Q&Aより~診療所で算定できる?「短期滞在手術基本料1」~

長 幸美

医療介護あれこれ

短期滞在手術基本料について、案外知られていないのがこの「短期滞在手術基本料」です。
以前は麻酔科医師の配置や手術室、回復室の基準など診療所では算定し辛いものがありました。
令和4年の改定以降少しずつ基準が緩やかになり、診療所でも算定が可能になってきたものです。
算定できる日帰り手術等も増えてきましたので、これを機に少し施設基準や算定方法等を整理してみましょう!

そもそも短期滞在手術等基本料とは?

短期滞在手術等基本料は、日帰り手術や4泊5日までの入院による手術及び検査及び放射線治療を行うための環境及び当該手術等を行うために必要な術前・術後の管理や定型的な検査、画像診断等を包括的に評価したものです。短期滞在手術等基本料1と3の二種類があります。

短期滞在手術等基本料の概要

令和4年診療報酬改定の時に「短期滞在手術等基本料」の見直しが行われ、「短期滞在手術等基本料2」は廃止され、現在は日帰りの「短期滞在手術等基本料1」と4泊5日までの「短期滞在手術等基本料3」の二種類となっています。
廃止の理由は、「短期滞在手術等基本料2」は、1泊2日の手術や検査を包括評価したものでしたが、実際の診療現場では「1泊2日よりも長期間の治療」が必要なケースが多く、ほとんど活用されていなかったことが廃止の理由の一つです。

短期滞在手術等基本料の共通要件

①手術を行うにつき十分な体制の整備
②短期滞在手術等同意書・・・術前に十分な説明を行ったうえで患者の同意を得ること・・・
③退院翌日に患者の状態を確認する等、十分なフォローアップを行うこと

短期滞在手術等基本料1短期滞在手術等基本料3
施設基準の届出必要不要
算定日数日帰り(外来)4泊5日まで
主な施設基準回復室の確保
・看護師が常時患者4人に1人の割合で回復室に勤務している
・短期滞在手術等基本料に係る手術(全身麻酔を伴うものに限る)が行われる日において麻酔科医が勤務していること
DPC対象病院又は診療所ではないこと
包括される検査等・尿中一般物質定性半定量検査
・血液形態・機能検査の一部(末梢血一般検査等)
・出血・凝固検査の一部(出血時間等)
・血液化学検査の一部(総ビリルビン等)
・感染症免疫学的検査の一部(梅毒血清反応等)
・肝炎ウイルス関連検査の一部(HBs抗原等)
・血漿蛋白免疫学的検査の一部(C反応性蛋白等)
・心電図検査
・写真診断
・撮影
・麻酔管理料(Ⅰ)
・麻酔管理料(Ⅱ)
・入院基本料
・入院基本料等加算
・医学管理等
・在宅医療(在宅療養指導管理料,薬材料,特定保険医療材料
料を除く)
・検査
・画像診断
・投薬(退院時の投薬、除外薬剤・注射薬を除く)
・注射(除外薬剤・注射薬を除く)
・リハビリテーション
・精神科専門療法
・処置(人工腎臓を除く)
・手術
・麻酔
・放射線治療
・病理診断
告示3_基本診療料の施設基準等_第10「短期滞在等基本料の施設基準等」より編集

その他の基準の緩和

短期滞在手術等基本料1は(イ)麻酔を伴う手術、(ロ)イ以外の手術に区分され、全身麻酔を伴う短期滞在手術が行われる日に麻酔科医が勤務していること、と麻酔科医の配置要件が限定されました。
また、回復室に関しては、診療所の場合など、個室対応でなくてもパーテーションやカーテンでの仕切りでも認められるようになってきました。これまで「うちは狭いし処置室のベッドしかないからなぁ」とあきらめておられた医療機関様も工夫次第では算定が可能になるのではないかと思います。
施設基準の取得がしやすくなっていると思います。検討してみられては如何でしょうか?

算定方法/算定対象手術等

短期滞在手術等基本料は、冒頭にお話しした通り「日帰り手術や4泊5日までの入院による手術及び検査及び放射線治療を行うための環境及び当該手術等を行うために必要な術前・術後の管理や定型的な検査、画像診断等を包括的に評価したもの」ですので、検査や麻酔管理が包括されている点で、手術・検査毎に細かく点数が決められているところです。
対象の手術等は令和4年の改定で大幅に見直され、今回も増えています。

短期滞在手術等基本料1の対象手術等(令和6年度診療報酬改定)

詳細は点数表の中で確認していただきたいと思いますが、下記の改定説明会のスライドを見ていただき、該当する検査や手術等があれば、点数表によりご確認いただければと思います。
日帰りでの算定ができますので、ご確認いただければと思います。

短期滞在手術等基本料3

こちらは4泊5日までの入院での算定となります。
施設基準としてDPC対象病院又は診療所ではないことが条件なので診療所は算定できません。
こちらは施設基準の届出は不要です。

厚生労働省「令和6年度診療報酬改定説明会資料より」

算定に伴う留意点

実は「入院料等」の中に規定がありますので、寝具の基準や入院基本料の算定要件等があります。

寝具の基準

第2部 入院料等
<通則>
1 入院基本料、特定入院料及び短期滞在手術等基本料は、基本的な入院医療の体制を評価するものであり、療養環境(寝具等を含む。)の提供、看護師等の確保及び医学的管理の確保等については、医療法の定めるところによる他、「病院、診療所等の業務委託について(平成5年2月 15 日指第 14 号)」等に従い、適切に実施するものとし、これに要する費用は、特に規定する場合を除き、入院基本料、特定入院料及び短期滞在手術等基本料に含まれる。
2 1に規定する他、寝具等について次の基準のいずれかに該当しない場合には、入院基本料、特定入院料、短期滞在手術等基本料は算定できない。
 (1) 患者の状態に応じて寝具類が随時利用できるよう用意されていること。なお、具備されるべき
  寝具は、敷布団(マットレスパッドを含む。)、掛布団(毛布、タオルケット、綿毛布を含む)、
  シーツ類、枕、枕覆等である。
 (2) 寝具類が常時清潔な状態で確保されていること。シーツ類は、週1回以上の交換がなされている
  こと。
 (3) 消毒は必要の都度行われていること。

つまり、ベッドなどを準備し、横になって安静にできる場所が必要だということになります。

入院料の算定要件

先ほどの入院料等「通則」の中に、以下の記載があります。

12 入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策、栄養管理体制、意思決定支援及び身体的拘束最小化について、別に厚生労働大臣が定める基準に適合している場合に限り入院基本料(特別入院基本料、月平均夜勤時間超過減算、夜勤時間特別入院基本料及び重症患者割合特別入院基本料(以下「特別入院基本料等」という。)及び特定入院基本料を含む。)、特定入院料又は短期滞在手術等基本料3の算定を行うものであり、基準に適合していることを示す資料等を整備しておく必要がある

つまり、4泊5日の短期滞在手術等入院基本料3を算定する場合であっても入院診療計画等の算定要件は満たしておく必要がありますので、留意が必要ですね。

同一月に算定できない項目に注意!(再掲)

最初の段落で説明した「包括項目」については、同一月に外来・入院含め算定ができませんので、レセプト点検時にリストアップして修正するなど、注意する必要があります。
但し、短期滞在手術等基本料3を算定している月においては、入院日の前日までに行った血液学的検査判断料、生化学的検査(Ⅰ)判断料又は免疫学的検査判断料はこの限りではないとされていますので、注意しましょう!

短期滞在手術等基本料を算定した同一月に心電図検査を算定した場合は、算定の期日にかかわらず、所定点数の 100 分の 90 の点数で算定します。
ただし、短期滞在手術等基本料3を算定している月においては、退院日の翌日以降に限るとされていますので注意が必要です。

短期滞在手術等基本料1を算定する際には、使用したフィルムの費用は、「E400」のフィルムの所定点数により算定するとされていますので、算定が漏れないようにしましょう!

同一の部位につき短期滞在手術等基本料1に含まれる写真診断及び撮影と同時に2枚以上のフィルムを使用して同一の方法により撮影を行った場合における第2枚目から第5枚目までの写真診断及び撮影の費用は、それぞれの所定点数の 100 分の 50 に相当する点数で別に算定できるものとするとされています。
なお、第6枚目以後の写真診断及び撮影の費用については算定できませんので留意が必要です。

まとめ

今回、施設基準等の緩和があり、診療所でも「短期滞在手術等基本料1」の届出が可能な状況が出てきました。すでにいくつかの診療所では届出を検討され、相談を受ける機会も増えてきています。
病床の申請がない場合でも、処置室の中にパーテーションやカーテンで視線を遮って安静を確保できる場があれば、認められるケースも出てきています。対象疾患の手術や検査を行われる場合、院内の状況を確認して厚生局に相談して見られてもよいのではないでしょうか?

このところ、コロナ禍での患者減や診療所の生活習慣病(糖尿病、高血圧症、脂質異常症)が特定疾患からはずされてしまうなど、厳しい改定となり、診療報酬の算定が厳しくなってきたなあと感じられている医療機関様も多いと思います。
医療機関の診療内容によっては、診療報酬の算定が可能になるものもあると思いますので、ぜひご検討いただければと思います。

<参考資料> 令和6年9月14日確認

【省令・告示】

(2)3_診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)
       (令和6年3月5日保医発0305第4号_別添1「医科診療報酬点数表に関する事項」)
      ⇒第4節 短期滞在手術等基本料 137p~

2024年9月24日

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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