【令和3年度介護報酬改定】概要③「自立支援・重度化防止の取り組み推進」

長 幸美

アドバイザリー

介護保険法第一条には、この法律の目的として、「この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。」と記載があります。

今回の改定では、この「自立した日常生活を営むことを支援する」というフレーズがそこかしこにちりばめられています。
改定のポイント3項目目は、この制度の目的に沿って、質の評価やデータ活用を用いながら科学的に効果が裏付けられた質の高いサービスの提供を推進するために、報酬上での評価が盛り込まれています。
この中には主に3つに分類されています。その要点を考えていきます。

【リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取り組みの連携・強化】
地域の中で生活し続ける為に必要なこととして、一番重きを置いていることは、「口腔機能」及び「栄養管理・・・マネジメント」になります。
地域の中で自立した生活をし続ける為には、「食事」「排泄」「入浴」ということはとても大きなウエイトを占めます。在宅で生活をしていくうえで、やはり栄養状態をよくすることは重要で、意欲や排せつ・更衣などの基本動作だけではなく、認知症の予防・重度化防止への影響も大きいものがあります。昨年から問題になっている感染症等についてもこの栄養状況というのは大きく影響しています。このため、できるだけ口腔機能を維持し、必要な栄養を口から食べることにより摂取していくことはとても大切なことになります。

この中で意識していただきたいことは、「マネジメント」が必要だということです。
効果を上げていくためには、アセスメント・スクリーニングをしっかりと実施し、どのような支援が必要か計画を立て、実施した後は効果判定をしていくことが必要だということです。
このためのシステムが、つぎに出てくるLIFEという仕組みになります。

また、冒頭お話した通り、「自立した生活を送るための支援」ということになりますので、それぞれの生活機能や社会性、生活を楽しむという観点も必要になってくることは言うまでもありません。

特に栄養管理については、歯科医師・歯科衛生士をはじめ管理栄養士など、自事業所にはいない職種のスクリーニングや助言を受ける必要が出てきます。
いわゆる「多職種連携」です。病院は敷居が高いなどといっている場合ではありません。

【介護サービスの質の評価と科学的介護の取り組みの推進】
科学的介護の取り組みとして、是非皆様に取り組んでいただきたいことが「LIFE」の活用です。介護版のデータ提出とも言われていますが、医療のデータ提出との大きな違いは、フィードバックを受け、介護サービスの提供をPDCAサイクルで回してサービスの向上を目指していくというところです。

厚労省は「LIFE元年」という表現を使用しています。すぐには完全な形で運用していくことは難しいでしょうが、そこは3年間の経過措置がついていますので、次回の改定に向けて、できるところからコツコツと取り組み、加算の算定をしていくことが求められています。
次回の改定ではLIFEを実施しないところには減算等の厳しい措置が予測されています。すぐにでも取り組んで行く必要があります。

【寝たきり防止等重度化防止の取り組みの推進】
ADL維持等加算について、自立支援・重度化防止に向けて取り組みを強化する観点から、現在の内容を見直し、効果的な対応を求められています。
ここにもLIFEの取り組みが必要になってきます。

具体的には、他に褥瘡マネジメントや排せつ支援加算の見直しが含まれてきます。
褥瘡や排せつが自立しない状況が進めば在宅での生活も不安や負担感が増加し入院や入所等に移行してしまうことも考えられます。

具体的には、それぞれの介護サービスごとに加算という形で評価が見直されたり新たについたりしていますので、事業所毎に見直しをしていただきたいと思います。
ここでは、どのような狙いが込められた改定であるかということを理解していきましょう。

医療機関の皆さんも、「介護は関係ない」といえない状況になってきています。
何故なら、医療機関の薬剤師、管理栄養士、PT・OT・ST、歯科衛生士、等にとっても、影響が大きいもので、医療サイドからの支援がとても重要になっているからです。それぞれのサービス事業所では人員を抱えきれないところもたくさんあると思います。
そのような事業を考慮して、是非「医療と介護の連携」には協力していただければと思います。

医業経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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