
Q&Aより~健康診断を実施した時にお薬を出したら、混合診療になりますか?~
長 幸美
医療介護あれこれ昨年末から「混合診療」に関するお問い合わせが増えてきました。
おそらく12月に出された疑義解釈(その16)の内容をご覧になった先生方が、「うちのクリニックの請求は本当に正しいのか?」と不安になられて、お問い合わせが増えているのではないかと推察いたします。
今回は、「健康診断」を実施している場合の保険診療について整理してみたいと思います。
※参考資料:厚生労働省/疑義解釈資料の送付について(その16)⇒(こちら)
目次
健康診断とは?
健康診断とは、「健康診査」とも言われますが、文字通り、全身の健康状態を評価するため検査をするもので、病気の早期発見や予防を目的として行うものです。
この場合、療養担当規則第20条(診療の具体的方針)の中に「健康診断は、療養の給付の対象として行つてはならない。」と記載があります。
「医療保険」はどんな時に使える?
保険診療は、疾患やケガなど、身体の異常がある場合に保険診療ができるわけですね。
健康診断の中で、異常が見つかり、その場で保険診療に移行する場合など、診療報酬点数表の初診料の項には「自他覚的症状がなく健康診断を目的とする受診により疾患が発見された患者について、当該保険医が、特に治療の必要性を認め治療を開始した場合には、初診料は算定できない。」と記載されています。健康診断の中で、診療行為がすでに評価されている為、重複した算定は出来ないということです。
健康診断(自費)の範囲は?
クリニックの先生方から、健康診断時の「健診項目以外の検査は自費なのか、保険なのか」と聞かれることが時々あります。皆さんはどう思われますか?
健診項目以外の検査の内容にもよります。
例えば・・・
健診項目以外に、「認知症の検査をしてほしい」「がん検診の為腫瘍マーカーを計ってほしい」といった、患者個人の希望で症状や所見がなく、「健康診断の一環として実施してほしい」という場合は、自費になります。
例えば・・・
健診で内視鏡検査の結果、異常所見があり、病理組織検査をする場合やヘリコバクターピロリ検査を行う場合は、保険診療になります。ポリープや胃潰瘍があり、その原因や治療等で処方する場合なども処方箋料等は保険診療になります。
これらは、「異常所見がある」というところがポイントになります。
但し、この場合でも、初診料・再診料等の診察に関する料金は算定はできません。注意しましょうね。
疑義解釈(その16)について
さて、ここで、年末に出た疑義解釈通知を見ておきましょう!
問1 自他覚的症状がなく健康診断を目的とする受診により疾患が発見された患者について、当該保険医が、特に治療の必要性を認め治療を開始した場合は、「A000」初診料を算定できるか。
回答は・・・不可です。
「ただし、健康診断で疾患が発見された患者が、疾患を発見した保険医以外の保険医(当該疾患を発見した保険医の属する保険医療機関の保険医を除く。)において治療を開始した場合には、初診料を算定できる」とされています。
つまり、他の医療機関で健診を受け、その結果をもって来院された場合は、診察料を算定してよい、ということです。健診した医療機関だと、「健診の時に診察を行う」ため、初診料はすでに算定されているという考え方です。
(参考)「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和6年3月5日保医発0305第4号)(抜粋)
初診料の算定要件・・・点数表の算定要件より
第1節 初診料
A000 初診料 (中略)
(4) 自他覚的症状がなく健康診断を目的とする受診により疾患が発見された患者について、当該保険医が、特に治療の必要性を認め治療を開始した場合には、初診料は算定できない。ただし、当該治療(初診を除く。)については、医療保険給付対象として診療報酬を算定できること。
(5) (4)にかかわらず、健康診断で疾患が発見された患者が、疾患を発見した保険医以外の保険医(当該疾患を発見した保険医の属する保険医療機関の保険医を除く。)において治療を開始した場合には、初診料を算定できる。
問2 保険医療機関が実施する健康診断を受診する患者について、健康診断の同一日に当該保険医療機関において、1回の受診で保険診療を行う場合は、再診料を算定することは可能か。
回答は・・・再診料は算定できない、です。
保険診療として治療中の疾病又は負傷に対する医療行為を、健康診断として実施する場合は、再診料を算定できない、とされています。
この場合も、健康診断で診察料は算定されているから・・・というのが理由なのですが、
特定健診など、健康診断時に一緒に「治療中の疾患に関する処方をしてほしい」というご希望はあると思います。その場合、「診察料は健診にて済み」等のコメントを入れ、再診料を算定せずに処方箋の料金をもらうことはできます。保険診療出来ないから別の日に来てくださいといわないようにしましょうね。
まとめ
追加検査の場合や現在治療中の処方を行う場合など、分かりにくい状況があるかもしてませんが、
今回のコラムをきっかけにして、院内の算定状況を一度見直ししてみてください。
混合診療になるわけではありませんので、算定漏れや誤請求がないように留意しましょうね。
<参考資料> 確認日/令和7年3月28日
■厚生労働省/疑義解釈資料の送付について(その16)
2025年4月7日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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