【医業介護あれこれ】外国人技能実習制度について(視察を通して考えること)
長 幸美
アドバイザリー今回、「介護技能実習生視察研修会」に参加しましたので、報告いたします。
主催は、「介護老人保健施設筑豊ブロック連絡協議会」です。ブロック以外の一般参加も多く、総勢18名で、外国人技能実習生の監理団体である「全国人財支援事業協同組合(全人材)」様のご協力のもと開催されました。
「外国人技能実習制度」とは、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的として、制度化されました。以前は研修制度でしたが、平成29年11月1日に施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成28年法律第89号)」に基づいて、新しい技能実習制度が実施されています。
職種は80職種、医療・介護関連業務としては、介護と医療・福祉給食製造の2種類あります。外国人技能実習制度で実績のある国は19か国です。
監理団体は全国に1260か所(うち介護関係は271か所)、福岡県にも52か所(うち介護関係は10か所)の監理団体があります。
日本国内での外国人労働者は約140万人を超えていて、技能実習生を受け入れる実習実施者も増加しています。開発途上国からの技術移転のニーズも多様化してきており、新たに介護職種での受け入れも可能になりました。
私は恥ずかしながら、こんなに多くの監理団体があることは知りませんでした。
しかし、介護の現場では少しずつ外国人の受け入れが行われており、どんなところから、どのような人がきているのか、どのような監理団体が斡旋しているのか、疑問がたくさんありましたので、とても興味深く参加いたしました。
この視察研修は、現場を知るとともに、受け入れに関して注意事項や受け入れに関するノウハウを学ぶ機会を得られる良い機会となりました。
今回は、全人材支援事業協同組合さまのご案内で、送出し機関である株式会社三晃さまの現地(フィリピン)でのグループ企業である日本語学校 プラストーンランゲージスクールでの教育現場を視察させていただきました。現地の看護師や介護士の資格を取り、現場で3か月のインターンの経験をしている方々が、日本語学校で日本語の勉強をされています。
送り出し機関に案内されてまず驚いたことは、日本の文化や接遇(礼儀)について、しっかりと教育されていることです。職員はもとより、すれ違う学生も立ち止まり「語先後礼」で背筋を伸ばし、会釈されます。入り口では、受付職員が全員立ち上がり、挨拶される・・・これは日本語学校で教室に入った時も同様でした。生徒が全員起立し、視察者がそろったところで挨拶され、とっても驚きました。お手洗いや廊下ですれ違う時など、「お先にどうぞ」と譲ることもしっかりと「躾」として教えておられます。接遇の基本をみて、改めて私自身できているのか?と反省するとともに、日本国内の教育施設でも、こんなにしっかりと「社会人としての礼儀」を教えられていないのではないかと思いました。
日本で働くためには、日本語の検定試験のようなものを受け、「N4」という資格が必要です。これは「ひらがな・カタカナ」を読み書きでき、簡単な日常会話ができるレベルです。ゆっくりと、文章の短いものだと会話はできます。自分の考えや希望を伝えることもできますが、長い文章の聞き取りは難しいでしょう。
視察させていただいたクラスでは、ひらがなの練習をするクラス、単語の返還(例えば、遊ぶ⇒遊びます、などの丁寧語)を学ぶクラス、文章を日本語に直す練習のクラスと一部屋の中で三つのクラスがあり、「N4」に合格した方が「アシスタントティーチャー」として、次の世代に教えながらスキルアップ(N3を目指す)を図っておられました。とても良い仕組みだと思いました。ただ教えられたことを覚えるだけではなく、学んだことを「教える」ことで自分のものにできるし、「働く」ということで報酬を得ることもできます。こうして、日本に行く日を心待ちにしているそうです。
「N3」に求められることは、日常会話と簡単な漢字の習得です。
同音異義語で苦労しているようでしたが、「難しいけれど漢字は面白い」と前向きに明るく、頑張って勉強されている様子が見て取れました。ヒヤリングは、YouTubeで勉強しているとのことです。
フィリピンでは、非常に人口が多く、貧困層も多いようです。戸籍がある国民は全人口の三分の一、1億人程度と言われています。子供が生まれても親が無戸籍の場合は、出生届が出せないとのこと。戸籍の届け出がしたくても、何代もさかのぼり証明しなければならないとのことで、無戸籍者が増えていくとのことです。このため十分な教育も受けられず、ただその日食べること・生活していくことに・・・とても大きな問題だと思います。
また、アシスタントティーチャーとの懇談会では、なぜ日本を選ぶのか、介護の仕事を選ぶのか、ということも聞いてみました。私がお話した方は8名、全員18歳~20歳までの若いお嬢さんでしたが、地方から一人で出てきている子も多かったです。両親が亡くなっている子も・・・
日本を選ぶ理由は、ほぼ全員が「治安の良さ」を挙げ、日本は安全な国というイメージが強いようでした。
介護の仕事に関しては、「お年寄りが大好き」「お年寄りの世話がしたい」という思いが強いようです。これはフィリピンの国民性があるのかもしれないと思いました。フィリピンでは親戚とのつながりが強く、助け合って暮らしているということを現地の駐在の方からお聞きしました。海外からはメイドさんとして人気が高いということです。
今回現地を視察させていただくことにより、フィリピンの厳しい現状も目の当たりにしてきました。暗渠になっている道路が陥没しても、そのまま放置されていたり(・・・もちろん落ち込まないようにバリケードはありますが・・・)、ホテルやショッピングモールの入口にゲートがあり、爆弾やピストルを持っていないか、身体検査(車も!)を受けたり、ショットガンを持っている警備員が立っていたり・・・空港並みのセキュリティがあり、コンビニに行くのも車で移動するなど、かなりの厳戒態勢で、少々緊張しました。
また、街中は車・バイク・自転車・人が入り乱れ、スキがあればどんどん人が渡っていく・・・運転技術が上達しているのか、車もバイクもルールがないのではないかというくらい縦横無尽で、渋滞も福岡の比ではなかったです。
現地の食事は町中の屋台で済ましているような様子も見て取れます。夜も朝も道路わきで食事をしている風景がありました。
このようなフィリピンの現状を目の当たりにして、日本に出稼ぎに行きたい」「治安がいいから」「早く日本に行きたい」という気持ちも分からないではないと思いましたが、同時に、受け入れに際しては、我々も体制を整え、例えば「住まい」「食事」「交通ルール」「シフト」など、仕事はもちろんですが、生活についても考えていかないといけないのではないかと思いました。
今回、このような視察の機会をいただき、うっすらぼんやりとしていた外国人技能実習生の受入れについて学ぶことができました。監理団体や送出し機関がどのような形で関わられ、フォローアップされていくのか、また、送出す国を実際に視察することにより、生活の現状をすこし感じることができました。それと同時に、受入れる側が、生活環境が違うことを認識して準備することが大事なのではないか・・・と思いました。
これから受入れる側として、一事業所で考えられることでもない・・・信頼できるしっかりとした監理団体や送出し機関と連携しつつ、しっかりと体制を整え生活をサポートしていくことがとても大事であることを感じた視察でした。
<参考資料>
〇外国人技能実習制度について(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/global_cooperation/index.html
〇全国人材支援事業協同組合 http://jinzai.coop/
総本部 :長野県佐久市中込308番地1
熊本支部 :熊本県熊本市東区保田窪5丁目8-12
※全国へ外国人材として技能実習制度を通し、社会貢献、海外貢献を行う
〇株式会社三晃HI http://sesiph.com
本社 :愛知県安城市三河安城本町1丁目30-1
※送り出し機関として、漁業以外すべての業種の実習生の日本語教育等を実施し、
実習生の支援を行う
介護事業に関しては、看護・介護大学をはじめ教育機関と提携している。
日本の受入れ事業所とのマッチングに合わせ、教育・アフターフォローを行う。
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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