【令和2年度診療報酬改定】療養病棟について

長 幸美

アドバイザリー

3月5日予定通りに告示が出ました。今回の重点項目は「働き方改革」です。
人的な配置要件の中の、「常勤専従」の要件が、常勤1名と「週3日22時間以上の非常勤2名で常勤換算1名としてよい」というような緩和策が出てきて、労務管理の重要性が増しているようにも思います。
さらに、診療録の「記録の要件」も変わってきていますね。何が必要で、何が省略できるのか、一つずつ見ていく必要がありそうです。

さて、今回は療養病棟について、確認していきましょう。

A101 療養病棟入院基本料
療養病床入院基本料の主な改定は、以下のスライドの通りです。
大きくは、療養病床自体の評価の見直しと、「看取り」について、基本料の要件に入ってきたということです。

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(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料より)

変更点① 療養病棟入院基本料2の注11に規定する経過措置が90/100⇒85/100へ変更
・看護配置30対1に対する経過措置は令和2年3月31日で終了とされた。
変更点② 中心静脈栄養の適切な管理の推進を療養病棟の要件とする。
・療養病棟入院基本料の要件として、「中心静脈栄養の適切な管理」を行うことが要件化され、次の三点について、要件に追加されています。

① 患者やその家族への説明(ほかの保険医療機関に紹介する際の情報提供を含む)すること
② 中心静脈栄養の適切な管理の推進として、「中心静脈カテーテルにかかる院内感染対策の指針」を作成すること及び中院静脈栄養カテーテルにかかる感染症の発生状況を把握すること
③ 毎月 中心静脈栄養が必要な状態化を確認すること

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(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料より)

中心静脈栄養が医療区分3を取るために安易に入れているのではないか、ということが議論の中に上がってきていました。感染のリスクも高まるため、そういった説明をすることや、本当に必要な場合に使用するようにとのメッセージです。

 

 

療養病棟関連の加算等について
その他、療養病床の運用実態について、見直しが行われ、算定できる加算が拡大されたり、働き方改革によりカンファレンスや研修の要件が緩和されたりしたものもあります。

変更点① データ提出加算がすべての病棟に拡大された
・200床未満の医療機関については、経過措置がありますが、いずれは取得が必要になっていますので、早いうちに取得されることをお勧めします。(診療情報管理加算の取得、まるめ部分の医事データ入力も必要となります。)
・また、急性期一般入院基本料以外の病棟では、90日に1回算定が可能となりました。

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(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料より)

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(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料より)

変更点③ 医師事務作業補助体制加算(50対1、75対1、100対1)取得が可能となった。
・実際には、書類の作成などを病棟・外来で支援されている病院様が増えてきていると思います。研修要件等がありますが、実際に文書作成支援等を実施されている 医療機関は、検討してみてもよいかもしれません。

変更点④ 病棟薬剤業務実施加算の評価の見直し
・評価が20点増点されています。
・常勤の薬剤師2名の配置・・・常勤1名と週3日以上、週22時間以上の薬剤師2名の組み合わせで、常勤薬剤師が勤務している時間をカバーできれば常勤1名と換算してよいとされました。

働き方改革により、基準の取得がしやすくなったのではないでしょうか。
常勤とカウントできる条件もありますが、労務管理(シフト管理)をすることにより、算定の可能性は出てきたのではないかと思います。

変更点⑤ 退院時共同指導料が「ビデオ通話」を活用することでも可能になった。
・これは、訪問看護療養費における退院時共同指導加算も同様です。

変更点⑥ 認知症ケア加算が3段階の評価に見直された。
・これまでの認知症ケア加算2⇒認知症ケア加算3へ
【認知症ケア加算2】
イ 14日以内の期間     100点
ロ 15日以上の期間     25点
<施設基準>
① 認知症患者の診療について十分な経験を有する専任の常勤医師又は認知症患者の看護に従事した経験を5年以上有する看護師であって、認知症看護にかかる適切な研修を修了した専任の常勤看護師の配置
(認知症ケア加算1における認知症ケアチームの要件と同様)
② 認知症患者のアセスメントや看護方法等にかかる適切な研修を受けた看護師を3名以上配置(看護師の研修にかかる要件は、認知症ケア加算3の要件と同様)
③ ①の医師・看護師による病棟職員に対する必要な助言等
④ ①の医師・看護師を中心に「身体的拘束の実施基準や鎮静を目的とした薬物の適正使用等の内容を盛り込んだ認知症ケアに関する手順書(マニュアル)」の作成と院内周知・活用
⑤ ①の医師・看護師を中心とした研修や事例検討会の実施・・・少なくとも年1回

※なお、認知症ケア加算1の施設基準の中の「医師・看護師」の要件で、経験年数、非常勤医師の所定労働時間が緩和になっています。
・経験年数は5年⇒3年へ
・非常勤医師の組み合わせは、「週3日以上24時間以上」⇒「週3日以上22時間以上」に変更されています。ご確認ください。

※認知症ケア加算3の「看護師の研修要件」が、3名のうち1名は「認知症看護にかかる院内研修の受講」をもって満たすものとして差し支えない、とされました。
時間数等には変更がないので、内容や時間数などを記録したものが必要になるのではないかと思います。

 

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(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料より)

変更点⑥ 排尿自立指導料の見直し(新設) 200点(週1回)
・現行の排尿自立指導料と同様・・・(現行の排尿自立指導料は外来患者向けに)
・算定期間の上限を12週間とする
・対象患者は、尿道カテーテル抜去後に下部尿路機能障害の症状を有する患者又は尿道カテーテル留置中の患者であって、抜去後に下部尿道機能障害が生ずると見込まれる患者

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(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料より)

【排尿自立支援加算】
① 排尿ケアチームの設置・・・それぞれに研修要件等あり、外来排尿自立指導料のチーム構成員と兼務可能
ア 経験を有する医師・・・対診による参画可能
イ 3年以上の経験を有する看護師(研修要件あり)(専任・常勤)
ウ 下部尿路機能障害を有する患者のリハビリ等の経験を有するPT・OT(専任・常勤)
② 患者抽出のためのスクリーニング及び下部尿路機能評価のための情報収集(排尿日誌、残尿測定)等の排尿ケアに関するマニュアルの作成、院内配布と研修の実施
⇒下部尿路機能の評価、治療及び排尿ケアに関するガイドライン等を遵守する

外来排尿自立支援指導料には、入院中に策定した計画に基づいていること、見直しを行っていることが、要件の中に入ってきています。また、診療録の記載も必要となります。

 

入退院支援加算の見直し
「治療する医療から支える医療へ」の考え方の転換が前回の改定で強く前面に出て、地域医療構想を後押しするという観点は、今回の改定でも続いています。
「ほぼ在宅、時々入院」というモデルを考えていくにあたっては、入院前からの状況を踏まえ、入退院支援を行うことが求められ、その実施のために必要な体制や実施していることが評価として組み換え、見直されています。

◆入院時支援加算の見直し・・・入院前の支援の状況に合わせて、評価が2段階になりました。

◆入退院支援加算_注8 総合機能評価加算(50点)
これはもともとあった「総合評価加算(入院中1回)」が見直された形になっています。
入退院支援については、高齢者の総合的な機能評価を行ったうえで、その結果を踏まえて支援を行うことが必要で、その場合の評価が行われたものです。
<対象者>
・入退院支援加算1または2を算定する患者
・65歳以上の患者
・介護保険法に規定する特定疾病を有する40歳以上65歳未満のもの
<施設基準>
・総合的な機能評価にかかる研修を受けた常勤の医師の配置
若しくは、総合的な機能評価の経験を1年以上有する常勤の医師の配置(歯科医師でも可能)

療養病棟にかかわりがあるところを抜粋しています。細かな基準や内容については、厚労省の資料を参考にされてください。
(佐々木総研のホームページから、告示、説明会資料のページに入っていくことができます)

<参考資料>
〇診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示)_別表第1(医科点数表)
第2部入院料等 (4p以降)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000603748.pdf

〇別添1_医科診療報酬点数表に関する事項 (29p以降)入院料等加算は、47p以降
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000603981.pdf

〇様式集
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000603917.pdf

 

〇令和2年度診療報酬改定説明会資料(厚労省のホームページ)
※この中にYouTubeでの説明もありますので、ぜひご活用ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352_00001.html

医業経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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