【医療・介護あれこれ】 地域医療構想を踏まえた診療報酬改定の動向① 『病床機能報告とナショナルデータベース』
長 幸美
アドバイザリー平成28年度の診療報酬改定の半年前となった昨今、地域医療構想の行方が気がかりな今日この頃となってまいりました。各団体から次期改定に対してさまざまな要望が出てきています。これから診療報酬改定の動向を、平成26年度の診療報酬改定そして平成27年度の介護報酬改定を振り返り、現在の状況、そして平成30年度の医療・介護の同時改定への方向性や流れなどを整理しながら、動向を見ていきたいと思います。
一回目は、「病床機能報告」と「ナショナルデータベース」についてお話ししたいと思います。
まずは「病床機能報告」です。
昨年の10月から、病床機能報告が開始となりました。病院・有床診療所の先生方は平成26年7月1日の病床数と稼働状況、及び6年後の姿(病床の状況)を報告されていると思います。昨年の報告の内容が取りまとめられ、先日厚労省から報告書が出されています。病床機能報告の内容とレセプトデータの比較を行い、入力の誤りだと思われる状況や、現状との整合性が取れない状況が明らかになってきました。このため、今年の病床機能報告は昨年と同様の内容となることが決定されています。今年は、入力の誤りを少なくすることや整合性をどのように担保していくのかが課題となっています。
この「病床機能報告」は何を意味しているのでしょうか?
医療機関が自院の機能や地域のニーズを踏まえて、地域包括ケアシステムの構築で重要なことは「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療・介護・介護予防・住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」であるとされています。
そして重要なことは、「病床機能報告」では、地域包括ケア実現のために、現状を踏まえて、「自院は何が出来るのか?」「将来的に(6年後)どうしたいのか?」を意思表示するということです。
しかし、厚労省へは皆様からの「病床機能報告」だけではなく、病院報告やレセプトデータ、DPCのデータまですべて集約され、ガラス張りの状況になっています。この中の「レセプトデータ」を集約したものが「ナショナルデータベース」です。
この「ナショナルデータベース」は、病院に入院している患者様の病名から、入院日数、手術等をはじめとした診療内容など、あらゆるデータがあります。診療の実態も含めて全て手の内が明らかになっている状況です。
これはDPCデータと比較をすれば「ベンチマーク」として利用されます。つまり、自院の機能や医療の内容を評価するために他院と比較できるようになっているのです。
この「ナショナルデータベース」「DPCデータ」があるおかげで、「病床機能報告」で急性期病床として手上げしている病院が、「本当は回復期機能が適正」であるのではないかということまで判断されるような状況にあるのです。
病床の医療機能は以下の4つに分けられています。
この分岐点は、入院基本料とリハビリテーションを除いた診療報酬で設定されており、これはレセプトデータから割り出された点数となっています。
残念ながら、電子請求を行っている今、全ての診療内容が項目ごとに実施日付もレセプトには記載されていますので、隠しようがありません。
消費税の引き上げ(10%)が先送りになっている状況ですが、この中で、医療・介護の自然増加分の財源をどこから持ってくるのでしょうか? 薬価の引き下げだけでは補えない状況があります。
また、全てがガラス張りになっている現状では、同じ病名の他の医療機関での診療内容と比較されることも簡単であり、「過剰請求」という判断で減点・査定が行われている状況も増加しているという現実もあります。
地域包括ケアシステムは、すべての人がその状態に応じて適切な場所で適切な医療・介護サービスが受けられるよう、必要な病床確保とともに在宅医療や生活し続けられる「住まい」の確保も課題となっています。
この機会に、病床の利用状況や患者様方の疾患や病態の状況から、また地域の中の医療・介護の状況から地域のニーズや、自院のあるべき姿をしっかりと見つめなおして、どのような医療を提供すべきかをもう一度考えてみる時期に来ているのではないでしょうか?
経営コンサルティング部
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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