【医療介護あれこれ】医療保険の訪問看護と介護保険の訪問看護(QAより)
長 幸美
アドバイザリー「訪問看護の算定方法がよくわからない」「医療保険と介護保険の訪問看護はどう違うのですか?」という質問を時々いただきます。高齢者が地域で長く住み続けるためには、訪問看護の役割は大きく、その需要は高まってきていると思います。
ここで、訪問看護の基本的内容を整理しておきましょう!
【訪問看護の対象者】
訪問看護に関してはとてもシンプルで、在宅で療養をしていくうえで、「訪問看護が必要だ」と、医師が判断すれば、対象となります。
例えば、「インスリン注射導入後の在宅での手技指導」「術後や褥瘡等の長期的な処置」「カテーテルが留置されている方の状態悪化」などがあります。
【訪問看護の報酬について】
訪問看護は、医療保険に請求するものと介護保険に請求するものがあります。高齢者の場合は、基本的に、「介護保険」が優先されます。
しかしながら、末期がんや急性増悪の患者さんへの訪問看護については、「医療保険」で請求することができる場合があります。
■医療保険で請求できる条件
①介護保険の認定を持っていない方
②「別表第7」で規定する方
③特別訪問看護指示書を発行された方(原則月1回14日間)
つまり、末期の悪性腫瘍や進行性の難病(進行性筋ジストロフィー、多発性硬化症、パーキンソン病(ヤールの分類ステージ3以上で生活機能障害度分類がⅡ度、Ⅲ度以上)、人工呼吸器を使用している患者などの場合は、医療保険での訪問看護が受けられますので、介護保険の限度額は生活支援に有効に使うことができてきます。
また、突発的に状態が悪化した場合や、退院直後なども、医療保険で訪問看護が利用できます。
【算定の制限】
介護保険で行う訪問看護の場合、1週間のうちの回数の制限は設けられていませんが、医療保険での訪問看護の場合は、原則週3回までとなります。しかしながら、患者さんの状態に応じて、週4回以上の訪問の必要があると判断された場合は、週4回以上の訪問看護が算定できます。これが「特別訪問看護指示」です。
特別訪問看護指示が単独で発生することはなく、介護保険の訪問看護がベースになってきます。
ざっくりというと、生活の中で支えていくのが「介護保険での訪問看護」。
これは、高齢化に伴う心身の変化に伴い看護師がサポートするものと位置づけられるかもしれません。これに対し、医療的な要素が強いものが、「医療保険での訪問看護」ともいえるのかもしれません。このため医学的要素が強い、専門的な分野については「医療保険」を使用することができ、介護保険での「生活支援」に使える枠は確保できると整理できるのではないでしょうか。保険の仕組みをよく理解し、しっかりと在宅での生活を支えていけるようにしましょう。
<参考資料>
〇令和2年度診療報酬改定の概要(在宅医療、訪問看護)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000608534.pdf
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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