【介護保険あれこれ】地域包括ケアシステム・・・地域で支える仕組みづくり①
長 幸美
アドバイザリー介護保険の認定者の推移を見てみると、重度者の割合は変わっておらず、要支援1までの軽度者の割合が増加する傾向にございます。このため、地域格差はあるものの、介護保険料を負担する人口は年々減っている状況でございます。介護保険料は、介護保険を使えば使うだけ保険料が上がるというシステムです。このため市町村によっては、平成37年には介護保険料は8,100円を超えるといわれている状況です。
また、介護サービスの担い手は、少子化・核家族化により年々減少傾向にあり、介護事業所ではスタッフの確保に苦慮されているところも多いのではないかと思います。
そのような中で、高齢者の介護を受けるにあたって意識も少しずつ変化してきており、「家族介護」の希望より「家族に依存せずに生活できる介護」を希望する方が増えてきているという調査結果が出ています。
これまで「介護あれこれ」のなかで地域包括ケアシステムの中に位置づけられているケアマネージャーの役割や地域ケア会議のことを考えてきました。今回は「支え手」に焦点を当てて考えてみたいと思います。
地域包括ケアシステムの構築に当たっては「介護」「医療」「予防」という専門サービスの前提として「住まい」「生活支援・福祉」というものをベースに、「自助」「互助」「共助」「公助」が必要であると言われています。
「自助」・・・自分自身や家族による対応
「互助」・・・ボランティアや地域住民同士の取組み
「共助」・・・介護保険・医療保険制度によるサービス
「公助」・・・自治体等が提供するサービス
そして、「互助」を支えていくのは、地域に住んでいる人々です。つまり、この地域包括ケアシステムは地域の住人と一緒に考えていかなければ上手く機能せず、いわゆる地域のコミュニティを創造・活性化することが必要になってくるのでございます。
具体的に考えてみましょう。
地域の中で、お住まいの中で・・・高齢者が生活していくときに何が困るでしょうか?
・電球が切れてしまった。
・おコメや灯油など重たいもの、かさばるものの買い物が大変。
・銀行にいけない。
・電話代や電気代の支払が出来ない!!
・お風呂の掃除が出来ない。
・部屋を片付けられない。
些細なことも、今まではできていたことが少しずつ出来なくなってきます。家族が居ればやってもらえるようなことではありますが、一人暮らしや老老介護の場合は、日常生活の中で実に多くの「困った」があります。
病気や健康不安を抱えている方の場合は如何でしょうか?
・1日3回のお薬はちゃんと飲めているのかしら?
・モーニングケア、ナイトケアはちゃんと出来ているのかしら?
・食事は食べているのかしら? 水分補給は?
・ちょっと熱っぽいようだけど、家に一人で置いて大丈夫かしら?
ご家族の立場としては如何でしょうか?
・近頃何かと物騒だし、一人暮らしで大丈夫かしら?
・戸締りは出来ているのかしら?
・認知症が出てきたけれど、近所の方にご迷惑かけてないかしら?
・外出したいというけれど、毎回付き添うことはできないし、どうしたらいいのかしら?
日常的な生活は訪問介護や訪問看護などを利用して出来ていても、いつかは迎える「死」という事については如何でしょうか?
・寝たきりの高齢者を一人で置いておくのはねえ??
・家で過ごしたいというけれど、「看取り」ってどうしたらいいのかしら?
・病院にお願いした方がいいのではないかしら?
様々な心配事が出てきますね。このような高齢者は皆さんの地域にもいらっしゃるのではないでしょうか?これら全ての「お困りごと」に対し、介護保険サービスで全てをカバーする事は出来ません。
また、家族がいつもそばに居て、見守りが出来るとは限りません。仕事の都合や婚姻などにより遠方にお住まいの場合などは、ご家族のご心配も多いことでしょう。仮に同居していた場合でも、認知症の周辺症状が出た場合などは家族のみで対応する事は困難になると考えられます。
・そのような時に地域としてどのように対応(支援)できるのか?
・地域の中で生活をし続けてもらうために、何が必要なのだろうか?
・徘徊がひどくて困る場合、認知症周辺症状が出た場合の家族へのサポートは?
という事を「地域で考える」ことが必要になってきます。
その地域の中での調整役を期待されているのが「地域包括支援センター」です。
「徘徊」の事例を考えてみましょう。
周囲の住人や家族にとってみれば「徘徊」でも、本人にとっては「日課の単なる散歩」かもしれません。ルートが決まっているのであれば、そのルートに外れたときには連絡をしてもらう様にしたり、警察官の巡回の時間を合わせたりすることにより、地域の中での「見守り」が可能になるかもしれません。銀行や郵便局、タクシーやバスなどの運転手さん、商店など、認知症の情報があれば、「見守りの役割」が担えるかもしれません。
「些細な困った」に関しては如何でしょうか?
今は「御用聞き」のようなことをしてくださる商店は少ないのですが、商品の配達・配送サービスのときに、電球の交換などの「困った」に対応してもらうことにより、生活が可能になるかも知れません。
「閉じこもり」高齢者は如何でしょうか?
昔は井戸端会議などで近所づきあいをされていたように、「サロン」や「体操教室」など、居場所を造ることにより生活にはりが出て、地域の中で生活を楽しむことができるようになるかもしれません。
昔は「隣組」や「向こう三軒両隣」「遠い親戚より近くの~」という言葉がある様に、ご近所さんとのお付き合いの中で、ちょっとした困りごとは解消する事が出来ていました。
その関係性作り、地域のコミュニティ創造・活性化が「地域包括ケアシステム」であるとも考えられます。
いま、各地域で地域包括ケアセンターが主導して「地域ケア会議」が義務化されております。皆様も少し立ち止まって地域の中の「お困りごと」を考える時間・機会を是非作って参加して、「地域包括ケアシステム」を考えてみられては如何でしょうか?
次回は「各地域での取り組み事例」をもとに、「総合事業」と「生活支援サービス」について考えてみたいと思います。
【参考資料:PDF】
地域包括ケアシステムの構築に向けて
(平成26年度地域づくりによる介護予防推進支援モデル事業)
経営コンサルティング部
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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