【令和2年度診療報酬改定】機能強化加算と地域連携について

長 幸美

アドバイザリー

令和2年度診療報酬改定の告示が出て半月たっていますが、告示や厚労省の説明会資料・動画をご覧になっていますでしょうか? 点数の変更というよりも、「どのような患者さんに」「どんな医療提供を行っているか」というところなど、評価の仕組みが変化しているように思います。
今回の改定は、「働き方改革」が最重点項目となっているお話は以前もいたしましたが、「働く時間を短縮」しつつ「医療の質を高める」「地域の生活を守る・支える」という一見矛盾しているように見えることを同時に考えていかなければなりません。

その中でも、「外来機能の機能分化」で重要になってくる「かかりつけ医機能の評価」について、お話していきたいと思います。

【かかりつけ医とは】
厚労省は、「かかりつけ医」を「なんでも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義づけています。
文章で読んでも何をしたらいいの?という声が聞こえてきそうですね。

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(出典:令和2年診療報酬改定の概要「外来医療・かかりつけ機能」)

具体的には、次にお話をする機能強化加算の施設基準に掲載されています。

【機能強化加算】
これは「かかりつけ医機能」の普及を目的に、地域において、かかりつけ医機能をになう医療機関の初診料に加算(80点)できるものです。
この施設基準の中に、以下の4点を実施していることを「院内掲示」し、患者が持ち帰ることができるように「書面」を準備することがもとめられています。

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(出典:令和2年診療報酬改定の概要「外来医療・かかりつけ機能」)

① 健康診断の受診勧奨及び結果等について健康管理の相談
「予防活動」「健康相談」を推奨する内容です。
地域の中でできるだけ長く暮らし続けることを推進するために、「地域住民との信頼関係」を築き、「健康相談、健診・がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保険等」を「医療」の立場から支援してほしい、とされています。
具体的には、各地で行われている「健康イベント」や「まちの保健室」のような、垣根を低くした「相談しやすい環境づくり」を求められていると思います。

② 介護・保健・福祉サービスの相談/主治医として介護の意見書の作成
介護や認知症など、生活弱者といわれる方たちが「地域で生活し続ける」ためには、介護保険や児童福祉・障害者福祉等の制度を利用したサービスを受けることで、地域生活を継続することができてきます。
そういった「生活環境」や「費用」面も含めて、地域の生活者(住人)が「困ったなあ」といった時に、「介護保険という制度がある」ことを説明し、ケアマネジャーにつなぐことや制度を利用するために必要な意見書を作成すること等です。
このような相談に乗るためには、「地域の中にどのような相談ができる場所があるか」ということを知る必要があります。ほとんどが、行政「市町村役場」から情報を得ることができますが、どこに尋ねたらいいか、受付や連携室は知っておく必要があります。リストアップしておくといいですね。

③ 必要に応じて「専門医・医療機関」を紹介
先生方も得意、不得意があります。オールマイティな先生もいらっしゃいますが、希少性が高い疾患については、また、病院・診療所の医療機能から、高度医療が必要だな、という場合も多々あると思います。そういった場合でも「専門医や医療機関と連携が取れますから、安心してくださいね」ということを最大限にアピールできる、ということです。
地域の入院できる医療機関だけではなく、先生方の先輩や大学の医局、遠方の専門医など、「このクリニックの先生に相談すると、大きな病院の先生ともつながっている!」ということが、安心につながると思います。

④ 夜間・休日の相談対応
お子様やお年寄りなど、どうしても夜間や休日など、医療機関が空いていないとき、具合が悪くなると、心配になります。自分のことではないからなおのことだと思います。そのような場合に、どこに連絡をしたらいいのか、明確になっていることは、安心につながります。
今回の改定では相談対応し、急性期病院などに連絡を入れて情報提供した場合にも情報提供料がいただけることとなりました。
夜間相談を受けたときに、どのように対応されていますか?

さて、少しイメージがわいてきたでしょうか?
先生方、医療機関にお勤めの方、考えてみてください。先生方や看護師さん、窓口でのご相談は、どのようなことがありますか?ほとんど、今お話をしてきた4項目に当てはまってくるのではないでしょうか?
日常的に意識せずに行われていることではないかと思います。

この中では、連携先を明確に表示することによって、病院も診療所もPR効果は高いと思います。自宅に持ち帰ってもらえることで、広報の効果もあると思います。
地域の診療所の先生方、200床未満の病院はこの「かかりつけ医」の機能を持ち、地域住民との最前線にいるということを意識して、検討してみられてください。

<参考資料>
〇令和2年度診療報酬改定の概要(外来医療・かかりつけ機能)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000605491.pdf

※厚労省の説明会動画もあります。

医業経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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