【医療介護あれこれ】接遇レッスン「あなたのこと知りたい!」

長 幸美

アドバイザリー

皆さん、医療現場で、「傾聴」という言葉を、よくお聴きになるのではないでしょうか?
電話や話が長いといわれる方、話をしていて「何の話をしているんだったっけ?」となる方、今日は少し一緒に考えてみませんか?

この「傾聴」、皆さんはどのようにお感じになり、どのようにされていますか?
・・・ただひたすら聞き続ける。
・・・とにかく、受け止めないと!
・・・え?と思っても、「そうね」と相槌をうって、とにかく聞く・・・
本当にそれでいいのでしょうか?
ひたすら聞き続けるのは、しんどくないですか?

何か相談事をしたときに、「人の話を聴いてくれてないな」と思うときと、「話をしてよかったと思うとき」少し違いますよね、ということを、以前のコラムの中で、申し上げましたね。正対するということが大事なのですが、ほとんどの場合、話の目的があると思います。
その目的に沿った聞き方をしないと、お互いに満足にはつながっていきません。
もちろんこの「目的」の中には、「考えていることを吐き出す」というものも含まれるかもしれませんが、多くの場合、それだけではありませんよね。

【傾聴に大事な共感力】
話し手は「あなたにはわかってほしい」と思っているからこそ、傾聴には聞き方が大事になってくると思います。けれど、見かけだけ聞いていても、何となくすっきりしない、わかってくれていないな、という感情が残るのではないかと思います。
ハーバードビジネススクールの「共感力」という本の中に、興味深いことが書かれています。
① よい傾聴は相手が話をしている間、黙って聞くことではない
② よい傾聴は相手の肯定感を得られる
③ よい傾聴は共感がある
④ よい傾聴は提案を投げかける

これら、簡単に言うと
① は、相手を知るために追加の情報が欲しい場合など、双方向のやり取りが大事である
つまりコミュニケーション能力が求められてくるということです。
② は、肯定感とは、やり取りの中で生まれる「信頼されている」という安心感がある
つまりは相手に対するリスペクトの気持ちがあり、伝えられた状態ではないかと思います。私はここにいてもいい、という安心感にもつながるかもしれません。
③ は、話しているときはじっくりと聞いてくれる
結論を急がせたり、決めつけたりすることなく、話ができる環境でしょうか。
④ は、相手の言葉を受けて、問いかけられることにより、相手が自分自身の考えを自ら整理できる
ということではないかな、と思いました。

ここまで考えてきてふと気づいたことがあります。
「聴く」目的により、「傾聴」ということは形が変わってくるのではないかということです。

例えば、「いのちの電話」や本当に落ち込んで塞いでいる人の場合では、相談者が伝えたいことに共感を持ってひたすら聞き続けることが大事になるでしょうし、何か漠然とした相談をしたい人にとっては、「それはどういうこと?」「なぜそう思うの?」という問いかけに始まり、対話していくことにより漠然としたものが、本人の中で整理されていくのではないかと思います。
意識せずに皆さん使い分けているのだと思うのです。

【共感と共鳴】
よく似た言葉で、共感と共鳴という言葉があります。
これは似て非なるもので、詳しくはいつかコラムにしてかんがえてみたいと思いますが・・・
■共感とは・・・他者と思い(感情)を共有すること、とあります。
簡単に言うと、相手の主張や気持ち(思い)にたいし「その通りだ」と感じることで、相手を受け入れることにも似ていると思います。

■共鳴とは・・・振動体がその固有の振動数に等しい外部振動の刺激を受けるとふり幅が増大する現象のこと、とあります。人に当てはめると、他の人の考え方や行動に影響を受け、同じように考え行動していくこと、と解釈できるかもしれません。同調することとも解釈できるでしょうし、そうなると、相手をあおることにもつながるかもしれませんね。

こう考えていくと・・・傾聴って深いなあ~と思います。
皆さん、どのようにお感じになったでしょうか? 「聴き方」のヒントになると嬉しいです。

医業経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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