【医療介護あれこれ】医療事務基礎講座「現物給付と現金給付」

長 幸美

アドバイザリー

医療保険制度の中には、「現物給付」といわれるものと「現金給付」といわれるものがあります。
あまり聞きなれない言葉だと思いますが、今回はこの二つを整理しましょう。

現物給付と現金給付

【現物給付】
保険証を医療機関に提示し、診療や検査、投薬、入院などの医療行為を直接患者に提供することをいいます。
患者は、医療機関に受診する場合、その費用(かかった医療費)の原則2~3割を自己負担として窓口で支払います。残りの7~8割については、保険者が医療機関に支払いますが、加入者に「医療サービス」という「現物」を給付することになるので、「現物給付」という呼び方をします。

主な「現物給付」の内容は以下の通りです。
① 療養の給付
② 入院時食事療養費
③ 入院時生活療養費
④ 保険外療養費
⑤ 訪問看護療養費
⑥ 高額療養費
⑦ 高額介護合算療養費

【現金給付】
「現物給付」に対して、出産育児一時金や見舞金、埋葬料等、お金で支給されるものを「現金給付」といいます。

主な「現金給付」の内容は以下の通りです。
① 傷病手当金
② 出産手当金
③ 出産育児一時金
④ 埋葬料
⑤ 療養費
⑥ 移送料

現金給付の場合は、手続き上、「医師の診断書」が必要になります。
この医師の診断書については、「保険診療ができるもの」と「診断書料」を実費で必要なものがあります。
保険診療ができるものの代表は「①傷病手当金の診断書」です。
一方②③については「出産証明書」や「が必要ですし、④埋葬料については「死亡診断書」を添えて出すことが必要でしょう。これらは各医療機関により設定された金額があります。
また、⑤療養費については保険証を持たずに医療機関等にかかった際に窓口で全額支払いいただいた場合に、後日、申請に基づき保険給付として認めた費用額から一部負担金の金額を除いた金額を給付することをいいます。

また、⑥の移送費については、病気やけがで移動が困難な患者が、医師の指示で一時的・緊急的必要があり、移送された場合は「移送費」が現金給付として支給されますが、支給要件があります。この移送費の支給要件としては以下のいずれにも該当すると保険者が認めた場合です。
・移送の目的である療養が保険診療として適切であること
・患者が療養の原因である病気やけがにより移動が困難であること
・緊急・その他、やむを得ないこと
支給額は、最も経済的な通常の経路及び方法により移送された場合の旅費に基づいて算定した額の範囲です。あまり医療機関の窓口では経験しない内容かもしれませんが、このようなものがあること、保険者に確認すればよいということは覚えておきましょう。

医療経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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