【医療介護あれこれ】在宅医療①「在宅医療を始めるには?」

長 幸美

アドバイザリー

最近「在宅医療を始めたい」というお問合せを多く受けるようになりました。
患者さんがコロナ禍において「感染」に関する意識が高まり、特に感染を扱うであろう医療機関への受診を控えているような状況があり、また、「往診・訪問診療してほしい」というご要望も増えているようです。
今回は在宅医療を始めるにあたって、準備すること、考えていくことをお話したいと思います。

■外来診療と在宅医療では何が違うのか?
外来医療は「待ちの医療」と訳されている側面もありますが、医療者が診療所や病院の建物の中でスタンバイしている状態のところに、患者自らが医療機関を選んで足を運んできます。つまり「この先生に診療してほしい」という強い意思が働いているのです。
理由は様々で、専門性や有名だからという以外に、住まいが近いから、職場が近いから、先生が優しそうだから、スグ診てくれるから・・・などがあると思います。

一方、在宅医療においては、様々な理由において「通院が困難」になった方のところへ、医療者が赴き、診療(訪問診療)や健康観察・処置等の医療行為(訪問看護)、リハビリ等の機能訓練(訪問リハビリ)を行うことを全般的に行っていきます。医療機関側が積極的に動いていくことになります。
つまり、患者さんの生活の中に医療者が入っていくことになります。
従って、メリットもあります。日ごろ病院では見せないような患者さんの様子がみえたり、家族との関係が見えてきたりします。デメリットとしては、「看護師さ~ん」と呼べば、必要なものがさっと出てくる環境ではありません。患者さんの状態から、採血や処置など、必要なものを予測して持参することになります。照明も病院に比べ暗い場合が多いので、採血など支障をきたす場合もあります。

■在宅医療の対象者は?
在宅医療の説明文章の中に必ずといっていいくらい入っているのが「通院が困難な在宅患者」という言葉です。では誰が判断するのかというと、医師が診療をし、総合的に検討したうえで「通院が困難と判断する」ということになります。
例えば、車いすを利用していても、自走して通院できるのであれば、通院が困難とは判断されないかもしれません。自分の足で歩けたとしても、認知症があり徘徊の可能性があったり、老々介護で付き添う家族が介助できない場合は通院困難と判断されるでしょう。

■在宅医療の条件
上記「通院困難である」ということのほかにもいくつか条件があります。
① 患者の同意がある
② 計画的な医学管理が必要
③ 定期的に訪問する
また、要介護者については、ケアプラン上に工夫が必要になることもあり、そういった「指導」に関しても、診療報酬上(※1)や介護報酬上(※2)に評価がついています。
※1 在宅時医学総合管理料、施設入居時等医学総合管理料
※2 居宅療養管理指導料(医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士)

■アセスメントが大事
在宅医療の開始については、医療機関入院中に退院後必要となるケースも多いのではないでしょうか?このような場合、入院前の生活そのままを想定されているご家族の方も多いと思います。医療機関の管理下で、お薬が飲めている状態ひとつとっても、患者が自分で準備をしている状況ではありません。
導入する場合には、入院後の患者状況やご家族の状況をしっかりと把握し、将来予測を立てていくことが大事になると思います。
また、生活様式は皆さん違いますので、家族の関わり方や考えなども確認していく必要があるでしょう。

こういったことから、初回の訪問はとても大事になってくると思います。
何度も言いますが、医療者の前で見せている状況がすべてではないことがあります。
医療者から言うと「当たり前」と思っていることが、生活者である患者やその家族から見ると、当たり前ではないこともあります。
家族が感じている負担や心配を聴きとり、どんなサポートができるか、寄り添い説明する必要があります。

■在宅診療におけるシステム
電子カルテを導入されている医療機関の場合、その記録をどうするか、ということも大きな課題になりますが、同時に、患者さんの診療をスケジューリングすることも、効果的・効率的に運用していくためには大事になります。このため、予約システム(予約の取り方)、支払方法等を考えておく必要があります。

■まとめ
今回、実際に「在宅医療を始めよう!」と思った時に、どんなことを考えて準備していくのかを記載させてもらいました。大事なことは、先生方が、医療機関として、患者さんや家族に対し、どんなサポートをしたいのか、ということだと思っています。
そのサポートは、10人の患者さんがあれば、10通りだと思います。どう寄り添っていくのかはとことん考えていく必要もあると思います。

既に積極的に在宅医療を実施されている医療機関がたくさんあります。
もし可能であれば、そういった先生方の医療機関に研修に行かれ、実際に在宅医療でどんなことをしているのか、何が求められているのか、どんな課題がありどう解決したのか、ということを体験してみられるのもいいかもしれません。

医業コンサル課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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