社労士モリの映画あれこれ~「太陽を盗んだ男」(1979年:日本) ~
森 𠮷隆
その他1人の若者が独力で原子爆弾を製造し、国家権力を脅す…。当時としても際どい題材だったでしょうが、現在の日本映画界でも更に製作されることは困難だろうなと思われる内容。しかも通常なら重くて暗い作風になりそうなところ、実際は明快な娯楽アクション映画に仕上っており、メジャー作として大々的に封切られながら、その題材と手法の組み合わせが当時もあまりに突飛だったせいか、興行的には都市部はともかく、地方では殆ど客が入らなかったとか。しかし公開終了後、カルト的人気を経て、今では日本映画史上に残る傑作の1本として高い評価を得ている作品。先日ホール上映で、私も久し振りに再見しましたが、改めて魅了されました。
当時歌手としても大人気だった「ジュリー」こと沢田研二扮するは中学の理科の教師。生徒からも馬鹿にされ、無気力で当時でいう「シラケ世代」の象徴のような若者なのですが、原発から強奪したプルトニウムを材料にサッカーボール程の原爆を完成。しかしながら、これをどう活用すれば良いか判らない…。とりあえず政府を脅迫し、警察に最初に要求したある事とは…。
主人公が1人住まいのアパートで、原爆を完成させるまでの工程をじっくり観せる前半部からか一転、後半はカーアクションシーンも交えた警察との争奪戦に。時には「んなアホな!」とツッコミを入れたくなるシーンもありますが、パワフルで勢いのある演出がそれを凌駕するかの如く、逆に愛嬌に感じることも(笑)。
作ることは簡単。どう扱うかが問題、これは現在の核問題に通じるところもあり強烈な皮肉にも思えます。それがエンタメ性を前面に押し出したことで、独特の毒気とユーモアが醸し出され、ある種の寓話性をも醸し出しているような不思議な感覚にも囚われてしまうのです。
「WOWOW映画王選手権」2001年、2002年本戦連続優勝、2011年本選準決勝進出、2013年本戦準々決勝進出。2012年「スカパー!映画クイズ選手権」本選優勝。映画検定1級(2014年は首席合格)。
労務コンサル課
著者紹介
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人事コンサルティング部 労務コンサル課 シニアコンサルタント
(特定社会保険労務士)
「WOWOW映画王選手権」2001年、2002年本戦連続優勝、2011年本選準決勝進出、2013年本戦準々決勝進出。2012年「スカパー!映画クイズ選手権」本選優勝。映画検定1級(2014年は首席合格)。
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