画診共同~医療機器の共同利用していますか?~
長 幸美
医療介護あれこれ先生方の医療機関で、CT/MRIの撮影が必要な時どのようにされていますか?
別の医療機関で撮影をお願いされていることが多いと思いますが、その際の算定方法に二通りあるのはご存じでしょうか?
医療機関によっては、専用の指示書を記載するようになっていて、算定はどうするのかなあ・・・
こんな場合診療情報提供書じゃないから算定できないなあ・・・と思われる方もあるかもしれません。
今日は共同利用を行った場合の算定方法について、みていきましょう!
目次
画診共同
クリニックにCT/MRIがない場合、他の医療機関が所有している医療機器を用いて撮影してもらいます。この場合に依頼元のクリニックで保険診療を請求する場合があります。
これが「画診共同」です。
診療情報提供による撮影依頼
まず検査や画像診断の設備がない医療機関(A医療機関)は、診療情報提供書等により撮影を依頼できる場合があります。診療情報提供書で依頼する場合には、A医療機関では「診療情報提供書料(Ⅰ)」が算定できます。この場合はA医療機関で医師の診療があり撮影となります。
ただし、依頼先(B医療機関)が当該医療機関と特別な関係にある場合は「診療情報提供書料(Ⅰ)」の保険請求ができませんので、注意が必要です。
また、依頼する場合には、「撮影の委託契約」の有無により二つのパターンがあります。
パターン1/撮影(設備の提供)のみ行った場合
依頼されたB医療機関が検査及び画像診断のみを行った場合・・・つまり検査や画像の撮影のみを委託契約している場合です。この場合は「設備の提供のみ」で、撮影した画像の判読や説明を行わないことになりますが、患者さんへの請求はどうしたらいいのでしょうか?
この場合、B医療機関は設備のみの提供になりますので、検査料や画像診断料等の算定はできません。
A医療機関が、B医療機関の届出された施設基準に基づき検査及び画像診断の保険請求を行います。
B医療機関で検査した結果・・・つまり撮影された画像(CD等)を患者に渡し、患者は再度A医療機関を受診し、検査の結果の説明や今後のことについて相談することになります。
つまり、検査機器や画像診断機器の「共同利用」になります。
この場合、B医療機関では、検査及び画像診断の設備の提供のみにとどまるため、診療情報提供書料(Ⅰ)や初診料・再診料の算定や検査料・画像診断料の算定はできません。この精算方法については後ほど説明します。
パターン2/撮影だけではなく、画像の判読(読影)も含めて依頼した場合
撮影の委託契約をしていない場合は、依頼先の医療機関に受診してもらい検査及び画像診断等を実施してその結果・・・つまり読影等も併せて行ってもらうパターンです。この場合は委託契約の必要はありませんので、患者さんの希望する医療機関で検査及び画像診断等を受けてもらうことができますし、読影レポートももらうことが出来ます。一般的な患者紹介と同様なので、わかりやすいかもしれません。
B医療機関が検査及び画像診断の判読も含めて診療依頼を受けるわけですので、初診料・再診料、検査料その結果をA医療機関に文書により回答した場合は、B医療機関では、「初診料・再診料、検査料及び画像診断料等、診療情報提供書料(Ⅰ)」の算定ができます。
しかしながら、この場合 A医療機関では検査及び画像診断料等の算定はできません。
画診共同の場合B医療機関は損をするの?
検査や画像診断のために設備を提供した場合、算定できないんだったら損するじゃない!
・・・といわれたことがありますが、そこは、点数表の中にも記載がある「双方の合議により精算する」ということになります。
前述の「パターン1」の場合になりますが、この場合はB医療機関では「検査及び画像診断等」にかかる保険請求はできません。
A医療機関には、B医療機関で実施してもらった「検査及び画像診断等」にかかる診療報酬が請求でき、入金されます。ですから、双方で話し合い、「検査及び画像診断等」にかかる費用をA医療機関からB医療機関に支払う・・・ということになるのです。
共同利用は委託業務
わかりやすく言うと、A医療機関はB医療機関に「検査や画像診断等」を委託し、その委託契約に基づき、費用を支払うということです。従って、いきなりB医療機関に対し「あなたの医療機関の検査機器や画像診断等の機器で撮影してください」ということはできないわけです。
事前にどのような条件で、どのような検査や画像診断等を、どのような形で依頼するか、その検査画や画像診断にかかる費用の精算方法はどうするのか・・・ということを取り決めておく必要があります。
つまり、委託契約を交わしておく必要があるわけです。
ここで心配なのは「いくら支払えばいいのか?」ということになるわけですが、診療を行わず、検査や画像撮影だけ・・・と考えると・・・悩みますよね。
この金額設定は、契約の内容により様々だと思います。
例えば、・・・
保険請求した検査料や画像診断料等の手技に関しては1件〇〇円で支払う・・・や
保険請求の〇割を支払う・・・等です。
使用した医薬品費や医療材料については全額「保険診療の単価」で請求する・・・とか、納入価で請求する・・・とか。委託契約書の中で様々な取り決めが必要になると思います。
そこは双方の院長同士若しくは事務長等を交え、双方話し合いを行い(合議)、取り決めを行い、契約書を交わしておくことが、後々のためには必要ですね。
共同利用のメリット
契約書を交わしたり、金額を調整したり・・・なんだか面倒だなあ・・・と感じてしまいますよね。
では、共同利用のメリットとしては、どのようなことがあるのでしょうか?
A医療機関(依頼元)のメリット
クリニック等の医療機関は高額の医療機器の購入やメンテナンス等を心配しなくても済みます。
開業時など少ない投資で済み、ミニマム経営ができるというメリットがあります。
また、病院などの病床を有している医療機関であれば、患者さんの急変等の入院治療が必要になった場合にも受け入れをお願いすることもしやすくなるかもしれません。
B医療機関(依頼先)のメリット
高額医療機器を持っている医療機関としたら、投資したものの、自院が診療する患者さんの中からは、その検査や画像診断の必要な回数等が思うように伸びず、高額医療機器の使用頻度が上がらないという問題も出てきます。それらの検査機器や画像診断機器の使用頻度を上げて活用することにより、地域医療に貢献することが出来ます。
また、「パターン1」の場合、検査や画像撮影のみの提供のため、診療情報提供書や詳細なレポートを添えて返す必要もないわけです。
さらに、B医療機関では、一部の高額医療機器・・・具体的に言うと64列以上の高度なCTや3テスラ以上の高度なMRIの撮影等にについて、共同利用施設において行われる場合の点数設定が別にあり、わずか20点ではありますが評価されています。
実はこの高度なCT/MRI装置については、共同利用を行わないものとして九州厚生局に届け出を行うと、「64列以上のマルチスライス型の機器による撮影」や「3テスラ以上の機器による撮影」の基準が取れず、さらに低い点数になってしまうので、B医療機関としても共同利用してもらう方がありがたかったりするのです。
患者さんのメリット
その他、患者さんにもメリットがあります。
前述した「パターン2」の場合だと、医師の診療等に時間がかかりますが、「パターン1」の画診共同による共同利用だと、診療の時間を待つ必要はなくなります。
予約の時間に行くとスムーズに検査や画像診断等に案内され、検査を終えるとそのレポートやCDを受け取って元の医療機関で引き続き診療を受けることが出来ます。
共同利用・・・つまり「パターン1」の場合だと、検査に行った医療機関で、同じことを何度も聞かれたり、重複した診察料等を支払うことも、診察や会計の待ち時間もありません。
患者さんにとってもメリットは大きいと思います。
まとめ
画診共同の場合、依頼先の医療機関がどの基準を取得している医療機器を使用するか・・・ということもわかりません。このため、レセプト請求時にコメントコードによる「画診共同」のコメントと「撮影部位」のコメントを入力する必要があります。
入力がないとレセプト記載不備で返される可能性もありますので、注意しましょう。
どのパターンで検査や画像診断等を依頼するのか、受付の事務さんもしっかりと把握して、算定間違いや算定漏れがないようにしましょう。
<参考資料>
■診療報酬点数表 B009_診療情報提供料の(5)~(7)を参照してください。
2023年10月24日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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