【医療介護あれこれ】接遇レッスン~共感力~
長 幸美
医療介護あれこれ仕事上、若い方とお話しすることがありますが、話をする中で「共感する」ということの難しさを感じています。どんなことに対しても、「そうだね」「よしよし」「それは大変だ!」と同調していくことが「共感すること」だと思われている方が多いのではないかと感じています。
今日は、リーダーや同僚が大事にしたい「共感力」について考えてみたいと思います。
目次
共感力とは・・・?
共感力とは、簡単に言うと「他者の考えや意見にその通りだと感じたり、喜怒哀楽といった感情に寄り添うことができる力」です。しかし、単に「そうだ、そうだ」と同調することではありません。リーダーだけでなく、チーム全体にとっても重要なコミュニケーション形成の要素となります。
人は、自分自身の過去の様々な経験と照し合せ第一印象を決めることはよく知られていることだと思います。
聴く力~相手の視点を理解する
相手の立場や視点を理解して、感じとることができる力です。
自分自身の視点と違う場合でも「そういう考え方もあるよね」「何故そのような考えになったんだろう」と考え、理解することが大事になります。このためには、自分自身の意見をはさまず、相手の想い(言葉)をフラットに聞き取る力が大事になります。
寄り添う力~柔軟性と感受性を高める
相手の言葉や行動に対し思いを感じ取り、柔軟に対応する力も大事になります。自分自身の信念や経験したことをもとに、人はつい「いやそれは・・・」と口をはさみたくなるものですが、相手の状況と経験した状況は違う場合もあります。
対話力~コミュニケーションを深める
上手に表現できる方ばかりではありません。自分自身の感情を的確に表現できる方は案外少ないものです。しかし、的確なタイミングで「質問」することで、相手は自分自身の考えを客観的に見ることができるようにもなります。
「対話」とは、簡単に言うと、相手と向かい合い、お互いに話をすることです。しかし単なる「会話」とは違います。お互いに自分自身の考えを言葉で伝え、相手の話す内容を理解しようとするということが大事になります。
練習してみましょう!
共感力はある種の「スキル」です。
「スキル」・・・ということは、練習して高めていくことができるということですね。
では、このスキル、どのようにして練習していけばいいのでしょうか?
大事なことは、「聴き方のマナー」でも少しお話をしましたが、「オウム返し」がとても重要になります。
※【医療介護あれこれ】接遇レッスン「聴き方のマナー」は こちら
オウム返し
「オウム返し」とは、相手の言ったことを復唱することです。「な~んだ、そんなこと簡単!」という声が聞こえてきそうですが、初心者がやりすぎるとクレームになるような事態にもなります。
皆さんの中にも、あまりにも同じ言葉を繰り返されて、ムッとした経験ありませんか?
「今日寝坊してさ、朝ご飯食べ損ねちゃって、腹減ったなあ~。それなのにさ、駅までダッシュして、乗った電車がおくれてさあ、大事な会議には遅れて怒られるし、踏んだり蹴ったりだよ。」
この文章をオウム返ししたらどうなるでしょうか?
「(まぁ!)今日寝坊されたんですか? 朝ご飯食べ損ねてお腹すいているんですね?(かわいそうに!) それなのに、駅までダッシュして乗った電車が遅れたんですか?(それはそれは、大変でしたね)、大事な会議に遅れて怒られたんですね(まあ、連絡しなかったのかしら・・・) 踏んだり蹴ったりだったんですね・・・(寝坊したばっかりにね~!)」
「・・・」 話をしてくれた方も、返答に困ってしまいますよね。
オウム返しには、三つの方法があります。「事実を切り取り繰り返す」「気持ちに寄り添う」「要約する」という方法です。上手に使い分け、相手の想いを引き出し、寄り添っていくことが大事になります。
事実を切り取り繰り返す
これは、比較的簡単かもしれません。相手の発言の中で、事実のみを切り取って確認する方法です。電話等での住所確認やクレームでの事実確認、など、間違えてはならないことや事実を確認する場合に使います。
上記の事例で言うと、「寝坊したこと」「電車が遅れたこと」「会議に遅刻したこと」です。
気持ちに寄り添う
これは、話の中で、気持ち(感情)の部分を中心に切り取り繰り返す方法で「感情のオウム返し」とも言われます。心理的な負担が大きい相談などに活用し、相手はより親身になってくれている・・・という安心感や受容感を得ることができるものです。
上記の事例で言うと、( )書きの部分になりますが、「おなかすいたでしょ」「寝坊したばっかりに大変だったね」ということになります。
要約する
これもよく使うものですが、相手の話の中から、ポイントを抜き出し、「これこれこういうことですよね」と確認する方法です。クレーム対応や電話相談等では話が横道にそれることもよくあります。そのような場合に、相手の要件を確認する場合に使います。クレーム対応や相談などは最初の受け取り方が間違うとこじれてしまう可能性もありますので、慎重に確認したいものです。
これらの「オウム返し」を上手に使うために、友人や日常的な会話の中で、練習してみてください。
話が広がっていく場合はうまく使えている・・・ということになりますし、途中で相手が口をつぐんだり、話が広がらず終わってしまった場合は、うまくいかなかったということになります。
まとめ
ここまで、チームとしてのコミュニケーションを良好に保ち、良好な人間関係を築いていくためには、「共感力」が大事なこと、高めていくために必要な要素があり、相手にも感じてもらえるスキルの一つとして、「オウム返し」という方法があることをお話ししてきました。
最後に、大事なこととして、「共感する」ことと「同調する」ことは違うということをもう一度お伝えしたいと思います。そうだそうだ!と同調してもらうと何となく、認められたような気になってきますが、そうではありません。「共感する」ということは、自分の価値観で判断せず、相手の話を尊重し受け入れることがとても大事になります。共感して理解するということは、「自分の基準」で判断せず、ゼロベースで聴くことが大事になります。そうするためには、相手の価値観を理解し、尊重(リスペクト)する気持ちがないと、なかなかできないものです。
2024年1月10日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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