私から見た103万円の壁(事業主篇)

内田 博史

リスクマネジメント

所得税の課税対象になる年収が、103万円から123万円への引き上げや、さらなる178万円への引き上げなど、様々な法案が出ていましたが、2025年3月、2025年予算案が衆議院を通過し、最大160万円まで引き上げられる見込みとなりました。

パートやアルバイトの方にとっては、単純計算ですが、年間57万円、月々換算ですと、約5万円弱も手取りが増える計算となりますので、この収入アップは、とてもうれしいことです。

経営者にとっては、以前なら、103万円を超えないように勤務時間を調整する従業員が多い、繁忙期でもシフトの融通が利きにくい、ということで、優秀な人材でも長時間働けないため、戦力として活用しづらいことがありました。
それが、103万円から160万円となると、年間57万円分の労働時間が増えますから、多少融通が利きやすくなります。つまり、労働時間の制約が緩和されます。

特に飲食業・小売業・介護業におきましては、パート・アルバイトへの依存度が高いですので、人手不足が深刻化しております。
例えば、時給1,000円換算で年間570時間、月で約47時間ですので、月15日勤務の場合1日あたり3時間も労働時間を増やせますので、経営者にとっても、うれしいかぎりです。

ただ、160万円の壁を意識して働く人が増えると、160万円を超えた時点で働く意欲が減退し、「ちょうどいい収入で辞める」人が多くなるため、人手不足の懸念は、拭いきれません。

そこで、経営者の対応策として、
〇給与設計と手当の工夫
・時給を調整して、労働時間を減らしても収入を維持できるようにする。
・福利厚生や手当(交通費・食事補助)を充実させ、実質的な手取りを増やす。

〇シフトの柔軟化・人員の最適配置
・160万円に達しそうな従業員と相談し、労働時間の分散や役割変更を提案する。
・繁忙期と閑散期でシフト調整を行い、年間の収入が壁を超えないようにする。

〇160万円の壁を超えても働きやすい環境づくり
・社会保険加入を前提としたフルタイム転換の選択肢を用意する。
・長時間働きたい人には、昇給やキャリアアップの道を示し、収入増とメリットを伝える。

経営者としては、
・賃金設計や手当の工夫
・シフトの調整と長時間労働への対応策
・社会保険加入も視野に入れた働き方の提案
などを考慮し、従業員の働きやすさと企業の利益のバランスを取ることが求められます。

「160万円の壁」があるから働けない、ではなく、企業と従業員が柔軟に対応できる仕組みを作ることが重要です。

2025年3月25日

著者紹介

内田 博史
経営プランニング部 営業推進室

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