5月8日以降の新型コロナウイルス感染症の取扱いについて②~入院~

長 幸美

医業経営支援

新型コロナウイルス感染症の流行から丸3年たち、ゴールデンウィーク明けの5月8日から感染症法上の5類の扱いに変わることになりました。これに伴い、入院医療の考え方も変わってきます。
今回は、入院医療がどのように変わるのか、読み解いていきましょう。

外来では、広く受入れの門戸を開くことで「院内トリアージ加算」等の算定要件が変更されることや、「医師の応召義務」の整理により「診療を拒否できる正当な事由」の中に、「新型コロナウイルス感染症もしくはその疑い」は該当しないことなど、明確化されてきていましたね。では、入院医療の提供ではどう変化するのでしょうか?

病床確保料の見直し

これまで行政が重症度により「コロナ対応病床」による入院を整理していた部分がありましたが、5類に変わることにより、広く対応病床以外にも入院対応を求めていくことになります。
これまでは、コロナ重点医療機関等に対し、中重度(重症、中等症Ⅱ)の患者様の受入れ対応のため、病床を確保することに助成金(病床確保料)があり、このため、医療機関側にとっても、病床を空けて受入れを準備していくことにも、つながっていたと思います。この助成金が、重点医療機関では上限額が半分に減ってしまうことになります。

(出典:厚労省「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について(ポイント)参考資料」令和5年3月10日)

幅広い医療機関による通常の対応を求める

これまで、約3000の医療機関で重症・中等症Ⅱの患者を受け入れるための「重点医療機関等」となっていましたが、今後、各都道府県において、9月末までの「移行計画」を策定し、約8200ある医療機関すべてにおいて受入れできるようにしていくとされています。
特に高齢者については、地域包括ケア病床等での受け入れを推進し、これまで受入れ経験がない医療機関についても、受け入れを促していく、とされています。

(出典:厚労省「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について(ポイント)参考資料」令和5年3月10日)

保健所等による入院調整はどうなるのか?

この新型コロナ感染症の患者報告については、「G-MIS」などのデジタル化が進んできているように感じますが、これらの仕組みを活用しながら、原則「医療機関間による調整」を求められることになります。動きは早くなるかもしれませんが、「いや~パソコンは苦手で・・・」とこれまで躊躇されていた医療機関が取り残されないか、いささか不安があります。

診療報酬の取扱いはどうなるのか?

新型コロナ感染症患者の受入れについて、重症者を受け入れる医療機関は新たな対応を実施するための設備費も含め、かなりの費用負担が発生していたとお聞きしています。
その費用負担を補う意味でも、中等症の受入れで「救急医療管理加算の4倍~6倍」の加算がついていました。
一般の医療機関であっても、救急医療管理加算(950点)や感染後の患者のリハビリ受け入れについても2類感染症の加算(250点×3倍)が算定できるなどの診療報酬上の特例がありました。

 

(出典:厚労省「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について(ポイント)参考資料」令和5年3月10日)

この図を見ると、基本的な措置は現行と変わらないように思えますが、重症者を受け入れている医療機関についてはかなり点数が下がり、軽症~中等症Ⅰの場合でも、追加の加算の算定が低くさらに期間も短くなってきています。厳しい状況になることが予測できます。今後、夏場から冬の感染者数増加に向けて、どのような対応をしていくのか、発熱外来の在り方、入院患者の感染対策についても、議論し、対応が求められていくものと思われます。

■まとめ
今後「5類感染症」に位置づけられることにより、より広く対応を求められる一方、感染対策等にかかる費用負担については医療機関に委ねられることになり、重症者を受け入れる医療機関では厳しい状況になることが予測されます。
また、回復期機能の医療機関でも、算定できる要件や点数が変わっていますので、一度読み合わせを行うことをお勧めします。

<参考資料>
新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(厚労省_事務連絡令和5年3月31日発出)確認日令和5年4月10日

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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