出典:平成30年度診療報酬改定の概要_調剤(厚労省保険局医療課)
⑤ 乳幼児服薬指導管理加算 12点(微増)
⇒6歳未満の乳幼児への指導管理について、加算もアップしています。
⑥ 服薬情報等提供料 (微増)
⇒「かかりつけ薬剤師」が行う業務として行うことを前提とされています。
この為、薬剤師指導料等を算定している場合は、服薬情報等提供料は算定ができませんので注
意が必要です。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要_調剤(厚労省保険局医療課)
⑦ 無菌製剤処理加算 (微増)
⇒在宅での中心静脈栄養や抗悪性腫瘍剤、麻薬などを無菌製剤処理した場合の加算が2点アップ
となっています。6歳未満の場合は5点アップです。
⇒どこでもあるわけではないと思いますが、無菌調剤室を共同利用した場合は、無菌調剤室を提
供する薬局と処方箋受付薬局の合議とすることを明確にされています。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要_調剤(厚労省保険局医療課)
⑧ 在宅患者訪問薬剤指導料 乳幼児加算 100点 の新設
⇒在宅で療養を行っている6歳未満の乳幼児であって通院が困難なものに対して、訪問し薬学的
管理及び指導を行った場合に加算として評価されました。
(3)調剤料の見直し・・・基本料が組み換え
⇒後発医薬品調剤体制加算に規定されている後発医薬品割合を見直し、85%以上の評価がつきまし
た。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要_調剤(厚労省保険局医療課)
⇒その反面、後発医薬品の数量シェア率が低い場合は、調剤基本料から2点減算されることとなりまし
た。
⇒調剤料については、そもそもの基本料が減算されていますので、特に後発医薬品の対応をしていな
い調剤薬局は痛手となります。
除外要件もありますので、注意が必要です。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要_調剤(厚労省保険局医療課)
(4)妥結率と薬価の見直し・・・マイナス評価
⇒未妥結減算については、単品単価契約とすることが望ましいとされ、妥結率の報告にかかる取り扱
いについて、厚生局への報告時期を10月~11月まで二か月間認めるように変更となりました。
⇒さらに、未妥結減算及びかかりつけ機能にかかる基本的な業務を実施していない場合の減算が統合
されています。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要_調剤(厚労省保険局医療課)
さて、ここまで、今回の改定の概要を見てきましたが、皆様の調剤薬局さまでは、どのような対応がなされているでしょうか?
次回のコラムにて、その対応について見ていきましょう。
【参考資料】
〇平成30年度診療報酬改定の概要_調剤(厚労省改定説明会資料)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000197985.pdf
〇診療報酬 別表第3 調剤報酬点数表
〇別添3 調剤報酬点数表に関する事項
〇別紙様式1
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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