【令和2年度診療報酬改定】医療専門職の配置について
長 幸美
アドバイザリー今回の改定は「働き方改革」が重点項目に挙げられていましたが、今回はその中でも「医師をはじめとする医療従事者の配置について考えてみましょう。
医療従事者の勤務環境改善の取り組みが推奨されている昨今ではありますが、さらに改正の要件の見直しを行うことにより、強固に進めていきたいという意図を感じます。
医療従事者の常勤配置や専従要件について、次のスライドのように見直しがされています。
① 常勤換算の見直し・・・常勤配置要件の緩和
⇒病棟薬剤業務実施加算、入退院支援加算(入院時支援加算)
② 医師の配置について・・・カンファレンス等の参加もテレビ会議で対応可能なものも出てきています。検討が必要ですね。
⇒緩和ケア診療加算、栄養サポートチーム加算、等
③ 看護師の配置について
⇒外来化学療法加算、など
④ 専従要件について
⇒時間帯に患者がいない場合等おいて、別の業務も行えるように改正
(出典:令和2年度診療報酬改定説明資料(働き方改革の推進)より)
これらの改正により、常勤の職員確保が難しい場合でも、工夫次第では施設基準の届け出が可能になる場合が出てきます。それぞれに要件がありますので、これまで「常勤・専従」要件があり、要件が満たせないと思っていた医療機関ももう一度確認が必要です。
また、総合入院体制加算ついては、エの項目にある「医療従事者の負担の軽減及び処遇の改善に資する計画」の中に2項目追加され、その中で3項目以上の計画が必要となっています。その中に「特定行為研修修了者である看護師の複数名配置及び活用」により医師の負担を軽減することや、「院内助産又は助産師外来の開設」により医師の診療の負担を軽減することなど挙げられています。特定行為研修修了者が徐々に出てきていることも今回の改正の中で見えてきます。
また、この医療従事者の負担軽減にかかる委員会として、「多職種からなる役割分担推進のための委員会」を開催することとされていますが、この取り組みをさらに進めていくため、管理者によるマネジメントを推進する観点から、管理者が年1回以上参加することが求められています。スタッフ間で行えることは限りがあるので、管理者も含めて検討し、しっかりマネジメントしてください、ということでしょう。
タスクシェアリング/タスクシフティングのためのチーム医療等については、まず、医師事務作業補助業務に対する評価が50点程度増点となっています。これは非常に大きな増点だと思います。また、新たに、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟(医療管理料:療養病棟)、結核病棟、有床診療所、精神療養病棟についても、算定が可能になります。ほとんどの病棟において算定が可能となるのではないでしょうか?
特に精神科やリハビリテーションを行う病棟に関しては、書類やカンファレンス等も多く、先生方の煩雑な作業が緩和されれば、よりよい医療サービスの提供になるのではないでしょうか?
また、看護補助者の配置にかかる評価も大きく増点しています。急性期病棟で30点、療養型で10点の増点です。夜間の看護配置について見直されていることはプラスに作用すると思います。
冒頭で少しふれた「助産外来」のほかに、麻酔管理料の見直しが行われ、麻酔を担当する医師の一部の行為を適切な研修(特定行為研修)を終了した看護師でも算定することができるように、見直しが行われました。これはかなり大きな改正になるのではないかと思います。
麻酔管理料を算定されている医療機関はしっかりと確認することが必要です。
最後に医療機関における業務の効率化・合理化のお話です。ここでは、会議や研修会の効率化、記録の合理化などが行われました。
(出典:令和2年度診療報酬改定説明資料(働き方改革の推進)より)
この中で、ICTを活用したカンファレンス等の推進があります。原則では対面で実施することが求められ、「やむを得ない場合に限りICTを活用する」とされていました。
しかし、今回の改定で、原則対面で実施することには変わりがないのですが、必要な場合において、ICTを活用することが可能・・・と変更されています。
このことにより、カンファレンスや共同指導等、日常的に活用しやすいものに変化してくるのではないかと思います。対象となる項目は、地域の医療機関や介護事業所との連携などが主になっています。
最後に、外来栄養食事指導料のように、対面での栄養指導とテレビ電話等の組み合わせにより栄養指導を行った場合の点数が新設されました。
どの場合も同じですが、対面とテレビ電話等での指導を組み合わせ、計画を立てることとなっています。しかしながら、これまでは、足が遠のき継続した治療管理が行えなかったものが、月に1回、栄養指導を受けることにより、少しでも意識を継続させることができれば、重症化予防にも寄与するのではないかと期待できます。
現在、新型コロナウイルス感染症の拡大予防の観点から、不要不急の外出は控える傾向にありますが、このような場合でも、この機能を活用することにより、日常的な治療管理に寄与し、「住み慣れた地域で暮らし続ける」ということの実現に、一歩近づくきっかけになっているかもしれません。
我々の地域は、自医療機関で守る!という思いで頑張っておられる先生方も増えてきています。
ぜひ、ICTを活用して、安心して暮らせる地域、また、働きやすい職場を目指していきましょう!
<参考資料>
〇令和2年度診療報酬改定の概要(働き方改革の推進)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000603943.pdf
〇令和2年度診療報酬改定説明会資料等について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352_00001.html
※説明会動画(YouTube)もあります。ぜひご活用ください。
(佐々木総研のホームページからも入れます!)
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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