【令和2年度診療報酬改定】オンライン診療の導入を考える~COVID-19対応との整理~
長 幸美
アドバイザリーCOVID-19の拡大防止による外出自粛等により、オンライン診療を考えておられる先生方からの質問が増えています。ここで、オンライン診療の導入を考えていくうえで算定方法や必要なシステムについて整理していきましょう。
詳細なルールについては、2020年3月26日のコラムdeスタディ「オンライン診療とICT」にまとめているもの、及び厚労省の診療報酬改定の「告示」「通知」等をご覧いただきたいと思います。
【オンライン診療の原則とCOVID-19の特例対応の違い】
オンライン診療については、あくまでも、①初診から3月経過後、②対象患者は慢性疾患の定期受診患者、③連続して算定できるものは、2か月まで、という縛りがあります。また、ガイドラインに則ったシステムによる運用が求められています。これらをクリアしていることを、地方厚生局に施設基準を届け出て、初めて「オンライン診療」「オンライン医学管理料等」の算定ができるものとなっています。
(出典:厚労省「新型コロナウイルス感染症にかかる資料報酬上の臨時的な取り扱いについて(その14)」より)
一方、COVID-19の拡大防止策として、「時限的・特例的」な取り扱いが発出され、上記の図のように、電話等を用いた初診、再診、医学管理料についても特例が認められ、算定が可能になっています。こちらは時限的な取り扱いですので、「いつかは中止になる」ということを前提に、通知等に留意していく必要があります。
ここで注目してほしいのは、「要件を満たせば算定できる医学管理料 147点」が算定できることです。図表中の※5の要件、つまり「以前より、オンライン医学管理料等」にある項目を算定している患者については、当該医学管理料として電話対応でも算定ができる点数があるということです。
【訪問診療と在宅時医学総合管理料(施設総管含む)】
COVID-19感染防止を理由に、施設や患者の家族から、「訪問診療に来ないでほしい」というご要望があり、訪問できず、電話対応のみになっているケースもあるとお聴きしました。これらの対応についても、「時限的・特例的対応」があります。
平時であれば、訪問診療に行かずに「電話対応」した場合は電話再診になりますが、
3月に月2回訪問診療+在宅時医学総合管理料を算定している場合、計画が月2回の訪問診療とされている場合、4月の請求、5月の請求が変わってきます。よくご留意いただければと思います。
なお、補足ですが、訪問診療時にCOVID-19対応のための感染予防策を講じて訪問した場合も、臨時的に「院内トリアージ実施料(300点/回)」が算定できます。該当される医療機関はご確認ください。
【オンライン診療のシステムについて】
最後にオンライン診療のシステムについてです。現在様々なシステム会社がCOVID-19対応できるようにと「無償」または「割引」にてシステム提供してくださっているようです。本格的にオンライン診療を考えておられる先生方は、この機会に検討して見られるのもいいかもしれません。
この検討される場合に、留意していただきたいことが、「ガイドラインに則っているかどうか」ということはご理解いただいていると思いますが、「数あるシステムから何を選んだらいいかわからない」「本当にメリットがあるのだろうか」という声をいただくことがふえてきました。その中で多い質問を紹介します。
Question1:
通常の診療と同じように、電子カルテの画像や検査結果を見せながら説明できますか?
電子カルテとつないで使いたいのですが・・・
Answer1:
電子カルテとの連携は、できていないシステムが多いのが現状です。一部、IDの連携ができますので、電子カルテ・医事システムのベンダーに相談されてみてください。
予約システムを後付けで入れておられる医療機関の場合イメージしやすいと思いますが、電子カルテ・医事システムとの情報のやり取りができないものが多いと思います。それと同じ状況であると考えていただければよいと思います。
Question2:
オンライン診療を導入するにあたって、何を準備したらいいでしょうか? 初期投資はどのくらい必要で、ランニングコストはどのくらい必要ですか?
Answer2:
それぞれのオンライン診療システムにより違いますので、確認いただきたいのですが、
いくつか確認いただきたいことがあります。
① 現在の電カルのパソコンにのせることが可能か?
② デスクトップパソコンが必要か、ノートパソコンか、モバイルでも可能か?
③ OSが何か?
④ 写真の撮影や文書、患者のモニタリング情報の共有できる仕組みがあるか?(双方向に)
⑤ 月額基本料金が必要か、患者1人当たりの費用や患者への負担があるか?
⑥ 機能強化のためのカスタマイズが可能か? 可能であればその費用は?
⑦ 診療費用の決済方法・・・クレジット対応のみか、来院時精算、代引き等の他の方法があるか?
⑧ 先生方の取り入れたい、こだわりがある診療スタイルがあればそれが可能か?
⑨ 登録やシステムトラブル等のサポート体制はどうなっているか?
こういったことを整理したうえで、ベンダーと話をされると、良いのではないかと思います。デモ機を使ってみることができる場合もありますので、相談してみられてください。
Question3:
オンライン診療の場合、診療記録として録画しておき、記録に変えることができますか?
Answer3:
現時点ではできません。診療録に通常の診療と同様に記録する必要があります。
Question4:
COVID-19の臨時的な対応についても、施設基準の届け出が必要か?
Answer4:
オンライン診療・オンライン医学管理料等の点数を算定するためには必要です。ただし、この場合、オンライン診療の占める割合は、1割以下でなくてもよいとされています。また、届出のタイミングは、その月の初開庁日に届け出を行えば届出付きから算定は可能です。それ以外は届け出の翌月からの算定となりますので、ご注意ください。
【最後に】
オンライン診療については、上記点数を見ても、対面診療より低く設定がされています。これは十分な情報の収集ができないためと説明されています。
「だったらオンライン診療はしないほうがいい」と判断される先生もあるとお聞きします。しかしながら、会社勤務されている方で生活習慣病等により継続的な加療が必要な方でも、体調が良ければついつい病院に行かなくなるという経験があるのではないでしょうか?そのような方々の「継続加療を支援する」「治療中断をしない」という取り組みの一環と考えると、医療機関の患者層によっては考えてもよいのではないかな、と思っています。先生方のご考慮の一助になれば幸いです。
<参考資料>
〇オンライン診療の適切な実施に関する指針
https://www.mhlw.go.jp/content/000534254.pdf
〇新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて
https://www.mhlw.go.jp/content/000625141.pdf
〇厚労省:中医協審議会資料_20200424
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000624500.pdf
※これまでの通知を整理された資料です。通知を読み解く中で、参考になると思います。
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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