【令和3年度介護報酬改定】押印は不要か?~電磁的記録を考える~
長 幸美
アドバイザリー介護報酬改定の中で、介護分野の文書にかかる負担軽減として、リハビリ計画書の見直しとともに「電磁的記録を認める」「押印が不要になる」というお話が出てきました。
なかなかなじみがない考え方なので、少し整理してみたいと思います。
今回の改定で、これら文書に関する負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減の推進として、以下の改定等を行うこととされました。
① 利用者への説明・同意等に係る見直し
② 員数の記載や変更届出の明確化
③ 記録の保存等に係る見直し
④ 運営規程等の掲示に係る見直し
等になりますが、今回はこの中の①と③について説明したいと思います。
【利用者への説明同意等にかかる見直し】
さて、この中には二つの要素があります。
■介護サービス事業所における諸記録の保存、交付等についての電磁的な対応
介護サービス事業所については、アセスメントをはじめ、様々な記録を必要とし、個人の記録だけではなく、説明書、同意書、計画書、契約書、等々、書面で行うように規定されているものが多々ありました。これらに関し、書面に変えて電子的・電磁的に保管することでよいとされてきています。
■書面での説明同意等を行うものについての電磁的記録による対応
介護事業については、事業所と利用者の契約という形がとられています。
契約に至るまでは、アセスメントを行い、必要サービスを検討し、担当者会議を開き、どのような支援をしていくかを話し合われます。
こういった手順を経て、介護サービスの提供が行われるわけですが、その一つ一つに、様々な記録が必要になり、これまでは書面として残しておく必要がありました。また、これらには利用者と事業所双方の署名捺印により、同意の確認作業をされていたわけです。
最近ではホテルや生命保険等の加入時の説明など、モバイル端末で、電子サイン等を求められることが増えてきていますので、そのイメージを持っていただけたらいいのかなと思います。
■押印がいらなくなったのなら、契約等をどう担保するのか?
現在ではお役所でも「本人の直筆サイン」があれば押印が不要というように切り替わってきています。すべてなくなるわけではなく、本人確認等については、厳しくなる可能性もあります。その一つがマイナンバーカードによる顔認証のシステムかもしれません。
また、押印がいらないのであれば、説明しておけばいいのでしょう・・・といわれる方もありますが、同意を得たサインがなくなるわけではないと思います。
内閣府や法務省、経済産業省が令和2年6月に出しているFAQの中に、以下のような質問と回答がありました。
Q 文書の成立の真正を証明する手段を確保するためにどのようなものが考えられるのか?
この問いに対し、
① 継続的な取引がある場合、取引先とのメール等の送受信記録の保存など
② 新規に取引関係を作る場合では、契約締結前の本人確認情報(顔写真付きの本人確認書類の提示記録等)、契約成立過程(メールのやり取りやSNS上のやり取りの保存)
③ 電子署名や電子認証サービスの活用
等が考えられています。
【記録の保存等にかかる見直し】
この記録の保存については、電磁的な対応でもよいという風に見直しが行われています。ここで注意が必要なのが、個人情報の取扱い規程等の整備になることです。
個人情報保護の観点から見ても、かなり個別重要な事項(家庭環境等)が含まれてきますので、注意が必要です。
さらに、記録が消失しないようにすることも必要です。
カルテの三原則である、「真正性」「見読性」「保存性」については、この「電子保存」についても、担保できるようにシステムの確認をする必要があります。
つまり、ログが残せること(操作記録が残せること)、簡単に書き替えられないこと、等が必要になってくるでしょう。
導入にあたっては、十分にシステムベンダーとも打合せが必要だと思います。
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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