【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】新「医業広告ガイドライン」について その②

長 幸美

アドバイザリー

こちらのコラムは、新「医業広告ガイドライン」について その①の続きとなります。

まだご覧になられていない方は上記をご参照ください。

前回、広告の規制事項の中でも限定解除として広告を認められる場合の具体的な要件まで確認していきました。

 

では、広告可能な事項についてはどのような取り決めがあるのでしょうか?

(1) 医療に関する広告として広告可能な範囲

法又は広告告示により広告が可能とされた事項以外は、いかなる方法によるかを問わず、広告してはならないとされています。

(2) 医療機能情報提供制度との関係

専門外来を除いて医療に関する広告・・・原則として広告可能

ただし、都道府県が独自に報告を求める事項については、法又は広告告示で広告可能な事項として定められていない場合には、広告できないとされています。

(3) 広告可能な事項の表現方法について

①   広告の手段・・・文字、写真・イラスト・映像、音声等による表現も可能

②   広告可能な事項の記載の仕方・・・患者・家族がわかりやすい表現が可能

③   暗号や記号の使用・・・正確な情報伝達ができる場合は使用可能

(4) 広告可能な事項の具体的内容

広告可能事項については、一つ一つの事項を個別に列記するのではなく、一定の性質を持った項目群として、まとめて「○○に関する事項」と規定するいわゆる「包括規定方式」をとられています

①   「医師又は歯科医師」・・・医師法又は歯科医師法に規定された医師免許

外国における医師又は歯科医師である旨の広告はできないものとされています。

②   「診療科名」・・・医療法施行令に規定する診療科名

⇒又は当該診療を行う医師が厚生労働大臣の許可を受けたもの

<政令に定められた診療科名>

「広告可能な診療科名の改正について」(平成 20 年 3月 31 日医政発第 0331042 号厚生労働省医政局長通知)

・「内科」「外科」のほか

・身体や臓器の名称、患者の年齢等の特性、診療方法の名称、疾患の名前等の組み合わせ

・「眼科」「耳鼻院長化」「アレルギー科」「小児科」等の単独の診療科 /等

※下記参考資料「医業広告ガイドライン」の13p.~16p.をご参照ください。

③   病院又は診療所の名称、電話番号、所在の場所、管理者の氏名等(法第6条第3項第3号関係)

④   診療日若しくは診療時間又は予約による診療の実施の有無(法第6条の5第3項第4号関係)

⑤   保険医療機関等の法令の規定に基づいて一定の医療を担うものとして指定されている内容(法第6条の5第3項第5号関係)

・保険医療機関である旨・・・健康保険法

・労災保険指定病院、である等・・・労災保険法

・母体保護法指定医である旨・・・母体保護法

・臨床研修指定病院、等・・・医師法又は歯科医師法

・身体障害者福祉法指定医である旨・・・身体障害者福祉法

・精神保健指定医、指定病院又は応急入院指定病院である旨・・・精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

・生活保護法指定医療機関である旨・・・生活保護法/ほか、10項目あります。

⑥   地域医療連携推進法人の参加病院、等 (法第6条の5第3項第6号関係)

⑦   入院設備の有無、病床の種別ごとの数、医師・歯科医師・薬剤師・看護師そのほかの従業者の員数など(法第6条の5第3項第7号関係)

・施設の概要・・・敷地面積や建築面積・階層数 /等

・入院設備の有無

・病床の種別ごとの数又は病室数

・保有する施設設備に関する事項・・・手術室、集中治療室、患者搬送者等の有無

・病室、機能訓練室、談話室、食堂、浴室又は院内売店その他の設備に関する事項

・障害者等に対する構造上の配慮・・・バリアフリー、院内点字ブロック等の有無など

・据置型の医療機器等の機械器具の配置状況・・・画像診断、空気清浄器等など。

⇒ただし、医療機器では医療機器が特定できる販売名や型式番号については広告できませんのでご注意ください。

⑧   医療職の人員配置等(法第6条第3項第8号関係)

当該病院又は診療所において診療に従事する医師。・歯科医師・薬剤師・看護師その他の医療従事者の氏名、年齢、性別、役職及び略歴は広告可能とされています。

・医療従事者の範囲・・・民間資格の取得者は広告できません

⇒「具体的な範囲は、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、義肢装具士、診療放射線技師、臨床検査技師、衛生検査技師、臨床工学技士、歯科衛生士、歯科技工士、救急救命士、管理栄養士及び栄養士とする」とされています。

・当該病院又は診療所において診療に従事する医療従事者の氏名、年齢、性別

⇒「院長」「副院長」「外科部長」「薬剤部長」「看護師長」又は「主任」等

・当該病院又は診療所において診療に従事する医療従事者の役職

⇒非常勤の医師の場合は、「非常勤である旨」「勤務する日時」を示す

 学会や職能団体等における役職については次の略歴に含まれる

・当該病院又は診療所において診療に従事する医療従事者の略歴

⇒生年月日、出身校、学位、免許取得日、勤務した医療機関(診療科)等について想定されています。

 研修については研修の実施主体や内容が様々であることから、広告が認められていない事項であることに留意が必要です。

・医療従事者の専門性に関する認定を受けた旨・・・専門医・認定医など

⇒厚生労働大臣に届出を行っていて、当該団体が認定する資格は可能です。

たとえば、「○○学会の認定〇○専門医」など、がそれに当たりますが、厚労省に認められない「任意団体」、個人が自称して「〇○専門医」として記載することはできませんので注意が必要です。

   時間外等の診療、医療の安全を確保するための措置、個人情報確保のための措置等(法第6条の5第3項第9号関係)

下記に例示するものは一部であり、客観性・正確性を確保しうる事項があれば広告可能である事に留意しましょう。

・休日又は夜間における診療の実施

・診療録を電子化している旨

・セカンドオピニオンの実施に関すること

⇒費用(予算)、相談体制等についても広告可能です

・当該医療機関内に患者からの相談に適切に応じる体制を確保している旨

⇒いわゆる「苦情相談窓口」その体制がとられていることをさします。

・当該医療機関内での症例検討会を開催している旨

⇒症例検討会、臨床病理検討会の開催有無など

・医療の安全を確保するための措置・・・指針の整備、委員会の開催など、

⇒院内感染防止に関することも広告が可能です。

⇒ただし、「医療の安全を保障します」「万全の案管理体制」等の広告は客観的な事実として評価ができないため、誇大広告として認められていません。

・個人情報の適正な取扱いを確保するための措置

⇒いわゆる個人情報保護ポリシー、個人情報の保護に関する従業者の教育体制の実施状況や、除法漏えい防止のためのソフトウエアの導入など、広告可能です。

・平均待ち時間・・・広告している平均待ち時間と現実の乖離が起きないように、適宜更新することが必要です。

・開設日、診療科別の診療開始日

⑩   他の医療機関・介護事業所との連携体制に関すること(法第6条の5第3項第10号関係)

・紹介可能な他の病院又は診療所の名称

・紹介可能な保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者の名称

・共同利用をすることができる医療機器に関する事項

⇒医薬品医療機器等法の広告規制の趣旨に鑑み、承認又は認証を得た

医療機器に限定するとともに、販売名や販売名が特定される型番は広告しないこととされていますので、注意してください。

・紹介率又は逆紹介率

⑪   「診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報の提供第6条の4条第3項に規定する書面の交付その他の当該病院又は診療所における医療に関する情報の提供に関する事項」(法第6条の5第3項第11号関係)

⇒いわゆる開示関係ですが、地域連携クリティカルパスを含む支援計画の提供方法についても広告可能です。

相談窓口の連絡先等も広告することが可能とされています

・ウェブサイトのアドレス、電子メールアドレス

・入院診療計画書の提供

・退院療養計画書の提供

・診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報の提供

⑫   当該病院又は診療所において提供される医療の内容に関する事項(法第6条の5第3項第 12 号関係)

「検査、手術その他の治療の方法」に関しては、保険診療等の医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして広告告示で定めた事項に限定して広告可能であるものであり、往診の実施に関すること等その他の医療の内容については、広く広告が可能とされるものであることと明記されています。したがって、保険請求の名称を利用することはもちろん可能ですが、わかりやすい表現を行うことが求められています。

※詳細は「医療広告ガイドライン」の24p~26pに「具体例」を含めて記載があります。よくご覧ください。

・検査、手術その他の治療の方法

・提供される医療の内容

⑬   「当該病院又は診療所における患者の平均的な入院日数平均的な外来患者又は入院患者の数その他の医療の提供の結果に関する事項であって医療を受けるものによる医療に関する適切案選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの(法第6条の5第3項第 13 号関係)」

・当該病院又は診療所で行われた手術の件数(広告告示第3条第1号関係)

・当該病院又は診療所で行われた分娩の件数(広告告示第3条第2号関係)

・患者の平均的な入院日数(広告告示第3条第3号関係)

・在宅患者、外来患者及び入院患者の数(広告告示第3条第4号関係)

・平均的な在宅患者、外来患者及び入院患者の数(広告告示第3条第5号関係)

・平均病床利用率(広告告示第3条第6号関係)

・厚生労働大臣が指定する病院の病棟における療養に要する費用の額の算定方法(平成 20 年厚生労働省告示第 93 号)

・治療結果に関する分析を行っている旨及び当該分析の結果を提供している旨(広告告示第3条第7号関係)

・セカンドオピニオンの実績(広告告示第3条第8号関係)

・患者満足度調査を実施している旨及び当該調査の結果を提供している旨(広告告示第3条第9号関係)

⑭   「その他前各号に掲げる事項に準ずるものとして厚生労働大臣が定める事項」(法第6条の5第3項第 14 号関係)

・保険医療機関である事(広告告示第4条第1号~第3号関係)

・「法令の規定又は国の定める事業を実施する病院又は診療所である旨」

⇒いわゆる「救急病院」「休日夜間急患センター」「災害拠点病院」など

・医療職以外の重量者の氏名等・・・(広告告示第4条第5号関係)

⇒事務長、主任なども略歴とともに公開可能となっています。

・「健康診査の実施」(広告告示第4条第6号関係)

⇒いわゆる「乳幼児健診」「胃がん健診」「肝炎ウイルス健診」等です

⇒注意が必要なものは、「遺伝子検査」「アンチエイジングドック」等の医学的にさまざまな意見があり、広く定着していないものについては広告の対象としては認められていませんのでご注意ください。

・「保健指導又は健康相談の実施」(広告告示第4条第7号関係)

⇒予防的なものの相談に応じる旨を、いわゆる相談者に対し健康の保持増進のための日常生活上の指導等を行うことを意味するもの

「がんに関する健康相談」、「生活習慣病に関する健康相談」、「歯の健康相談」、「乳幼児保健指導」、「禁煙指導」等、対象者や指導対象を付記することも差し支えないものとされています。

⇒しかしながら広く定着していないものに関してはここでも広告の対象として認められていませんので、注意が必要です。

・「予防接種の実施」(広告告示第4条第8号関係)

⇒例えば「インフルエンザの予防接種実施」や「麻しんワクチン(はしかを予防するための注射です)を取り扱ってます」等の予防接種を実施している旨を除いて、その効果に関する広告は認められないことに留意する必要があります。

・「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第 17 項に規定する治験に関する事項」(広告告示第4条第9号関係)

⇒いわゆる「治験を実施している」ということを広告することが可能ですが、治験の対象となる疾患名を除いた具体的な治療効果に関すること又は国内外での販売名(商品名)については、医療に関する広告としても、認められないとされていることに注意が必要です。

・介護保険医かかる付帯業務・・・(広告告示第4条第 10 号関係)

・「患者の受診の便宜を図るためのサービス」(広告告示第4条第 11 号関係)

⇒費用の支払方法又は領収に関する事項・・・クレジットカードや分割払いの可否等

貸テレビの1時間当たりの値段、インターネットへの接続環境やその費用など

対応することが出来る言語・・・手話も含む

施設内に設置された店舗・・・食堂、売店、喫茶店など

駐車場に関する事項・・・料金も含め記載可能

送迎サービス・・・最寄駅等からの送迎サービスについては時間等を広告可能

携帯電話の使用に関する事項

通訳の配置・・・対応時間やその費用を含めて広告可能

・「開設者に関する事項」(広告告示第4条第 12 号関係)

・「外部監査を受けている旨」(広告告示第4条第 13 号関係)

⇒公認会計士の監査を受けている旨を広告する場合は当該監査を受けた年月を併記することとされています。

※このほか、日本医療機能評価機構が行う診査結果、都道府県知事が定める事項などに該当する場合なども広告が可能とされています。

 

昨今、インターネットやスマートフォンを利用する方が増えてきています。

広告・広報についても以前の広告・広報のあり方と、大きく変化してきています。このため、多くの医療機関がインターネットでの広告に力を入れてこられているのではないかと思います。広報の担当者やこれからホームページを立ち上げようとされている方は、これらのガイドラインの内容をよく読み、抵触しないようにする必要があります。

 

ホームページに記載している内容等も対象になりますので、今後この新たな基準に基づいて一度見直しを行う必要があろうかと思います。

 

今回ここに取り上げた内容は、院内でよく該当するのではないかと考えられるものを中心に記載していますが、とても書ききれるものではありません。詳細な内容は必ず参考資料にも載せている「医療広告ガイドライン」をお読みください。

 

 

 

 

<参考資料>

 

〇医業広告ガイドライン

「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告塔に関する指針」

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000205362.pdf

 

〇広告可能な診療科名の改正について

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/kokokukisei/dl/koukokukanou.pdf

 

 

経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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