地域包括ケアシステムにおける診療所の役割②
長 幸美
医業経営支援前回から2回に分けてお話をしています「地域包括ケアシステムにおける診療所の役割」の後編になります。前回は、地域連携のこれまでと社会の流れを見てきました。
今回は後編として、診療所に何を求められているかを見ていきたいと思います。
■虫の目、鳥の目、魚の目
これは仕事をするうえで一度はお聞きになったことがある言葉だと思います。経営やビジネス書の中では大事だとされている視点です。
「虫の目」は、自分自身や置かれた環境、物事をよく見ること。
「鳥の目」は、高いところから全体を俯瞰して見渡してみる、ということ。
自分をよく知り、おかれた場所を俯瞰してみる・・・どちらもとても大事ですね。
そして「魚の目」・・・これは潮の流れや干潮満潮という「流れ」を見失うな、という意味合いですが、診療所にとっては、この「魚の目」がとても大事だということを言われていました。つまり、地域医療の最前線で活動されている診療所では、実際に動きながら、世の中の動向を察知しつつ、次の行動を考えていかなければならないということです。
それこそが、診療所に求められている役割・立ち位置を示しています。
■大病院志向の罠~診療所だからできることもある~
日本は大病院志向が強い国です。権力や立派な見た目などが大好きです。
「大病院」といえば、なんだか立派な先生が見てくれそうだし、立派な医療機器もあるからなんだかよさそう・・・本当にそうでしょうか?
高度な医療を受ける場合はその専門性の高い医療機関がいいと、私も思います。しかし、何かあれば、すぐに見てもらえる「身近なお医者さん」が頼りになる先生だとわかれば・・・また何かあったら、すぐに大病院の専門の先生とつないでくれる、と理解できれば・・・いいと思いませんか?
だって、近いほうが通院の負担などもなくなりますよね。
医療費も、交通費も待ち時間も少なくて済みますし、家族の付き添いもいらないかも・・・
■診療所が求められていること
高度な医療を提供する医療機関の使命(役割)は、「高度急性期入院医療」に特化し充実していくこと、緊急時に受けて、治療することがミッションです。このために高度な医療機器や人員をたくさん配置しているのですね。
それでは診療所のミッションは何でしょうか?
きめ細やかに寄り添い、在宅の生活を支えていくこと・・・これがミッションになります。
つまり、在宅医療や治療と仕事の両立支援等です。
病院の外来機能を診療所に移行するとなると、高度急性期の病院は、「安心して患者を任せられるか?」という視点で診療所を見ることになります。このため、プロフェッショナルとしてスキルアップも大事になるでしょう。期待されている役割と、現場に期待される役割の間にギャップがあると、なかなか「お願いします」といえないものです。
それでは、地域にお住いの皆さんはどうでしょうか?
お住いの皆さんは、医学の専門家ではありません。体調の変化には疎い方も敏感な方もいらっしゃいます。このくらい大丈夫と思う方も、心配で夜も眠れなくなる方もいらっしゃいます 。その方々の身近に、話を聞いてくれて、相談に乗ってくれる、急性期の病院との橋渡しができる先生がいらっしゃれば・・・安心して生活できますよね。
地域を支えるために何ができるのか、地域の高度急性期の病院そして医師会、地域の行政も含めて、意見交換できる場があると、そこから考えを共有し、少しずつ拡大することもできるかもしれません。
その中には、診療所の先生方の力が必要だ!そんなことを感じたセミナーでした。
医業コンサル課 長幸美
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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