【医療介護あれこれ】医療の質の評価③連携新時代
長 幸美
アドバイザリー「医療の質の評価」の中でも、地域医療構想・地域包括ケアシステムともに重要になってくるのが、この「連携」だと思います。
地域連携は、前方連携から始まり、後方連携、社会連携へとフェーズを上げてきていましたが、今回さらに新たな時代(フェーズ)に入ってきているように思います。
■循環型・参加型の地域連携・・・新たな前方連携・後方連携
今回、高度急性期が定義づけられ、地域包括ケア病床をはじめとする回復期機能についても、評価の見直しが行われた改定でしたね。
その背景にあるものは、「地域全体を考えたときの医療機能の確保をどうするか」ということを問われているのではないでしょうか。
小規模の病院や診療所が、それぞれ単体で24時間365日診ていくことは難しいと思います。それだけの人員を抱えきれないからです。つまり、単体で医療を完結することは難しいわけで、それであれば、地域の中で難しいところは対応可能な大きな病院や専門の診療所に頼っていくほうが良いと思います。
高度急性期や紹介重点医療機関などにおいても、感染対策や在宅医療においても、対応やスキルがわかっている方が逆紹介しやすいと思うのですよね。
紹介し、紹介される医療機関、実際に研修等に参加しスキルアップを図ることで、地域医療の底上げができると思います。そのような連携ができるといいですね。
■デジタル連携
地域全体を見るということになると、移動の時間も手間もかなり大変になると思います。そこで出てくるのが、「デジタルヘルス改革」です。
もはや「オンラインはうちはやらない」という選択はないと感じています。
中心となる医療機関から使い方など、支援が必要なケースが見受けられるのも現状です。接続方法を一緒に試してみながらつながっていくことも必要です。
また、必要なアプリを活用して、患者の治療管理を行っていくことも評価されてきました。これが医学管理料の中の「プログラム医療機器等医学管理加算」です。今は「ニコチン依存症管理料」の中の、禁煙治療補助としてアプリ活用が承認されていますが、次々に開発され、認可申請が出されていると聞いています。
また、システム間の連携も、大事なこととなります。例えば、電カルを中心に、予約や検査結果、予防接種や健康診断の結果、等の実施状況など、別々のシステムである場合が多いと思いますが、これらの連携をどうしていくかということが重要です。
近年の診療報酬改定では、記録だけではなく、実施していることを可視化することが求められています。これらがデータ提出加算として評価されていますが、これらを紙カルテ時代と同様に、カルテから情報を拾っていくということでは、膨大な時間がかかり事務作業が増えてきてしまいます。記録データを活用する方法が求められてくると思います。
■地域社会とどうつながるか?
私はコラムの中で、「医療職の皆さんにも地域に出てほしい」とお伝えしてきました。これは、地域の現状を知るという意味ではとても重要なことです。
地域の中に、どんな訪問看護ステーションがあるのか、認知症のサポートはどうなのか、高齢者が多い地域なのか、子育て世代が多い地域なのか、お買い物は?・・・などなど、生活をするうえで必要なサービスがどこにあり、どんなつながりができるか、ということを知ることが第一歩だと思います。
「いや~うちは医療機関だから、そんなこと知らないよ、来てくれた患者診るだけだから・・・生活を支える? ケアマネジャーさんがやるんじゃないの?」
これでは、「支える医療」の提供は難しいと思うのです。
以前私の父がかかっていた医療機関の先生から「うちは安定しているからお薬を継続しているだけだ。具合が悪くなったら、救急車を呼ぶなり、探すなりしてどこか別の病院に行ってくれ」といわれ、診療情報提供書を書くことも拒まれ、愕然としました。いくら救急車を呼んだとしても、これまでの治療経過は教えてほしいと思うのは、受け入れた医療機関としても当然のことでしょう。家族としては、何かあった時に適切な医療提供できるところにつないでほしい、紹介してほしいと思うだけなのです。
■ベースにあるものは院内連携
このように地域包括ケアシステムや地域医療構想の中で求められている医療提供体制は、「新型コロナウイルス感染症の拡大」とともに、新たなフェーズに入っていると思います。実際にどう連携していくのか、というところがとても大きくなってきていると思うからです。
まずは院内のコミュニケーションが取れる状態にしていくことが第一歩かなと思います。院内で連携ができていないのに、院外の、しかも多職種との連携は難しいのではないでしょうか?
特に私は、薬剤師や管理栄養士との連携は大事にしてほしいと思います。単に薬を出すだけであったら、だれでもいいと言ってしまうといい過ぎかもしれませんが、現状配送業者さんが配達を代行するところも出てきています。食事はコンビニやスーパーでも電話で配送してくれるところもありますよね。タクシー会社も・・・けれど、それだけでは、ちゃんと食べているか、服薬できていて、効果があるかどうかはわかりません。そこに薬剤師さんや管理栄養士さんが絡んでほしいなと思います。
診療報酬改定の中でも、重要視されているところでもありますし、そこをどう考えるのか、どう連携していくのか、考えてみませんか。
地域医療構想や地域包括ケアシステムは、誰かがやってくれることではありません。地域の中で現状をどうしていけば、安心安全に暮らし続けることができるのか、皆さんの課題なのです。一緒に考えていきましょう!
医業コンサル課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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