【医療介護あれこれ】 助け合いのまちづくり~総合事業~②
長 幸美
アドバイザリー前回『総合事業』の基本的な目的等を見ていただきました。今回は自治体の具体的な取組の事例をご紹介したいと思います。
平成27年度に移行を行う事を意思表示している自治体は全国で202自治体、全体の12.8%であると言われています。現在は経過措置中ですが、平成29年4月からは移行しなければなりません。残された時間はわずかです。
出典:介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン(概要)29ページ
総合事業は、『市町村』が中心となって、地域の実情に応じて、住民等が参加し、さまざまなサービスを行うことで、『地域の支え合い体制づくり』を推進し、要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援等を住民主体で行うことである事は、前回ご説明をした通りです。
出典:介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン(概要)4ページ
今回は『総合事業』を考えるために、大分県竹田市の取組をご紹介したいと思います。
その自治体には、17の旧小学校区がありますが、そのうち5つの校区で高齢化率が50%を超え、小学校が廃校になっている地域もあるそうです。地域の産業は農業が主体で、おひとり様や高齢者だけの世帯、遠隔介護というかたが増えている地域です。
そのなかで、介護・看護の担い手や専門職の不足もあり、官民協働の地域づくりに取り組まれ、平成27年4月度から総合事業への移行を決めて、『本人の状態にあったサービスの提供』『本人の能力を活かし生活機能向上を支援』することを目的に活動を始めていかれたそうです。
総合事業を開始するにあたっては、平成22年ごろから竹田市の現状(高齢化率43%、交通弱者の増加、限界集落の増加)から、高齢者も社会資源と捉え、『暮らしを支える互助の仕組み』をつくろうと取り組まれたということでした。
取り組みとして、地域の中で、『互助』と一言で言っても、支えあえる『人』が必要です。そこで、竹田市経済活性化促進協議会というところで『暮らしのサポーター養成講座』が開始されました。これは、地域の福祉や介護をテーマにセミナーを開催し、『自分に出来ることが何かあるか?』ということを『気付く』ということが目的です。
しかし、その講座のチラシを配っても、反応が返ってくる事は少なく、担当者は住民の自宅を一軒一軒回って参加者を募るなど、ご苦労もあったそうです。
また、どのような支援を必要としている方がいらっしゃるのか、地域のニーズ把握のために、生活課題実態調査を実施し、調査票を郵送して返信してもらうという方法ではなく、個別訪問をして対面でお話をしながら聞き取りを行ったそうです。調査に関わったのは主にサポーター養成講座を受講した方と、地域の協力者の方で、自分たちが暮らす地域の現状はもちろん、調査項目だけでは読み取れない家の様子やご本人の状態などが分かり、とても良かったとお聴きしました。
地域の方だからこそ話してくださることもあるでしょうし、理解することも多かった、とお話しされていました。自治体の方がお宅を訪問しても取り繕って本心や住まう方々の現状が分からなかったかもしれません。
養成講座や実態調査を実施していく中で、 地域のためにできる事から始めようという想いを持った住民の輪が広がり、『暮らしのサポートセンター』を設立、 『サポーター』として登録された方が「出来ることを、できる範囲で」活動されているそうです。
このような取組をしながら『暮らしのサポートセンター』を立ち上げていかれました。
『暮らしのサポートセンター』は地域ごとに、現在5中学校区、今年度中にあと2中学校区の開設が予定されているそうです。
暮らしのサポートセンターの活動の一つである「暮らしのちょっと困り」をお手伝いする「生活支援サービス」ですが、利用する側も活動する側もお互い気兼ねなく継続して利用、活動ができるよう『定額の有償ボランティア』とされているとおききしました。
30分400円という金額設定をすることにより頼みやすくなっているようです。
生活支援の内容としては、草取り、調理、掃除、買い物代行、ゴミ捨て等の日常生活の支援があり、特に
①見守り・服薬確認・話し相手
②外出支援
③掃除・洗濯・整理整頓
の利用が多いようです。
しかし、ボランティアの方(活動会員)も高齢化してきていて、今後の課題になっているとお聴きしました。
その時々の活動メニューにより、『参加者』となったり『ボランティア』となったりして、相互に活動の行き来ができるそうで、「頼るだけではなく、何か人の役に立てている」ということが高齢者の『生きがい』になっているという事をお話の中から感じました。
このような取組と平行して、『総合事業』への移行にすべての事業所が協力してくださったそうです。自治体の方針を理解してもらうためと効率的に運用するために『3日間』の基礎研修を必須とされているそうです。資源には限りがあるので、このような研修を行う事により、自治体と協働してサービスを提供していく事業所が必要だという事だと思います。
自立した生活を地域の中で継続していくためには、人の支援とともに地域の支援も必要です。行政と地域、そこで暮らす人を繋ぐための『コーディネーター』も必要で、各地域の活動をつなげていく『協議体』も助け合いの活動を広げていく主体として必要だということでした。
今年度は、地区社協を中心に『よっちはなそう会』という会を発足させ、「こういう地域になったらいいな」という事をざっくばらんに話し合ってもらったそうです。その中で地域の困っている事やニーズ、住民の方達の情報を得てこれからの地域づくりにつなごうとしているそうです。
地域の自治体を中心にした『総合事業』の取組を下記の厚労省のホームページでも紹介されています。それぞれの事例を参考にしていただいて、病院として、介護事業所としての関わりを考えてみられては如何でしょうか?
<参考資料>
・介護予防・日常生活支援総合事業(厚労省ホームページの特集記事)
・「新しい総合事業の移行戦略」-地域づくりに向けたロードマップ-(平成27年11月開催) 11月25日
(平成27年度老人保健健康増進等事業「地域支援事業の新しい総合事業の市町村による円滑な実施に向けた調査研究事業」)
経営コンサルティング部
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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