「アイミタガイ」(2024年:日本)

森 𠮷隆

その他

淡々として地味な作品だけれども、多少ひねくれ者の私(苦笑)でも、思わず「いい話だなぁ」と素直にホロリとしてしまった良作でした。

 親友の不慮の事故による急死から、立ち直れないでいる主人公(黒木華)。いまだ気持ちが整理できず、亡き親友のLINEに日々メッセージを送り続けていたのですが…。

 ※以下、少々ネタバレがあります。

 主人公が中心でありながら、彼女以外の登場人物も丁重に描かれた群像ドラマのスタイルをとり、彼らがお互い知らぬ間にどこかで繋がり、支え合っている事(アイミタガイ=相身互い)に気付く。ささやかな奇跡が積み重なるという作劇が、決してこれみよがしではなく、むしろ抑制されたスタイルを終始保持していて、その慎ましさに好感が持てます。

「善人ばかり登場する小説は嘘くさいと思っていたが…」という台詞が印象的。まさに良い人だらけの映画ですが、ほっこりとした穏やかな世界観がある意味押し付けがましさを中和させてくれています。そして愛する人を失った者達が、亡き人の生前の姿を改めて知ることによって悲しみを乗り越えていく後半は、哀感から温かみに転じ、どこか清々しい印象も(そういえばテーマやモチーフ、雰囲気は岩井俊二監督、中山美穂主演の名作「Love Letter」(1995年)を彷彿させます。)。

 あと特筆すべきはエンディングに流れる「夜明けのマイウェイ」。これは私が小学生の頃に観ていたTVドラマ「ちょっとマイウェイ」のテーマ曲でもあり、今回黒木華がカバーして歌っているのですが、歌詞と映画の内容が見事に合致していて、その選曲に感心しました。懐かしさと同時に、彼女の素朴ながら優しい歌声が相まって、ここでもまたホロリとしてしまったのでした。

著者紹介

森 𠮷隆
人事コンサルティング部 労務コンサル課 シニアコンサルタント
(特定社会保険労務士)

「WOWOW映画王選手権」2001年、2002年本戦連続優勝、2011年本選準決勝進出、2013年本戦準々決勝進出。2012年「スカパー!映画クイズ選手権」本選優勝。映画検定1級(2014年は首席合格)。

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