【医療介護あれこれ】在宅中心静脈栄養法について(QAより)
長 幸美
アドバイザリー今日はQ&Aの中から、在宅中心静脈栄養の診療報酬についてみていきましょう。
「緊急入院された患者がIVHを入れて退院してきました。どのように算定したらいいでしょうか?」とのご質問を受けました。
まず、在宅中心静脈栄養について、基本的なことから確認しましょう。
■在宅中心静脈栄養とは?(TPN:Total Parenteral Nutrition)
食物を口から食べることができない場合に、中心静脈という心臓近くの太い静脈(血管)の中に留置したカテーテルから点滴し、生命維持や成長に必要なエネルギー、各種栄養素を補給する方法です。
この中心静脈栄養法(TPN)を家庭で行うことを、在宅中心静脈栄養法(HPN:Home
Parenteral Nutrition)と呼んでいます。
■在宅中心静脈栄養法の対象者は?
消化器系の疾患があり、口から食物を摂ることができない方が対象となります。
例えば腸閉塞で腸を摘出した方や、クローン病など消化管に炎症性の疾患があり、口から食べ物を摂ることが困難な方の場合、中心静脈栄養で血管から栄養を摂ります。
つまり、原因疾患にかかわらず、中心静脈栄養以外に栄養維持が困難で、当該療法が必要であると医師が認めた患者が対象です。
■算定方法は?(令和4年度診療報酬改定による評価)
診療報酬の算定は、以下の通り、①+②+③+④で算定します。
この中の③については、算定要件があるので注意が必要です。
① C104 在宅静脈栄養法指導管理料 3,000点/月
② C160 在宅中心静脈栄養法用輸液セット加算 2,000点/(月6組)
⇒月7組目以上の場合は、特定保険医療材料で算定する。
特定保険医療材料_002在宅中心静脈栄養用輸液セット
(1)本体 1,520円
(2)付属品 フーバー針 419円
輸液バッグ 414円
③ C161 在宅注入ポンプ加算 1,250点/(2月に2回)
⇒中には、持続的に注入したほうが良い薬剤などがあります。注入ポンプを使用している場合は、加算が算定できます。
④ 薬剤料
⇒高カロリー輸液やビタミン剤、微量元素製剤、血液凝固阻止剤等を投与する
ことが可能ですが、これは、在宅で使用できる薬剤として指定されています。
⇒この場合の薬剤料は、診療区分「⑭在宅医療」の薬剤料として算定します。
その他算定上の留意点として、同月内で、併算定できない項目があります。
点滴・静脈注射等の同種の手技料になるのですが、都度確認されることをお勧めします。
■在宅中心静脈栄養法のメリット・デメリット
メリットは、なんといっても、高カロリーの輸液ができる(血管への負担が少ない)、長期的に利用することができる、何度も針を刺さなくてよい、というものだと思います。
逆にデメリットはというと、何よりも感染リスクが高いこと、カテーテルの屈曲により閉塞する場合があること、事前に外科的な処置や手術を行う必要があること、その他合併症に注意が必要だということです。
合併症については、ビタミン欠乏症・微量元素欠乏が挙げられ、過剰投与や糖の代謝異常を起こす可能性もあります。
■介護施設でのケア
中心静脈栄養は医療行為のため、施設の介護職員や介護福祉士は行えません。しかし、24時間の訪問看護ステーションとの連携がしっかりと取れている場合は、受入れが可能になると思います。
訪問診療を行いながら、在宅中心静脈栄養指導管理料の算定が可能です。
コロナ禍で家族の働き方が変わり、また医療機関・介護施設等での面会制限等があり、在宅介護を選択する方も増えてきているようです。また、仕事をしながら、炎症性の腸疾患のように、小腸切除を余儀なくされつつ、在宅で生活をし、社会復帰・仕事と治療の両立を図られている方も増えてきています。
そうした方々が在宅で生活していくための必要な栄養の手段です。
事務員さんも、どのようなことをするのか一度実際の現場を見ておくといいですね!
医業コンサル課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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