【医療介護あれこれ】「第12回 花立セミナーに参加して」
長 幸美
アドバイザリーはじめに・・・今年は西日本全体に尋常ではない豪雨となり、地球温暖化の恐怖とともに、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
また、この災害により亡くなられた方々のご冥福を心よりお悔やみ申し上げます。合掌。
さて、そのような「西日本豪雨」の中、今年も「花立セミナー」に行ってまいりました。
高速が人吉まで通行止めになり、今年は断念せねばならないかと思っていましたが、なんと予定者数が一人も欠けることなく、全員参加のもと雨雲を吹き飛ばすほどの熱い情熱的なセミナーが開催されました。
北は宮城県から南は沖縄まで、受講生36名、素晴らしい講師陣に囲まれ、とても濃い内容で、贅沢なセミナーだなあと感じました。
さて、「花立セミナー」とは、宮崎県立日南病院の医療管理部医療連携科の木佐貫先生が中心となり、毎年企画してくださっている事務職員のためのスキルアップセミナーです。毎年、この梅雨の時期に開催されるのですが、私はこのセミナーをとても楽しみにしています。合宿形式で、夜皆さんと語り合う時間を通じ、熱い思いを胸にまた一年頑張っていくパワーをいただくことができます。
病院の運営をしていくには、事務職員がスキルアップし、マネジメント力を持った事務職員が一人でも増えることが必要です。そして、病院全体が良い方向へ行き、ひいては地域全体の医療の質向上につながることを目的に開催されています。
事務職員向けのこのような合宿形式のセミナーは少なく、「事務」の一言では片付けられない多方面の切り口で、事務の立ち位置・役割の大きさを気付かせてくれるセミナーです。
今年の基調講演は、上尾中央総合病院の久保田巧事務部長の話で幕を開けました。
残念ながら、私は途中参加のため、この基調講演は聴くことができませんでしたが、事務職がどのように「病院」を動かしていくか、成果の最大化を目指す事務職の考え方とは・・・というテーマで、話をいただきました。
久保田さんのお話は過去にも一度お聞きし、名刺交換をさせていただいたことがある方で、懐かしい思いがありました。懇親会や二日目のまとめの中で、お話しくださった「ラダーを使って教育をしているが、これは教育の一つのツールに過ぎない。コミュニケーションをとり、部下のやる気を引き出すためには、6つのコツがある。承認し、相談に乗り、ほめること、まずは相手を信頼すること、がとても重要だ」ということ。
「昔からこうしている」という言葉は封印することなど、改めて自分を振り返ることができました。院内だけではなく、どの組織にも言えることで、顧問先様との関係性を作っていくためにもとても重要なことと感じています。
また、「業務」と「作業」は違うこと、これはともすれば忘れがちで、「作業」がすべてのように思えてくるものです。例えばパンフレットを補充すること、これは単純に作業ですが、「なくなっているよと指摘されて補充する」のではなく、不足が起こらないようにすること、この為にはどうしたらよいのか考えていくことが重要になります。
今年は、第2講目の実習演習「病院が進むべき道筋を考えてみよう」という大きなテーマで、実際の宮崎市内の4つの病院の内部情報、外部情報を読み解き、病院が進むべき道筋をどう考えていくか・・・という内容で、演習が行われました。
地域の中の「自院」の立ち位置を見極めていくためには、院内のことをもっと知ることが必要です。それとともに地域の中の人の流入・流出をしっかりと見極めていく必要があります。SWOT分析により、病院の強みと弱み、外部環境の機会と脅威をしっかり見ていく必要はありますが、その過程の中では「相手の組織の経営基盤」をも理解するということも大事ではないでしょうか。
第3講目は、実際に病院で広報を担当されている製鐵記念八幡病院の有田円香氏の講演です。「病院の広報戦略を考える」と題して、病院におけるPRの役割について、とても分かりやすく話してくださいました。
病院の広報の一番の目的は「病気を発症する前の生活者」に病院のことを知ってもらうことにあります。
人が物を買う時の行動は、「AIDMAの法則」が有名ですが、
「A」 ⇒ 「I」 ⇒ 「D」 ⇒ 「M」 ⇒ 「A」
Attention Interet Desire Memory Action
(認知) (関心) (欲求) (記憶) (行動)
病院を選ぶ時の行動を「人の購買行動」に例えるのはよろしくはないかもしれませんが・・・私はこれこそ「ブランディング」ではないかと思っています。知ってもらわなければ「選ばれる」こともありません。
この中でも特に「なるほどな」と納得し、意識しておく必要を感じたことがあります。
それは「情報の非対称性」と「双方向のコミュニケーション」です。
これは病院だけではなく、我々一般企業でも同じだと思いますが、自医療機関の強みを果たしてどれほどの方々が理解しているでしょうか?
私も社内では「何をしているのだろう」と思われているかもしれません。このくらいわかるでしょ?!はダメなのですよね。
それと同時に、地域生活者の知識(理解)と医療者・医療機関の知識(理解)には大きなギャップがあり、広報にはこのギャップを埋める役割もあることを知って、コミュニケーションをとらなければならないということも、大きな示唆になりました。
病院に置き換えると、病院と地域の生活者との橋渡し役を行うことが広報にとってとても重要な役割になるということを認識していかなければならないと思います。
このためには、広報担当者の目線は「地域の生活者」であり「地域のクリニックや介護事業所」になることが大事だということですね。
また、この講義の最後に「広告規制」のお話がありました。平成30年5月8日に「医療広告ガイドライン」が新たに交付されました。広報担当者はしっかりと読み込み、抵触しないようにする必要があります。
第4講では「病院における診療情報管理」について浜の町病院の診療情報管理士 重松千恵氏から、診療録管理の歴史や現在の診療情報管理について、どのような業務内容であるのか、その重要性の変遷とともに、重要性について講義されました。
膨大な診療情報をどのようにまとめ、データが正しいかエビデンスをとり、そのデータに意味を持たせ、さらに可視化してどう見せていくのか・・・というお話です。
物事を見ていくためには、三つの視点があるとよく言われます。
皆さんも「鳥の眼、虫の眼、魚の眼」という言葉は聞かれたことがあると思います。
・鳥の眼 =マクロの視点、俯瞰的にみる視点
・虫の眼 =ミクロの視点、近づいてみる視点
・魚の眼 =トレンドの視点、時代や社会的なものを通してみる視点
どういうことかというと、マクロ⇔ミクロ⇔トレンド それぞれの視点には、双方向のコミュニケーションが重要であることを意識していかなければならないということ、事務職としてどうとらえ、動いていくかということを改めて考えさせられました。
どの視点も重要で欠けないようにしなければなりません。
また、事務職員が「事務的な作業・仕事の仕方」だけをやっていてはだめなのだな・・・ということを改めて感じた講義でした。最後には、重松さんが「世界診療情報学会に行きたい!」という夢も飛び出しました。重松さん頑張れ!!
最期に、総合ディスカッションが行われました。講師の先生方が前に立ち、今年のテーマである「これからの病院経営を考えよう」ということをディスカッションをしました。
会場からの質問も出ていました。「人材育成の話では、ラダーは一つのツールに過ぎないこと、どんな職員になってほしいのかを具体的に出していくことが第一歩だ」ということ
「分析・・・つまり現状をどのように把握していくか」ということやいろいろな情報がある中でどう落とし込んで活かしていくかということを「診療情報の視点」「連携の視点」「広報の視点」等、様々な切り口から見ていく本当にあっという間の時間でした。とてもとても時間が足りない!!
木佐貫先生はじめ、講師の先生方、事務局の皆さん、本当にありがとうございました。
受講生の皆さんも本当に熱く・熱心な方ばかりで、大きなパワーをいただきました。
「はじめまして」の方も、「お久しぶり」の方も、つながりを持つことができました。また、お会いできる日を楽しみにしています。
皆さんも一度、ぜひ参加してみませんか?
きっと、人生が変わると思います!!
【番外編】
今年は大雨の影響で、急遽飛行機での宮崎入りとなりました。車と違ってらくちんでした。
プロペラ機!! 飛行機の入り口には手作りのWelcomが!
離陸後あっという間に雲の上! 雲の上は真っ青な青空!!
懇親会の一コマ
講師と記念撮影
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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