
Q&Aより~外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出どうされていますか?
長 幸美
医療介護あれこれベースアップ評価料は令和6年度の診療報酬改定で導入された診療報酬です。
医療現場のスタッフのベースアップについて、診療報酬で評価されたものですが、これまで申請手続きの煩雑さにより、病院で約5割程度、診療所では3割程度と届出・算定がすすんでいないのが現状です。
今回、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)のみを提出する場合において、届出手続きの大幅な簡素化が行われ当社へ問い合わせが増えております。内容としては「地域の医師会より、2月中にベースアップ評価料の届出を勧める」という案内が来ており対応を如何するべきか?です。さて・・・これはいったいどういうことなのでしょうか?
内容について、少しお話ししてみたいと思います。
目次
簡素化された施設基準
今回の手続きの簡素化についての変更点として、「直近1か月の初・再診料等の算定回数」を調べて数値を入力するだけで、変更前は非常に面倒であった「直近1年間の給与総額や基本給与総額の計算」は必要ないとされ、さらに「ベースアップ金額の集計・賃金改善計画書」などは全体のベースアップ金額の予測でよくなりました。今までと比較するとかなり簡素化された印象があります。
詳細は巻末にもURLを掲載していますが、厚生労働省「ベースアップ評価料等について」のページにYouTubeによる説明動画が掲載されていますので、ご覧いただければと思います。

厚生労働省「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)専用届出様式作成の手引き」より
直近1か月分の初診料・再診料の算定回数で届け出可能に?!
先に述べたように、この「初診料」と「再診料」等の算定回数は大まかな外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)を算定した場合の収入の見込みを出すためのものです。この為、たまたま患者数が少なかった場合などは、これまでと同様に3月分の平均回数を出してもよいと説明されています。
対象職員の範囲は医療に携わる職員
対象職員は変更がありません。医師・歯科医師と専ら事務作業のみを行う職員は対象外とされているままです。主として医療に従事する職員が対象となります。考え方としては医師事務作業補助や患者さんの相談対応等を行う事務職員は対象としてよいことになっています。

給与総額の算出は必要ない?
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)のみを届出する場合は、給与総額の算出は必要ないこととされました。評価料(Ⅱ)や入院ベースアップ評価料の届出をされる場合はこれまで通りとなりますので、ご注意ください。
ベースアップを考える中では、「給与総額」「基本給与総額」という言葉が出てきます。
「給与総額」は文字通り、スタッフに支払われる給与・賞与に加え事業所負担分の法定福利費(16.5%)も含まれますが、「基本給与総額」は基本給の他「役職手当」「通勤手当」など毎月決まって支払われる手当が含まれてきます。役員報酬はこの中には含まれません。
なお、この新しい届出用紙の中では、1か月あたりの給与増額(ベースアップ金額)を入れると、自動的に法定福利費(16.5%)の計算がされるように設計されています。
令和6年度補正予算における給付金の受給条件の一つに
最後に、令和6年度補正予算のお話をしたいと思います。
昨年12月に発表された令和6年度補正予算の中で、「生産性向上・職場環境整備等の経費相当分として、無床診療所であれば1施設当たり18万円の給付金が支給される」ということが決まりました。

この補正予算による助成金の支給を受けるためには「ベースアップ評価料の算定」が必要とされていることから、届出・算定されていない医療機関、特に診療所においてはこの機会にぜひ、ベースアップ評価料を本年2月中までに届出して頂きたい、と日本医師会のプレスリリース(記者会見)では説明されていました。
※ベースアップ評価料の届出様式の大幅な簡素化について(R7.1.22_長島公之常任理事)
まとめ
地域医師会から「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出を2月中に済ませるようにしてほしい!」というような文書がクリニック様向けに通知されている状況を診療所の皆様より多数お聞きしています。
その背景には、1月末から発表されている大手企業の来年度の賃上げの状況があるのではないかと思います。医療機関の収入は診療報酬が主たる収入源となっており、その報酬額は公定価格で決められます。ここが他事業とは異なります。いろいろなモノ(物価)、の金額が上がったとしても医療機関が診療報酬を変えることができないのです。収入増が見込めなければ診療報酬である「ベースアップ評価料」がまさしくベースアップの為の収入源となります。令和6年度補正予算の条件に「ベースアップ評価料」を算定していることが要件の一つとなった理由は、「ベースアップ評価料」を広く算定してもらい、ベースアップの一助としてもらいたいという思いが見て取れます。算定されていない医療機関の皆さんもこれを機会にご検討してみては如何でしょうか?
<参考資料> 確認日:令和7年2月7日
■厚生労働省/ベースアップ評価料について の特設サイトは(こちら)
⇒外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)専用届出様式作成の手引き(令和7年1月版)
(YouTube)
■日本医師会/ベースアップ評価料の届出様式の大幅な簡素化について(R7.1.22_長島公之常任理事)
■福岡県/令和6年度補正予算の概要
⇒詳細は医師会を通して各医療機関に通知される予定とのことです。
2025年2月13日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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