整形外科系の処置について①~痛みに対する処置~
長 幸美
医業経営支援整形外科系の処置について、シリーズでお話ししていきたいと思います。
整形外科では、様々な処置が行われます。痛みに対することやリハビリテーションなど幅広い処置があります。今回は、「痛みに対する処置」に絞ってお話しします。
目次
痛みに対する処置の種類
「痛み」に対する処置といっても、その痛みの原因によっていくつかの対処法があります。
消炎鎮痛処置(J119_35点)
消炎鎮痛処置とは、文字通り「炎症を抑えて痛みを和らげる」ための処置です。方法としては三種類あり、
①マッサージ等の手技によるもので、マッサージや指圧等があります。最近では筋膜リリースなどもよく聞く言葉ですが、この中に含まれて来るのかもしれません。
二つ目には②器具等による療法です。これは、電気治療といわれるもので、赤外線やホットパック等で温めたり、超音波療法、マイクロレーダーや電気治療といわれるようなものが該当します。
次に③湿布処置がありますが、こちらは診療所の外来に限るものですが、広範囲に湿布を貼付する手技料になります。病院では算定ができないのでお目にかかることは少ないものです。
この中での留意点としては、③湿布処置の「広範囲に及ぶ」ものがどの程度なのか、ということだと思います。「半肢の大部又は頭部、頸部及び顔面の大部以上にわたる範囲」と記載があります。具体的に言うと、半肢だと、肩~肘、臀部~膝、のようにかなりの広さになりますので、湿布1~2枚程度の範囲ではないと判断できます。また、通知の中には「湿布処置は、患者自ら又は家人等に行わせて差し支えないと認められる湿布については、あらかじめ予見される当該湿布薬の必要量を外用薬として投与するものとし、湿布処置は算定できない」とありますので、かなり限定的なものと考えられ、留意が必要と思います。なお、この場合の薬剤料は処置薬剤として算定することはできます。
算定ルールとしては、「疾病、部位又は部位数にかかわらず1日につき所定点数により算定する」とありますので、何回行っても、マッサージと電気治療をいくつか組合わせて行った場合も、算定は1日に1回のみとなることも留意点となります。
神経ブロック療法
神経ブロック療法とは、神経や神経の周辺等に局所麻酔薬を注射して麻酔の効果により痛みを取り除く方法です。痛みが緩和されると血流が良くなり、筋肉のこわばりもなくなります。しかしブロック療法では一時的に痛みをとることはできても根治させることはできません。薬物療法や痛みの原因を特定して治療を行うことが必要になります。
①星状神経節ブロック
首の付け根・のどのあたりにある「星状神経節」という交感神経の節に局所麻酔薬を注射して、交感神経の機能を一時的に抑え、痛みを抑える方法です。
②ブロック注射
痛みの元になる神経に局所麻酔薬を注射して痛みを抑える方法です。痛みの場所により、様々な神経に注射を行うことになります。また、ステロイド剤を使用する場合もありますが、ステロイド剤にはブロック注射の適応がない為、査定される場合があります。
また、神経破壊剤(50%以上のエチルアルコール、2%以上のフェノール等)や高周波凝固法又はパルス高周波法を使用するような場合もありますが、高度な技術が必要となりますので、専門の知識や高度な技術が求められます。神経破壊剤等による場合は、がん性疼痛を除き、月に1回の算定に限定されていることも留意点になります。
また、数か所実施した場合においては、主たるもののみの算定となりますし、神経根ブロックに先立って造影等を実施した場合の費用は別に算定できませんので、注意しましょう。
③トリガーポイント注射
トリガーポイント注射は、筋肉を押して痛みを感じるところ・・・つまり「圧痛点」に局所麻酔薬や専用の薬剤を注射します。筋肉注射の一部ですが、「圧痛点」・・・いわゆる東洋医学でいうところの「ツボ」に局所麻酔薬等を注射することになります。
「トリガー」は引き金、「ポイント」は点を指し、押すと強い痛みを感じる部分という意味です。
「圧痛点」以外に注射した場合は、「筋肉注射」になりますので、注意しましょう。
局所麻酔薬のほかに、専用の薬剤として「ネオビタカイン注」があります。
その他、痛みに対する治療は?
薬物療法や神経ブロックなどの治療法で効果がない場合など、脊髄(脳)刺激療法(SCS)という方法があります。脊髄の表面や脳内に置いた(挿入した)電極(リード)を通じて脊髄や脳内に弱い電流を流し、刺激することにより痛みを和らげる方法です。
特殊な治療法になりますし、刺激装置の植え込みなど、手術も必要になります。
植え込み後の管理については、「C110 在宅自己疼痛管理指導管理料(1,300点)」で算定をすることになります。適応疾患としては「難治性の慢性疼痛」になりますが、適応患者は、「難治性慢性疼痛」が対象で、植え込み型脳・脊髄電気刺激装置を植え込み、疼痛管理を行っている患者のうち、在宅自己疼痛管理を行うことが必要と医師が認めたものとなります。
まとめ
今回、痛みの治療に関して主なものを見てきました。これらのいずれも、ベースには「薬剤療法」があります。適切に薬剤療法を行い、器質的な疾患に対しアプローチが必要な場合もあるでしょうが、痛みをとる治療そのものが「疾患の根治」を目指すものではないことも留意しておく必要があります。
しかしながらこの「痛み」をとるということも、治療上又は日常生活上に必要な場合もあるでしょう。
リハビリテーション等を行うためのベースにも、痛みや硬直に対し徒手療法や補助療法としての消炎鎮痛処置等もあるでしょうし、ブロック注射等により痛みや緊張をとる必要もあると思います。目的やその部位により手技の難易度も違い、算定できる点数も違うことから、医療事務職員としては、慎重に確認して算定するようにしましょう。
2023年8月16日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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