【医療介護あれこれ】医療事務基礎講座「地域包括診療加算」
長 幸美
アドバイザリー地域包括診療加算は、再診料の加算で、外来の機能分化の観点から、主治医機能を持った診療所の医師が、複数の慢性疾患を有する患者に対し、かかりつけ医の機能を持って診療を行うことに対し、評価されたものです。服薬管理や健康相談などを行うことが求められていますが、算定に際しては患者の同意が必要となります。
外来における機能分化で、何を求められているのか見ていきましょう!
【再診料 注12 地域包括診療加算】
イ 地域医療包括診療加算1 25点/回
ロ 地域医療包括診療加算2 18点/回
【算定要件】
■対象疾患: 高血圧症、糖尿病、脂質異常症、及び、認知症のうち、二つ以上を有する者
■施設基準の届け出が必要
①担当医は「慢性疾患の指導にかかる適切な研修」を終了すること
②服薬指導・・・院外調剤の場合、24時間対応できる体制を整えた薬局と連携
③院内掲示
④患者の同意
⑤標榜時間外の電話対応
⑥当該患者の健康診断や健診の受診勧奨を行う
⑦要介護認定にかかる主治医意見書を作成する
⑧抗菌薬の適正利用に関する取り組みを行っている
難しい内容に見えますが、①については、現在コロナ禍の特例で「Web開催の研修会」に参加でよいようです。また、これは2年ごとに所定時間を終了し、届け出が必要になります。「日医の生涯教育制度などで、2年間で通算20時間以上の研修を受講している場合は、地域包括診療加算及び地域包括診療料の施設基準にある慢性疾患の指導に係る適切な研修を修了した者とみなす」とされています。
ただし、20時間の講習の中には、カリキュラムコードとして29認知能の障害、74高血圧症、75脂質異常症、76糖尿病を含んでおり、それぞれ1時間以上の研修を受講しなければならず、かつ服薬管理、健康相談、介護保険、禁煙指導、在宅医療等の主治医機能に関する内容が適切に含まれていなければならない、とされているところにも注意が必要です。
【算定手順】
では、算定をするにあたって、手順はどのようにしていけばよいのでしょうか?
① 患者の選定
すべての患者に適応できるわけではありません。
4疾患の中の2つ以上の疾患を有していて、患者の他院を含めた受診管理・服薬管理、さらには健康管理や予防接種の管理等も併せて行うことにもなります。
患者の同意も必要です。
② 患者への説明と同意
算定を開始するにあたっては、他院での受診状況を把握して、当院の治療計画を立てます。「当院の治療計画」については、「受診(投薬)頻度」「検査や栄養指導等の頻度」「治療方針・・・例えばし好品(酒、たばこ等)、運動など」について計画していくことになります。
⇒同意書のサインをもらってから、算定を開始する。
③ カルテの記載・・・この内容を見て算定していきます。
■受診歴の把握・・・患者がかかっているすべての受診・服薬状況を記載する。
⇒ほかの医療機関で処方されている薬剤・・・お薬手帳のコピー添付で可
重複投薬や飲み合わせ等を含め記載
⇒かかりつけ医として、最近の患者の受診状況現病歴を含めて把握する
■健康相談・・・健診の受診勧奨を行い、その結果をもとに生活指導等を行う
■患者の全人的な医療を担当するため、継続治療する保険医療機関と情報を共有する
⇒他医療機関には「当院で地域包括診療加算を算定している」旨を伝えて、
診療状況及び治療方針等の所見を書いてもらってくるように指示をする。
当院ではその状況を基に連携を予定する。
④ 原則院内処方・・・院外処方の場合は24時間対応の調剤薬局と連携する
【かかりつけ医とは】
ここで「かかりつけ医機能」として何を求められているのか、見ておきましょう。
次の図は、令和2年度診療報酬改定の説明会資料です。
(出典:厚労省「令和2年度診療報酬改定の概要(外来機能・かかりつけ機能)」より)
この図では、かかりつけ医の立ち位置が良く表現されているのではないかと思います。
かかりつけ医とは、住人にとって一番身近な医師であり、会社や学校での健康管理や社会生活を送るための支援、また、他の医療機関との連携を図り、ポリファーマシーを予防していくことなども求められていると思います。また、かかりつけ医については何も高齢者だけではなく、小児についても求められていることも書かれていますし、機能強化加算としても評価されています。
■かかりつけ医としての役割
「かかりつけ医」としての役割を「院内掲示」として明記することが要件となっています。
① 生活習慣病や認知症等に対する治療や管理を行う
② 他の医療機関で処方されるお薬を含め、服薬状況等を踏まえた管理をする
③ 予防接種や健康診断の結果に関する相談等、健康管理に関する相談に応じる
④ 必要に応じ、専門の医療機関を紹介する
⑤ 介護保険の利用に関する相談に応じる
⑥ 必要に応じ訪問診療や往診に対応する
⑦ 体調不良時等、患者からの電話等による問い合わせに応じる
■「かかりつけ医」を利用する場合の心得
「患者さん・ご家族へのお願い」という表現ですが、「かかりつけ医」の役割を利用するために、心得てほしいことも掲示することとなっています。
① 他の医療機関を受診する場合は緊急時を除き、まず相談してほしい
② 緊急で受診した場合は、受診後に報告してほしい
③ 受診時にはお薬手帳を持ってきてほしい
④ 処方を受けている薬局を教えてほしい
⑤ 健康診断の結果について教えてほしい
如何でしょうか、これらすべて、カルテの記載要件の中にも含まれた内容です。
皆さんの健康な生活をトータルサポートしていきます、という風に読み取れますね。
もっと言うと、「かかりつけ医」としてこういった役割があります、効果的に活用するために協力してくださいね、ということだと考えられますね。
そう考えると、同意書については、利用する側の責任も生まれてくるのではないかと私は思います。
【最後に】
地域医療構想や地域包括ケアシステムで、「住み慣れた地域で暮らし続ける」ための仕組みを様々な形で地域ごとに作られていますが、根底には、この「かかりつけ医」がどのように支えていくか、ということがとても重要になってくると思っています。
コロナ禍においても、急性期病院の在り方や、自宅療養・ホテル療養について様々に議論されていました。家族の様子が変わった時、自分自身の体調の変化について、「大丈夫だろうか」「相談したい」「感染させるのでは?」と思ったときに、不安を感じて一人で考えて眠れない夜を過ごした方も、大勢いらっしゃると思います。
私もその一人です。
こういった時に力を発揮する「かかりつけ医」、そしてその役割をとっておられる場合は、是非算定を考えてみられては如何でしょうか?
先生方の診療を間近で見られている事務職員さんも是非、知っておいてほしい項目です。
ここでは特にお話をしませんでしたが、「地域包括診療料」というものもあります。ご興味がおありになる方は、是非合わせてご確認ください。
<参考資料>
■診療報酬点数早見表(医学通信社)
診療報酬点数の解釈(社会保険研究所)
■厚労省:令和2年度診療報酬改定の概要「外来機能・かかりつけ機能」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000605491.pdf
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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