保険外療養費:回数制限がある医療行為の請求について
長 幸美
医業経営支援皆さん「選定療養」という言葉を聞いたことありますか?
入院施設をお持ちの医療機関であれば、「差額ベッド代」を請求される医療機関もあると思いますし、診療所を含め、「予約診療」や「180日超えの入院の方」に実費を徴収されている医療機関もあると思います。これは選定療養費という仕組みがあり、保険外併用療養費・・・つまり、保険診療をしながら自費で請求することが認められている項目(ルール)があるためです。今回はこの保険外併用療養費の中の選定療養「制限回数を超える医療行為」についてお話をしていきたいと思います。
■保険外併用療養費とは・・・
保険外併用療養費には大きく分けると①評価療養と②選定療養の2種類があります。
① 評価療養・・・保険導入のための評価を行うために認められているもの
<例>
・先進医療
・医薬品・医療機器・再生医療等製品の治験にかかる診療
・薬事法承認後で保険収載前の医薬品、医療機器、再生医療等製品の使用
・薬価基準収載医薬品の適応外使用
(用法・用量・効能・効果の一部変更の承認申請がなされたもの)
・保険適用医療機器、再生医療等製品の適応外使用
(使用目的・効能・効果等の一部変更の承認申請がなされたもの)
② 選定療養(保険導入を前提としないもの)
<例>
・特別の療養環境(差額ベッド)
・歯科の金合金等
・金属床総義歯
・予約診療
・時間外診療
・大病院の初診
・小児う触の指導管理
・大病院の再診
・180日以上の入院
・制限回数を超える医療行為
つまり、特徴的なこととして、いずれにせよ、自費でできる範囲も決められているということ、そして、ルールが決められているということになります。これは無制限になることにより、患者さんの負担が不当に拡大する恐れがあり、科学的な根拠のない特殊な医療の実施を助長させないための手段とも言われています。
「評価療養」については、それぞれに申請を行い倫理面や管理面、妥当性を審査したうえで承認されたもののみが算定できる仕組みになっています。
「選定療養」については、地方厚生局に事前に届け出を出せば算定できる仕組みで、その内容は地方厚生局のホームページで公開されていますし、1年間に行った実績を報告する仕組みもあります。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回のテーマである「制限を超える医療行為」についてどのような決まりがあるか見ていきましょう。
■制限回数を超える医療行為とは・・・
保険診療のルールの中で、
選定療養には、患者から料金徴収する際の要件(料金の掲示等)を明確に定められています。また、この「制限回数を超える医療行為」については、査定されるから自費で算定していいというようなルールではないことも注意が必要です。
医学的根拠に基づいては、保険請求のルールの中で、「必要最小限」の検査として、「月に〇回につき算定可能」あるいは「1日に〇回」「3月に1回」というような基本的な算定のルールがそれぞれの項目ごとに決められています。この項目ごとの算定ルールを超えている場合、一部の検査や治療について自費で診療費がもらえる条件があります。
この内容は告示の中に記載されています。
令和4年4月度の診療報酬改定時点で認められているものは、以下の項目になります
※7の8 告示第2条第6号 に規定する別に厚生労働大臣が定めるもの
■自費算定するための要件
これらの検査やリハビリテーション等を行った場合、無条件に自費請求が認められているわけではありません。自費をいただくための「算定要件」があります。
医学通信社の点数早見表1503p~をご参照ください。
(5_医科点数表及び歯科点数表に規定する回数を超えて受けた診療であって厚生労働大臣が定めるものに関する基準)
要件①:届け出を行うこと
算定を実施し始める前に地方厚生局に届け出を出す必要があり、また年に1回自費徴収の状況を報告(7月)する必要があります。
九州厚生局のホームページの中に、保険外療養費の報告書の書式が掲載されています。(末尾にURLを添付しています)
要件②:院内掲示
本制度に基づき徴収する費用を掲示するとともに、地方厚生局に届け出を行う施設基準に適合している旨を院内の見やすいところに掲示することが必要です。
要件③:説明と同意を得ること
この内容と自費の費用徴収については、患者様に対し懇切丁寧に説明を行い、患者様の自由な選択に基づき、文書によりその同意を得るものとされています。同意の確認は「特別の料金を明示した文書に患者様個人の署名もしくは記名押印をいただくこと」を行うことが必要とされています。
要件④:金額設定
この場合の金額設定はいくらでも良いというわけではなく、医科点数表の基本点数に基づき計算された額を標準とする旨記載されています。
要件⑤:領収書の発行
保険診療と自費の費用が明確に区別された領収書の交付が求められています。
あくまでも、保険診療の中で決められた制度ですので、この規定に則って、適正な手続きを踏んだうえで費用の徴収をすることが大事です。
自院の患者様の状況を十分に把握し、必要に応じて対応ができるように考えて見られては如何でしょうか?
<参考資料>
〇九州厚生局:保険外療養費の報告(書式等)
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/shinsei/shido_kansa/hoken_heiyo/index.html
13 医科点数表等に規定する回数を超えて受けた診療であって別に厚生労働大臣が定めるものの実施(変更)報告書(別紙様式13)
〇点数早見表(医学通信社):告示8「療養担当規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」
早見表1485p~を参照してください。
医業コンサル課 長幸美
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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