セミナー報告「どうする?ベースアップ評価料Part2~施設基準の届出を準備しよう!~」
長 幸美
医療介護あれこれ令和6年5月9日、平日の夕方「どうする?ベースアップ評価料Part2」をWeb開催させていただきました。当日ご参加いただいた皆様ありがとうございました。
第1回目のセミナー以降、先生方からご相談が多く、特に「施設基準のための資料作成がよくわからない」と届出を断念される先生方のお声も多くお聞きしていました。また、弊社宛のご相談も日に日に数が増えてきまして、人事労務担当部長をはじめ弊社グループ内で協議し、開催案内からわずか2週間という短期間で開催!
さらにお申し込みは80件を超える方から頂き、無事に開催することができました。
お申し込み時にも多数のご質問をいただき、皆様のお困りになっている様子がわかり、準備にも気合が入りました。今回は、当日の内容を少しだけお話ししたいと思います。
目次
ベースアップ評価料の届出のポイント
今回の「ベースアップ評価料」の届出は、これまでの施設基準の届出と大きく違います。
先ずは、届出をExcelシートに作成し、メールで提出することです。
そして何よりも、届出に「お給料を増やす」ということが前提になっていることがあります。それと、お給料のベースアップの計画を立て「賃金改善計画書」をExcel表で作成し、それを添付しないといけないこと、そして定期的に実績を報告する仕組みになっていることなどです。
施設基準の届出書を作成する
今回の「ベースアップ評価料」はExcelで作成し、提出する必要もあり、Excelをあまり使ったことがない先生方やレセコンからどんな統計表が出てくるかわからないという先生方にとっては、ハードルが高いものになっていると思います。
届出用紙の取得
施設基準の届出用紙は、それぞれの厚生局のWebサイトから取得します。
例えば「九州厚生局 令和6年度診療報酬改定」と入力すると、特設ページが開き、PDFとExcelやWordで届け出様式がダウンロードできます。同様に厚労省のWebサイトにも「ベースアップ評価料」の特設ページがあり、様式が公開されています。厚労省の作成している内容と厚生局の作成内容が若干違うため、それぞれの厚生局が作成したものをお使いになるほうが良いですね。
因みに、九州厚生局の場合は、「別添2(届出の表紙)」と「様式」「計画書」「計画書作成のための計算シート」がワンセットになったもので、ひとつのファイルで完結するようになっています。
記載例もありますので、併せてご覧いただくのが良いかと思います。
対象職員の給与総額を出す
次に対象者と給与総額を算出します。届出(算定開始)の時期により計算する期間が変わってくることに注意が必要ですね。そして法定福利費の対象になる「基本給等総額」とその都度支払われる手当を含んだ「給与総額」の考え方も踏まえておく必要があります。賞与に関しては、基本給及び決まって毎月支払われる手当に連動して引き揚げられている賞与や法定福利費の事業主負担分は、ベースアップによる賃金改善分として含めることができますが、業績に連動して引きあがった部分はベースアップによる賃金改善には含めることができません。
①については、あくまでもベースアップ評価料の対象となる職種の範囲として明示されたものですが、「その他医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く)」の部分に適応できるかどうかが、質問が多いところです。この判断は難しいですよね。
毎月の診療実績を集計する
毎日の来院患者数の把握はしておられる先生方が多いと思います。しかしその患者さんが「再診料」を算定しているか、「初診料」を算定しているか、その人数を月単位で把握されている方は少ないのかもしれません。例えば、午前中と午後に2回来院され電カルの受付登録には2回チェックインした場合も、来院の状況(理由や目的)によっては、診察料は1回のみの算定となる場合があります。
この診療実績については、レセコンの「診療行為別集計表」からそれぞれに該当する件数を拾い出してくることができます。また、「初診料」や「再診料」の中には、「初診料や再診料が含まれている医学管理料」もあり、患者数のカウントができます。
これらをしっかりと把握していないと、結果的に算定漏れが起こる可能性がありますので、届出用紙の「記載上の留意点」や点数表の「算定要件」をしっかり確認するようにしましょう!
賃金改善計画書の作成
さて、この賃金引上げ計画書を作成するには、①賃金引き上げの実施方法を決めること、そして②金額の割り振りを決めること、が必要になります。
賃金引き上げの実施方法を決める
基準は令和5年度の賃金と比較して、令和6年度と令和7年度に引き上げる方法を一律にするか、段階的に実施するか、ということになります。
医療機関全体の賃金改善の総額を決める
簡単に言うと、令和6年度に総額でいくら引き上げるのか?を決めて、その内訳が、「ベースアップ評価料の財源がいくらなのか」そして自主財源として、「定期昇給」や「臨時的な上乗せをいくら使うのか」という内訳を記載することになります。これは一人一人ではなく、医療機関全体としてまずは考えることになります。
「ベースアップ評価料計算支援ツール」を使い、大まかな収入の予測をもとに大枠を決めていくイメージです。
金額の割り振り(配分)を決める
大枠が決まったら、今度は、「看護職員等」「薬剤師」「看護補助者」「その他の対象職種」ごとに配分を決めていく作業です。常勤換算での職員人数や常勤・非常勤の数にもよりますが、先ほど決めた医療機関全体の賃金改善の総額をどのように配分していくのかを表します。
そして実際に賃金改善の前月の給与と改善後の予測値を入れ、「ベースアップ計画」として出すことになります。
ベースアップ評価料に該当しない職員のベースアップは・・・?
ベースアップ評価料対象外職種については、基本診療料(初・再診料や入院料等)の引き上げ分を活用して、賃金改善をしてほしいというのが、今回の改定のポイントでもあります。
このため、「ベースアップ評価料対象外職種」の人数と改善の見込みを同じように計画書の中に記載することになっています。これが、「賃金改善計画書Excelシート」の黄色い網掛け部分になります。
他の職種がどの程度いらっしゃるのか、その方々への賃上げ対応はどうしようとしているか、ということも併せて出すということです。
賃金引上げを行う方法
最後に賃金引き上げをどのようにルール化し、職員へ対応しているか、ということも記載することとなっています。具体的に①就業規則や②賃金規定の見直しなど方法を、変更した規定の内容とともに記載することとなっています。
賃上げ促進税制(雇用促進税制)について
今回の「ベースアップ」については、「賃上げ促進税制」の活用もできるとの改定説明会のYouTubeでも話が出ていますが、この内容についても最後に触れています。
医療機関の規模等の条件が様々にありますので、すべての医療機関が使えるものではないかもしれませんが、結果として来年度に使えるかどうかを顧問税理士さんに相談していただけたら・・・と思います。
まとめ
今回のセミナーでは、施設基準の届出について、厚生労働省から提示されているExcelシートの内容を読み解き、ポイントやどのような記載になるかということを具体的に説明させていただきました。
今回のこの「ベースアップ評価料」は医療事務の知識だけでは対応が難しいですし、「労務管理」をされている方とも密に連絡を取りながら、連携していかないとうまくいかないのではないかと思います。
また、支払いの仕方や賃上げ促進税制の活用については、税理士さんとの連携も必要でしょう。
つまり、医療機関の各事務担当者や院長先生を中心に、ここでも「連携」がとても大事なキーワードになってくるなと実感しております。
2024年5月13日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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