電子処方箋について~オンライン資格確認の次のステップ~
長 幸美
医業経営支援オンライン資格確認が令和5年4月以降原則義務化されますが、令和4年9月には利用できることとされ利用する医療機関が増えてきています。また、原則義務化に先立ち、令和5年1月から「電子処方箋」の仕組みが始まる予定です。
9月に入り、日経新聞やテレビでも取り上げられるようになり、皆様も一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
電子処方箋の利用申請開始に先立ち、先日(11月17日)、厚労省のオンライン説明会が開催されました。その時の内容を少しお話したいと思います。
■電子処方箋とは・・・
これまで紙で発行していた処方箋を、電子的に処方箋の運用を行う仕組みです。
この仕組みを導入することにより、複数の医療機関や薬局で、直近に処方・調剤された情報の参照や、それらを活用した重複投薬チェックなどが行えるようになります。
災害時や旅先でも、この仕組みを使い、投薬内容の確認が行えるようになり、突発的な場合にも対応が可能になるものと思われます。
この仕組みは「オンライン資格確認」の次のステップとして導入されるものになります。
何故なら、「オンライン資格確認の仕組み」を活用して運用することになるからです。
厚労省が実施しているアンケート調査でも、オンライン資格確認を導入している医療機関の約7割が電子処方箋の導入意思があると回答しているとのことでした。
■運用がどう変わるのか?
患者様の受付方法(マイナンバーカード、健康保険証)がどうであれ、電子処方箋の機能は利用できます。
① 診療の受付
マイナンバーカードの場合、顔認証システムにより「お薬の情報の提供」に合意をして、そのあと「処方箋の発行形態(電子処方箋か紙の処方箋か)」を選ぶ画面が出ます。
健康保険証の利用の場合は、保険証の番号で資格の確認をして、問診表等で「処方箋の発行形態」を選んでもらいます。
② 診察
診察時には、電子処方箋を希望されている場合、「HPKIカード」を読み込ませ、電子署名が入った処方箋発行を登録し、「引換券番号」を受け取ります。
③ 会計
会計時に、引換券番号(QRコード)が入った「処方内容控え」を患者さまに渡します。
④ 調剤薬局
調剤薬局では、この引換券番号を読み取り、処方箋を受け取り、調剤しお薬を渡します。
(出典:厚労省「利用申請開始!はじめよう、電子処方箋」20221017説明会資料より)
この仕組みは、対面診療だけではなく、オンライン診療や訪問診療にも活用できるとして、説明されています。
■導入に向けた準備
電子処方箋の導入に向けた準備として、まずは「オンライン資格確認」の導入が最優先されます。
次に、電子署名を行うための準備(HPKIカードの発行申請等)を行い、システム事業者への見積もり依頼及び発注に取り掛かる必要があります。
大まかな手順は次のスライド資料をご参照ください。
(出典:厚労省「利用申請開始!はじめよう、電子処方箋」20221017説明会資料より)
運用開始までは、数カ月単位で時間がかかるようです。令和5年度は導入に向けた助成金も準備されているようですので、早めの検討がいいのではないかと思います。
■電子署名・・・HPKIカードの取得
処方箋を発行する場合、医師であることの証明が必要になります。これまでの紙の処方箋であれば、医師が署名もしくは記名押印を行い発行されていたと思います。間違いなく医師が発行したことを証明するための電子署名を行うためのものが「HPKIカード」です。
医師会を通じて9月半ばごろ、先生方に「HPKIカード申請書」が届いていると思います。
まずはこの申請をしていただくことになります。
■HPKIカードの読み取り機の設置とシステム改修
電子処方箋の利用については、現行の電子カルテシステムやレセプトコンピュータシステムについて、電子処方箋対応版のソフトウェア等への改修が必要になってきます。
まずは現在お使いのシステムベンダーさんに相談をしてください。
■訪問診療を行う場合
訪問診療を行う場合、その都度確認をとることが必要な場合も予測されます。
このため、訪問診療の契約時に、処方箋発行の形態や医療機関から薬局に被保険者番号等と引き換え番号を連携することについて、同意を取り交わしておくことが必要になってきます。
今回、利用申請の開始を受けての説明会でした。令和4年12月には運用開始するにあたっての説明会が開催されます。
今回の説明会によりますとHPKIカードの所得や読み取り機、システム改修等の具体的運用に向けた医療機関の対応が必要になってくるようです。インターネットでは情報のやり取りが目に見えないため不安に思われる先生方も多いのではないかと思います。
オンライン資格確認・電子処方箋についても、常時システムをつなぎ運用を図る必要があり、情報漏洩やランサムウェア等の攻撃に備え、セキュリティをしっかりと対策し、使用する職員の情報機器管理や情報倫理の向上を図るべく、教育も大事になってくると思います。
取扱い変更に伴う様々な変化に対応できるよう、ご検討の一助になればと思います。
<参考資料>
■厚労省「電子処方箋」
https://www.mhlw.go.jp/stf/denshishohousen.html
〇「電子処方箋のメリット」について、医療機関向け、薬局向けに視点を変えて動画が公開されています。
〇また、「電子処方箋」の導入に向けて第1回説明会(令和4年7月25日)、第2回説明会(令和4年10月17日)にすでにオンラインで開催されていて、特に第2回目には、どのような準備が必要か、説明が行われています。
医業コンサル課 長幸美
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
最新の投稿
- 2024年11月5日医療介護あれこれQ&Aより~医師国保がいい?それとも協会けんぽ?~
- 2024年10月21日クリニックのための接遇接遇レッスン~ユマニチュード導入のSTEP~
- 2024年10月18日医療系事務職員応援隊介護保険3施設~特養・老健・介護医療院どう違うの?
- 2024年10月14日医療介護あれこれ接遇レッスン~ユマニチュードと接遇を考える~