【医療介護あれこれ】在宅医療「ポリファーマシーの勉強会に参加して」
長 幸美
アドバイザリー皆さん「ポリファーマシー」という言葉ご存知でしょうか?
ポリファーマシーとは?
「複数」を意味する「poly」と「調剤」を意味する「pharmacy」からなる「有害事象がある多剤投与」を意味している言葉です。
重要なのは「有害事象がある」というところだと思います。複数の薬剤が処方されることにより、有害事象のリスクが増加することや、誤った服用方法、服薬アドヒアランス※低下などの問題につながる状態を指されているところです。
※服薬アドヒアランス・・・患者が自分の病気を理解し、医師の治療方針に積極的に協力しながら正しく服薬すること
私は、薬剤師でもありませんし、ポリファーマシーについては専門家ではありません。
しかし、今回ある研修会に参加して、考えたことをお伝えしたいと思います。
【ポリファーマシーとは?】
ポリファーマシーに該当する薬剤は何剤投与からはじまるのでしょうか?
様々な研究結果から、一般的には5種類以上といわれているそうです。
ただ明確な定義はなく、10種類であっても、必要な薬剤もあり、逆に3種類であっても該当する場合がある、との説明でした。
複数の薬剤を服用することにより、転倒リスクが高くなったりすることは聞きますね。
診療報酬点数表上では、「6剤以上投与」という表記があります。後述しますが、多剤投与薬剤を2剤減らすという算定要件等で評価されています。
しかし、本当に必要な薬剤かどうか・・・難しい問題ですよね。
いくつかの疾患にかかり、複数の先生にかかると、必然的に投薬の薬剤が多くなる傾向があるようです。
確かに、私の両親を見ていても、それぞれの医療機関からそれぞれに胃薬が出され、3種類服用しています。これはポリファーマシーに該当するのかな、と思ったりします。
患者の立場では、腰が痛いから整形外科、糖尿病や血圧が高いから内科、皮膚が乾燥するから皮膚科、胸やけがするから別の内科・・・と、実に様々な医療機関・先生方にかかっているものです。心情はよくわかりますが、「かかりつけ薬局」を持って服用している薬剤をトータルで判断してもらう、ということも大事になりますね。
また、対症療法することにより、別の疾患を作ってしまう、副作用と治療が必要な疾患の区別はとても難しい、といわれていました。この状況から、薬剤師の介入の重要性が増していると思いました。
【薬剤師の介入】
服薬指導や残薬確認により、「飲めない」「飲めていない」ということが挙げられてくるかもしれません。
「服薬できていない」ことが把握できていなければ、「薬の効果が薄い」と判断され、強いお薬に変えることや増量、追加薬剤なども出るかもしれないな、と思いました。
これも私の両親の話で恐縮ですが、毎月、お薬をもらいに行かないといけない・・・といいつつ、気付けば飲めていない薬剤の量が2か月分ほどになっていました。いわゆる残薬です。薬剤師さんに介入してもらい服薬の状況を確認してもらうことにより、飲みにくい薬剤や忘れがちなもの、他の医療機関の薬剤との飲み合わせ等、確認してアドバイスもらうことができ、よかったと思っています。
【診療報酬上の評価】
診療報酬点数表の中にも、ポリファーマシーの改善に向けた取り組みついて、外来・入院ともに点数があります。
■B008-2 薬剤総合評価調整管理料(250点)
<算定要件>
内服を開始して4週間以上経過した薬剤6種類に対し、2種類以上減少した場合に対し月1回算定できるとされています。また、その際に調剤薬局やほかの医療機関に連絡を入れて調整した場合、50点の加算があります。
■A250 薬剤総合評価調整加算(100点)(退院時)
2020年診療報酬改定においてこれまで「内服薬・向精神薬が2種類以上減少した場合に250点算定できるとする規定が、所定点数100点+注の薬剤加算150点に分かれ、内容変更し療養上必要な指導等を行った場合に100点の算定ができることとなりました。
こうした評価がついていることでも、とても大事なことだということが分かると思います。
しかしながら、薬剤を変更したり、中止したりすることに対し、かなり躊躇されることもあますよね。お薬をもらっているから元気・・・という勘違いもあると思いますし、我が家の高齢者も、お薬が減ったことを説明納得するまでに随分時間を要しました。
【処方箋とトレーシングレポートの活用】
研修会の中で、調剤薬局側から何か良いアプローチの方法がないか、という質問が出ていました。その中で、2点これはイイナと思ったことがあります。
■処方箋の備考欄の活用
処方せんの備考欄で、患者の気になることやバイタル等を記載することで、調剤薬局の薬剤師さんは「情報がリッチになるから是非備考欄を活用してほしい」といわれていました。
逆に薬剤師さんは「お薬手帳」で情報を伝えることもあるそうです。
何だか交換日記の様ですね。
■トレーシングレポートの活用
いわゆる「服薬情報提供書」です、調剤薬局の薬剤師さんが得た情報を処方医に伝えるための文書です。薬剤師さんは疑義照会をして調剤されることが多いと思いますが、調剤薬局で聴きとったアドヒアランスや副作用に関する情報等、即効性が低いものの処方された先生に伝えておくべき内容等が書かれたものということです。
お忙しい先生に電話をかけるということは薬局の薬剤師さんも躊躇されることもあるようですし、先生方にとっても、薬局での患者さんの様子やお話等は、ありがたい情報がたくさんある、アドヒアランスが低下している患者を発見し、必要な薬剤調整をすることは、とても大事なことだといわれていました。活用していきたいですね。
【退院患者の薬剤情報】
在宅・外来に患者が入院すると、薬剤が変更になることがあると思います。
その情報をかかりつけ医だけではなく、調剤薬局に伝えることによりいただける加算があります。せっかく入院時に調整した薬剤ですので、地域の中で継続的なフォローアップを受けられる仕組みづくりに活かしていきたいですね。
■B004 退院時薬剤情報管理指導料 退院時薬剤情報連携加算(+60点)
これは、入院中に入院前の薬剤と変更があった場合等、調剤薬局に向けた情報提供に対し加算がついているものです。こういった形で、入院中の変化を在宅での調剤薬局に伝えていくこともとても大事で、評価されているのだと思います。
【研修受講後記】
何度か「調剤薬局のピンチをチャンスに変える」や「薬薬連携」という内容でお話をしてきましたが、今回、また違う角度から、よいお話をお聞きすることができました。
訪問診療を導入した時、訪問薬剤指導を導入した時の「お薬の山」発見・・・我が家もまさしく同様の状態になっていて、これは笑い事ではないと思いました。
私たち地域住民が住み慣れた地域で暮らしていくためには、家庭だけでは支えきれない状況があります。「地域の中での暮らしを支える」ということを医療の立場で考えていくと、様々に連携を取り、協業すること、また、薬害の恐ろしさを知り、患者となる地域住民への啓もう活動も大事であることを感じました。
研修会の中でも、「サプリメント」の話が出ていました。大量のお薬とともに、大量のサプリメント、これも、ポリファーマシーの流れで、一度見てもらう方がいいのかもしれません。
健康志向が強くなったためか、だんだん増えてきて、辞めるにやめられない状況も想像できますが・・・本当に必要なのかな、ということを考えることもあります。そんなときに、かかりつけ薬剤師さんに「お薬の専門家」として、相談してみるのもいいのかもしれません。
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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