【医療介護あれこれ】病院のテレワークを考える

長 幸美

アドバイザリー

COVID-19感染拡大防止の観点から、ステイホームが推奨され、これまで「家で仕事をするなんて、この業界ではできない!」「人と会って初めて仕事になるのだ!!」と言っていた業界も、「不要不急の外出自粛」や「出勤停止」、「人と会わない」「三密を避ける」ことが必須となりました。それでもなんとか仕事を継続するという観点から、一気に「働き方」を見直し、「仕事の質をどう担保するか」ということを考えるようになりました。
対面で行わないといけない、と思っていた接客業や営業職までもが、ステイホームのために「人と会えない」中で業務をいかに行っていくか、考えさせられた2か月だったのではないでしょうか?

医療業界・介護業界とて同じです。今年4月に診療報酬改定が行われましたが、厚労省の説明会を始め、様々なセミナーがすべてキャンセルとなり、厚労省は説明会資料と動画をYouTubeで配信するなどWebを活用した情報提供を開始されています。意識的に医療機関が「情報を得る」ために行動しなければ、世の中の動きについていけなくなる状況に追い込まれました。医療業界の場合は、それにプラス「感染を持ち込まない」「感染を拡げない」ということが重要になり、これまでにない神経の使い方となっています。最近では病院のテレワークを考える勉強会もオンラインで開かれ、意見交換されています。
病院の中のテレワークでどのようなことができるのか、考えてみたいと思います。

【保険点数がついたテレワーク】
まず一番に思いつくことは、病院の業務の中で、メインとなる「診療」について、一部オンラインでの対応ができるように、診療報酬上も改定されてきました。
オンライン診療料(71点)と情報通信機器を用いた場合の特定疾患療養管理料(100点)です。これは、このコラムの中でも何度か取り上げてきましたので、すぐに思い浮かぶのではないかと思います。

これ以外でも、保険診療の評価が増えてきました。
① 心臓ペースメーカー指導管理料「注5」遠隔モニタリング加算
② 在宅酸素療法指導管理料「注2」遠隔モニタリング加算
③ 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料「注2」遠隔モニタリング加算
これらは、対面による指導管理を受けているうち、①は年1回、②③は3月に1回の対面診療があればよく、連続して位置は11か月、②③は2か月限度とした加算を次の対面診療のときに算定できるものです。

このほか、今回の改定で、次の3点についてもオンラインが認められました。
④ 外来栄養食事指導料・・・管理栄養士が電話等で指導した場合1月1回算定
⑤ ニコチン依存症管理料・・・2回目から4回目までのオンライン指導可能、
診察料等は併算定不可
⑥ 遠隔連携診療料・・・難病・てんかんの専門医療機関の医師と、
診断までの間に3月に1回算定可能
それぞれについては、弊社のコラムの中でも解説しておりますので、今回は割愛いたします。また、告示・通知をあわせてご確認ください。
すべてに共通して言えるのは、「治療の継続」「治療中断の抑制」にあると思います。

【初診のトリアージ】
集患の目的から、無料相談を受けている医療機関がポツポツ出始めています。
今回のCOVID-19感染防止対策でも注目されていますが、写真や動画で、皮膚状態や呼吸状態等を判断し、救急病院を受診するか、手持ちの薬剤等で様子を見るか、訪問看護で対応するか、アドバイスをされているようです。

【相談業務・連携業務】
電話の転送機能を使い、在宅テレワークによる対応を始められた医療機関があります。
また、携帯電話・モバイル等により、診療や相談の予約を受け、対応されている医療機関もあります。

【医師事務作業補助業務・診療情報管理部門】
クラウドで電子カルテに対し外部アクセスできる仕組みを構築している医療機関で、一部始まっています。診療情報管理部門は、統計や分析等を実施されているところもあるようです。

【事務系職員】
その他、経理、総務・庶務についても、以下の内容でテレワークの導入をされているようです。
・業者など、外部との連絡はWeb会議を活用する、
・院内・院外ともに委員会やカンファレンス等はWeb会議を活用する、
・企画立案
・労務管理等の届出や稟議の決済など

ここまで、テレワークができそうなこと、医療機関で取り組まれていることなどを実際にお聞きして書き出してみました。実際には、医療機関は「三密」が好きだと思います。そうはいってもね・・・という反論もたくさんあると思います。
医療情報は「特定個人情報」に該当するので、特に電子カルテの取扱いについては厳しく規制されていることもあり、テレワークが実施しにくいことも多いと思います。
COVID-19対策で進んできたかもしれませんが、今後20年先を見据えると、「働き方改革」の一環として、考える良いきっかけになったのではないかと思います。

すべてができるわけではありません。同時に在宅勤務だけがテレワークではありません。
これらを行うためには、通信環境、システムの構築、パソコン等の貸出、データやサーバーへのアクセス権、実施する人のモラルの問題、など。沢山の課題があると思います。
半面医療機関の業務の中では、ヒトを介して行う業務も多いのは事実です。他業種とは違い、医療機関の運営維持を行うために必要な職員は病院内に確保しないといけないのも事実です。
しかし、これを機会に、「病院に、事務所に、いないから仕事ができない」「会議室でないとできない」ではなく、院内外含めて「業務の目的・プロセス」を見直し、整理して、より効率的で効果的なことや、医療提供に重要なことは何か、を見直し、柔軟な対応をしてみることも必要ではないかな、と感じています。何らかの参考になれば幸いです。

医業経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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