【令和2年度診療報酬改定】入院医療機能について
長 幸美
アドバイザリー皆さんの医療機関(病院)はどのポジションになりますか?
今回の改定の総論を見ていても、「自医療機関のポジションを・・・」という話が最初に出てきています。何よりも今回の改定は「医療機能や入院患者の状態に応じて適切な医療が提供されるように見直しをしている」という説明もありました。
入院医療機能についてみていきたいと思います。
入院機能としては、「急性期機能」として急性期一般入院基本料、「回復期機能」機能として回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、「慢性期機能」として療養病棟入院基本料があります。
それぞれの入院機能が十分に発揮できるように、大まかには、以下のような評価の見直しが行われました。
(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料「入院医療」より)
【急性期入院料】
◆「重症度、医療・看護必要度の見直し」
細かな内容については、それぞれに確認をしていただきたいと思いますが、「急性期医療提供の機能」を評価するものとして、
① A項目の「免疫抑制剤の管理」については注射薬剤のみ
② 手術・検査の内容と評価対象日数の見直し
③ 救急患者の評価を充実させる・・・救急搬送後の重症者の入院を評価する
という改定内容となっています。また、400床以上の医療機関については、評価法がⅡによるものと限定され、評価者の負担の軽減も行われています。
また、判定基準の中から、「「B14又はB15に該当、かつ、A得点1点以上かつB得点3点以上」の基準が削除されました。
施設基準の見直しについては、以下のように改定されています。また、経過措置もそれぞれに期間が設けられていますので、該当される医療機関はご留意ください。
(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料「入院医療」より)
◆「重症度、医療・看護必要度」の測定にかかる負担の軽減
それぞれの「評価方法」及び「院外研修」の見直しが行われています。
<評価方法の見直し>
① B項目について、これまでは患者の状態について、評価するものでしたが、下記の表のとおり、「10.移乗」「11.口腔清潔」「12.食事摂取」「13.衣服の着脱」については、「患者状態」に「介助の実施」をやったかどうか、で点数を掛け合わせ、評価することとされました。より実際の状況が評価されることになります。ADLに対する評価がより明確になってくると思います。
さらに、これには、「根拠となる記録は不要」とされています。
② A・C項目の評価方法の見直し
専門的な治療・処置のうち薬剤を使用するもの及びC項目についてはレセプト電算処理システム用のコードを用いた評価とすることとされました。
③ 必要度Ⅱの要件化
許可病床数400床以上の医療機関においては、「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」を用いることを要件化することとされましたが、半年間の経過措置がついています。
また、評価者の院内研修の指導者については、院外研修に関する記載が削除されています。特定集中治療室、ハイケアユニット用の評価表についても同様に見直しされています。
【回復期リハビリテーション病棟入院料】
回復期リハビリテーション病棟入院料にかかわる見直しは、実績要件の見直し、人員配置の見直し、日常生活動作の評価に関する取扱い、入院患者にかかる要件の見直しがあります。
(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料「入院医療」より)
前回の改定から、管理栄養士の関与が話題となっていましたが、今回の改定で、「入院料Ⅰ」については管理栄養士の配置が要件とされ、栄養管理項目の記載も要件化されています。また、実績要件の部分でも、実績指数が「入院料Ⅰ、Ⅲ」に関して引き上げられていますが、入院患者にかかる要件の中から、発症からの期間にかかる事項が削除されています。
より効果的なリハビリテーションの提供が行えるように、栄養管理評価の実施、ADL評価をFIM評価に置き換えることができるように見直すなどがされています。
【地域包括ケア病棟入院料】
地域包括ケアについては、本来の病棟の役割が十分に発揮できるように実績要件等の見直しを行われました。
本来の役割とは、
① 急性期治療後の患者の受入れ・・・ポストアキュート
② 在宅で療養を行っている患者等の受入れ・・・サブアキュート
③ 在宅復帰支援
の3つが考えられています。しかしながら、急性期の病院からの受け入れを中心に運用をしている病院があるというところで、「在宅療養の患者の受入れ」や「在宅復帰支援」にかかるものをより評価する形に見直されています。
また、400床以上の医療機関については、新規で届出られないこと、同一保険医療機関内の一般病床から転棟した患者の割合が一定以上である場合、基本料を見直すことなども挙げられています。
さらに、DPC対象病棟から地域包括ケア病棟に転棟した場合、転棟後も入院日Ⅱまでの間は診断軍分類点数表に従って算定するように、見直されています。ただし、同一病棟内で転室する場合は、現行の算定方法を変更しない(期間ⅢまでDPCでの算定とする)とされましたので、ご注意ください。
また、入退院支援及び地域連携業務を担う部門の設置の要件化、疾患別リハビリテーションの提供については患者の入棟時に測定したADLスコアの結果等を参考にリハビリテーションの必要性を判断することを要件とされています。「適切な意思決定支援に関する指針」を定めていることも要件となっています。
(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料「入院医療」より)
【療養病棟入院基本料】
療養病棟では、人員配置にかかる経過措置が予定通り令和2年3月31日限りで終了することとなりました。このため、25対1が満たせず、注12の経過措置(2)の減算を受けていた病棟は、経過措置がなくなります。
また、注11にかかる経過措置については、2年間延長されることが決まりましたが、減算が85/100とされました。
(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料「入院医療」より)
さらに、看取りの指針についても「適切な意思決定支援に関する指針」という形になり、要件化されています。前回の改定でもありましたので、作成されているとは思いますが、再度確認をして下さい。
また、このほかに「中心静脈栄養の適切な管理の推進」として、長期の栄養管理を目的としてIVHを挿入するにあたっては患者やその家屋への説明やほかの医療機関と連携をする旨を説明することが求められ、院内感染対策のための指針の中に盛り込むことが必要となりました。褥瘡対策と同様に感染症の発生状況を把握することも必要となりました。
さらに、月末には毎月、「中心静脈栄養を必要とする状態」に該当しているかどうかを確認することを求められています。
【その他の改定】
◆認知症ケア加算2の新設
これまでの認知症ケア加算1の認知症ケアチームの要件うち、専任の常勤医師又は専任の常勤看護師いずれかの配置と、すべての病棟に9時間以上の堅守を受けた職員を配置するという要件により、新たに作られています。
主な要件等は下記のスライドの通りです。比較的取りやすいのではないかと思います。
(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料「入院医療」より)
◆せん妄ハイリスク患者ケア加算の創設
これは、一般病床において、入院早期にせん妄のリスク因子をスクリーニングして薬物療法以外の方法でせん妄対策を行うことについて新たに評価されたものです。
対象病棟は、急性期一般入院料、特定集中治療室管理料、特定機能病院入院基本料(一般病棟) 、ハイケアユニット入院医療管理料、救命救急入院料、脳卒中ケアユニット入院医療管理料です。
(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料「入院医療」より)
様式集の中にもチェックリストがありますので、検討されてください。
◆食事療養費について
食事療養費については、帳票の見直しが行われています。電子カルテやオーダリングシステムにより、「電子的に必要な情報が変更履歴等を含めて作成し、保管等されている場合、髪での保管は不要」と変更されています。
栄養関係は、帳簿類がとても多かったと思いますが、少し作業も整理できるのではないでしょうか。内容は以下のスライドに記載されていますので、ぜひご確認ください。
(出典:令和2年度診療報酬改定説明会資料「入院医療」より)
また、適時適温にかかるルールの見直しも行われています。
① 適時の食事提供について
医療機関の構造上は以前に時間を有する場合には、午後6時を中心にばらつきを生じることはやむを得ない、とされましたが、最初の病棟において、提供される時間は午後5時30分より後である必要がある。と明記されました。
② 適温の食事提供について
保温食器又は保温配膳車等による食事提供体制が整っていることが必要であることが明記され、「保温食器又は保温配膳車等による提供体制を整えず、電子レンジ等で一度冷えた食事を温めて提供する場合は含まない」と明記されました。
この場合においても、検査等ですぐに食事ができず、食事前にレンジで温めることは差し支えないとされています。
今回の改定の中で、入院料に関し、一般の医療機関で多く該当しそうなところ、特に気になったところをまとめました。参考資料等を添付しておりますので、併せてご確認ください。
さらに、告示の中には、通知文も出されています。疑義解釈において、細かな研修内容や実地状況の具体例等は出されてくることと思いますが、告示、通知文もぜひ該当するところはご覧いただきますようにお願い申し上げます。
<参考資料>
〇令和2年度診療報酬改定説明会資料「入院医療」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352_00001.html
※説明会のYouTubeもご覧ください!!
〇令和2年度診療報酬改定「告示」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00027.html
〇告示
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00027.html
※佐々木総研では、令和2年度診療報酬改定の特設ページを設けて、診療報酬改定にかかる検討会資料等を検索しやすくしています。こちらもぜひ合わせてご活用ください。
https://www.sasakigp.co.jp/ssk/topics/10013069
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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